2話
窓から差し込む光で成宮 翔は目を覚ました。
「今日に限ってこんなのを見るなんてな」
それが夢だとわかり二度寝をしようとしたがふと時計を見る。
「やばっ!もうこんな時間かよ」
入学式早々に遅刻なんて洒落にならない。
俺は急いで制服に着替えて部屋を出た。
リビングに行くと、
『先に行く』
とだけ書かれたメモが置いてあり、俺はそれを手に取る。
「まぁ、起こしてくれるわけないよなぁ」
そう呟いてそのメモを捨てた。
そして二度寝できなかったことを後悔しつつあくびをしながら家を出る。
鍵を閉めて学校へ向かおうとしたとき家の前で同じ高校の制服を着た女子と目があった。
「「あっ」」
俺とその子の間の時間が一瞬止まる。
「お、おはよう 」
「……」
俺が声をかけたその子は何か言おうとして目をそらして足早に去ってしまった。
「まったく今日は散々だな」
そんなことを呟いた俺は、ため息交じりに学校に向かうために歩き出した。
◇
遅刻しないように少し急ぎめに歩いていると女の子が歩道橋を駆け下りてくるのに気づいた。
小柄で制服の上にパーカーを着ているその子は、白い髪で片目を隠していた。
そしてスカートから伸びる細い脚は、彼女の髪に負けないほど白く、
その姿はまさに美少女そのものだった。
俺はその子に見惚れていると、その視線に気づいたのかその子も俺の方を見た。
その時、俺の方を見たせいでその子は足を滑らせ体が宙を舞う。
「あぶない!」
俺はとっさにその子と地面の間に飛び込んだ。
ドサッ!!
次の瞬間、背中に強い衝撃と鈍い音がした。
目を開けると俺の腕の中に彼女はいた。
「よかった」
どうやら間に合ったらしい。
背中が結構痛いが美少女の危機を救えたのだから、それくらい安いものだ。
「大丈夫?怪我とかない?」
「はい、大丈夫です。ちょっとびっくりしましたけど。ありがとうございます」
そう言ってその子が上目遣いで俺を見る。
(いやマジでこの子可愛すぎだろ)
「そ、それならよかった」
可愛すぎて俺は思わず目をそらしてしまった。
そしてその時、俺の手に今まで感じたことのない感触がすることに気づいた。
(むにゅっ)
「ひゃんっ!」
(ひゃんっ?)
未知の感触とともに可愛らしい声がする。
未知の感触の正体を知るため俺は自分の手を見る。
そこにはパーカーの上から見ただけではわからなかったが、そこには男のロマンの塊が存在した。
(これは!おっぱ…)
「あ、あのぉ、そろそろ離してほしいのですが」
そう言う彼女は涙目になっていた。
「うわっ?!」
俺は急いで手を離した。
離されたその子は顔を耳まで真っ赤にして俯いていた。
「そ、そそそ、そのぉ、―すごく柔らかかった!」
「なっ?!」
それを聞いて彼女は、湯気が出そうなほどさらに顔が赤くなった。
(バカか俺は、何口走ってんだよぉ!)
「違う違う、そういうことじゃなくて、だから、えっと、ごめ……」
俺が謝ろうとしたその時、その子は何も言わず背を向けて走り去ってしまった。
「そりゃ逃げたくもなるよな」
俺はその遠くなる後姿を見ながら、
(意外と大きかったなぁ、それに控えめに言って最高にやわらかかった)
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