7話
「ああ、ごめんなさいだぁ!」
「本当に、すみません!」
「謝ればいいってもんじゃねーんだよ!来い!」
「えっ!やめてください!放してください!」
男子生徒は中里さんの腕を掴んで無理やり連れて行こうとして、
中里さんはそれに抵抗していた。
俺は喧嘩なんて今まで一度もしたことがない。
相手は不良のような奴、
当然勝てる保証なんてない。
だが、今目の前で1人の女の子が困っているのに助けないわけにはいかない。
「おい!」
「ああん、なんだお前?」
「その子の連れだよ、いいから放せ、嫌がってるだろうが!」
「チッ!」
舌打ちをしながら、不良は中里さんの腕を放した。
腕を放された中里さんは不良から離れ隠れるように俺の後ろに来る。
その後、不良は俺を睨んでから悪びれる様子もなく歩き去っていった。
俺は何事もなく済んだことにほっとしていた。
正直、喧嘩とかになってたらどうなっていたかわからない。
いや、割とマジで、、、
「大丈夫、中里さん?」
俺は後ろで隠れていた中里さんに声をかける。
「やっぱり、成宮君は私の運命の…」
俺が中里さんに大丈夫か聞くと、
中里さんは俺を見つめながら、何か呟いていた。
「あのぉ、中里さん?」
「あっ、はい、大丈夫です!」
「そう、それならよかった」
どうやら、大丈夫らしい。
見た感じでは、腕も何か怪我をしている様子もないし、
本当に大丈夫なようだ。
でもまた今みたいなことがあったら大変だ。
そう思った俺は中里さんに提案した。
「中里さん、もし嫌じゃなかったらなんだけど途中まで送ろうか?」
「いや、でもそれじゃ成宮君が大変なんじゃ?」
「大丈夫、今日は特に予定もないし、それにまたあんなことがあったら心配だし」
「やっぱり成宮君は優しいですね」
「そんなことないって」
「いいえ、優しいですよ。今日知り合ったばかりの私のためにそこまでしてくれるんですから」
そう言いながら微笑む中里さんの顔を見て
俺は照れて顔を逸らす。
その照れているのを誤魔化すように
「そ、それじゃあ、行こうか?」
「はい!」
◇
「ここまでで大丈夫です」
俺たちは偶然にも最寄り駅が同じだったが、
俺は駅を出て右の道、
中里さんは左の道ということでここでお別れとなった。
「それじゃあ、気を付けてね。また明日」
「……」
「どうかしたの?」
中里さんはスマホをもってもじもじとしていた。
「あ、あのぉ、連絡先交換しませんか?」
「そういうことか、全然かまわないよ」
「本当ですか!はい、これ私のREINのアカウントです!」
そう言って中里さんはスマホに表示されているQRコードを俺に見せてくる。
俺もアプリを起動してコードを読み来む。
「これでよしと」
「ありがとうございます、成宮君」
お礼を言う彼女は、今日見た中で飛び切りの笑顔を見せた。
その後、お互いにあいさつを交わし、帰路についた。
家に帰る途中、さっき見た中里さんの可愛すぎる笑顔を思い出して、
ずっとドキドキしていたのはここだけの秘密である。