クラスメイトと一緒に異世界召喚されて10年。頼まれていた魔王討伐も果たしてやる事も無くなったので当時のメンバーと百物語をする
王都アルメリア。ここは商業が盛んで様々な日用品から珍しい物品まで、ありとあらゆる物が大陸中から集められ売られている。しかし、そんな王都も昔は魔王を名乗る敵性勢力によって侵略されていた。
魔王は魔物と呼ばれる人や獣とも異なる存在を操り人類に宣戦を布告。瞬く間に人類が住まう土地の半分以上を奪った。これを見かねたアルメリアの王は魔術師に号令を発し、異世界より勇者を召喚することを宣言。そして―――
「俺たちが召喚されて魔王を倒してくれってオウサマに頼まれた訳だな。まさか当時17歳だった俺達が異世界召喚されるなんて思わなかったよな。まぁ、剣と魔法の世界を求めてなかったといえば嘘になるけどね」
蝋燭の明かりに照らされながらテーブルを囲む三人の男女の中の一人が言葉を発した。男は黒髪黒目の身長175cmほどの男だが椅子に座って組んでいる腕は筋肉質で服に隠された部分もかなり鍛えられているイケメンだった。
「真翔はお気楽で良いわよね。異文化コミュニケーションどころか世界すら違うんだから苦労の連続だったじゃない。特に異世界に来て一番辛いのは日本の品々が気軽に買えないって事よ。それは今もだけど」
真翔と呼ばれた男にそう語るのは3人の中での紅一点、室内で魔女のような帽子と上等なローブを着ている女だった。ローブを着ているので体型が良く分からない筈だが、何故か体に沿ってローブが密着しているので胸に2つ付いたメロンサイズの何かとセクシーなボディラインが凶悪だ。
「凛さん、そうは言っても僕たちが異世界召喚されてから10年も経っています。そんなこと言われたらこっちじゃ食べられないカップラーメンとか思い出して辛くなるので言わないで下さいよ。とはいえ、当時は魔王を倒したら日本に帰れると思っていましたよね……まさか魔王を倒した後に「召喚は一方通行で二度と地球に帰れない」って言われたときの絶望感ときたら……みんな怒って王都の防衛機能を半壊させちゃいましたもんね」
女に続いて言葉を発したのは最初の男よりも長身で恐らく185cm以上はある優男だった。真翔と呼ばれた男と同じで黒髪黒目。上等な服を着ているが身軽で動きやすい服装に見える。
「おいおい、王都の兵舎を破壊しまくったのは蒼汰だったろうが。俺は王城を破壊しただけでそこまで酷いことはしていないはずだ」
「十分酷い事だと思うけどねぇ……」
どっちもどっちなやり取りをする男どもをしり目に溜息を吐く女。無益なやり取りがしばらく続いた後、落ち着いた頃を見計らって凛と呼ばれた女は続ける。
「それで?異世界で百物語なんて面白そうだなと思って参加してそこそこ盛り上がった訳だけれど、肝心の100話目の大取りで怖くない話で締めるなんて、そんなことないわよね、蒼汰?」
「あぁ、怖さは保証するよ」
蒼汰はにっこりと笑ってそう弁明した。
魔王が討伐されて7年、当時17歳で高校2年生だった真翔・凛・蒼汰が異世界に召喚されて10年。
既に27歳というそこそこ良い年齢になった彼らは魔王討伐によって得た莫大な資金で購入した屋敷の中で蝋燭の明かりを囲んで百物語をしていた。
百物語とは日本で伝統的な怪談会のことで、参加者で持ち寄って文字通り百の怪談を話す会である。そして百話語り終えると本物の物の怪や怪奇が現れると言われている。伝統的な形式では新月の夜に行われるが、そんなことは気にしない3人によってなんちゃって百物語が開催された。
異世界に召喚されて10年の節目を迎えた彼らは、今までやったことがない何か“特別な”ことをしようということでどういう訳か開催されたのが百物語だったのである。そしてただ百物語をするだけでは物足りないということで「3人の中で一番怖い話をしたと認められた優勝者は最近手に入れた葡萄の黄金地帯とも呼ばれる隣国ベオグラント産の120年物の超高級ワイン(120年前の大戦で戦火を免れたワインで現存するのは確認されただけで世界に3本しかない。1本で城だけでなく城下町まで作れる値段という馬鹿みたいなワイン)を独り占めに出来るというオマケ(メイン)も付いていた。全員酒好きなので全員が本気である。
そんな百物語も99話分の怪談を話し終え、とうとう最後の100話目に差し掛かった時に100話目の“語り手”である蒼汰が昔話を始めたのであった。
「君たちに本題を話す前にちゃんと確認しておきたいことがあるんだけど……『一番怖い話をした人が優勝』ってところなんだけどさ。怖い時ってみんな絶叫すると思うんだ。だから『一番絶叫させた話をした人が優勝』と言っても過言じゃないのではないかな?と思うんだよ」
「勿体ぶって何を言い出すのかと思えば……蒼汰が何を用意してきたのかは知らないけど、俺の『ミノタウロスの亡霊の話』に怖さで勝てるとは思えないな」
「あら?そんな事言ってるけど私の『10人の魔女の呪い』も怖かったでしょ?」
「う……まぁ、何というか……確かに怖かったけどもよ……」
「おっと二人とも、そこまでだ。とりあえず『一番絶叫させた人が優勝』ということで良いね?」
話が脱線し始めた頃に蒼汰が強引に話を戻す。そう言われた二人も、確かに判定基準のようなものが無ければ永遠にワインの権利を巡って終わらないだろうと思ったのかそれに同意した。
「それで100話目の“怖い話”を話す前にちょっと前置きと披露したいことがあるんだ」
「なんだよ、蒼汰まだ焦らすってのかぁ?娼館のミリーちゃんだってそこまで焦らさないぞ」
「真翔、サイテーだわ」
「へへへ、一応“女性”が居るんだったな、悪かった悪かった」
「アタシが女じゃないとでも?ぶん殴るわよ」
どうしようもないじゃれ合いを始めた真翔と凛を尻目に蒼汰は勝手に話を進めることにした。
「実は最近だけど僕は“記憶”と“記録”と“再生”の魔術を合体させた“複合魔術”を開発したんだ。過去の出来事をホログラムとして投影する複合魔術なんだけど、これを“再現”と名付けたんだ」
そう言って蒼汰は呪文を唱える。
「それで100話目の怖い話……つまり恐怖なんだけど……君達自身が恐怖の根源となり、君達自身がソレを味わう事になるから覚悟してね♡」
蒼汰から放たれた光はホログラムのように中空に何かを再現し始めた。それは王城の内部を象り始め次第に人物も現れ始めた。
「おいおいおいおい、これは何の魔術だよ、面白そうな魔術だな」
「そういえば盗賊みたいな成りをしてるけど、あなた“賢者”だったものね。新しい呪文の開発はお手の物って訳ね?さて、何を見せてくれるのやら」
「随分と余裕みたいだけど、恐怖はこれからだよ。まだ序の口とはいえ最初に“再現”されるのは僕たちが最初に召喚されたときの王城なんだから」
意味ありげに蒼汰は笑みを浮かべる。ホログラムが王城と人物を映し出すと次第にそのホログラムが動き始めた。
―――――――
『おぉ、勇者様!よくぞ参られた!』
アルメリアの王に話しかけられ、召喚されたばかりの3人が挙動不審な動きを始める。そして開口一番に口を開いたのは真翔だった。
『うひょぉぉぉぉ!!異世界召喚キタコレ!!間違いなく俺勇者じゃん!!やっぱり俺って他のモブと違うってリアルでずっと思ってたけど、その通りだったんだ!!アレだろ、チートで無双して女の子と一杯イチャイチャするやつだろこれ!!俺の時代キタァァァァァァァァ!!』
ホログラムに映し出された真翔は、今の引き締まった身体と比べて明らかに太っており脂肪で糸目になった目を精いっぱい広げて叫び出した。彼は痛々しい内容を次々に口走っており、召喚した王を含めた重臣たちが絶句しているのをホログラムは容赦なく投影していた。
「ぐっふぉおぉ!!!」
ホログラムを見ていた真翔が吐血した。その後、ホログラムと同期したように絶叫し出す。
「ぐわああああああああああああ!!やめてくれええええええええぇぇl!!」
「いやいや真翔、恐怖はこれからだって」
「馬鹿野郎!“恐怖”の種類が違うじゃねぇかああああああ!!」
『こほん、勇者様が3人も召喚されるとは想定外だった。時にそちらの女性は名を何と申す』
王は話にならない男(真翔)を一時放っておくことにして次に女性に話しかけた。その女性は紫色の特攻服を着ていた。
『んだテメェコラ!!誰に話しかけてると思っとるんや!!爆走連合レディースチーム三代目ヘッドのブラッディ・マリー様と知っての狼藉かコラァ!!!』
「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!」
ホログラムを見ていた凛がオーガにでも殴られたかのように絶叫しながら椅子からぶっ飛んだ。
「やめろおおおおおおぉぉぉぉぉ蒼汰テメェコラああああああぁぁぁぁ!!」
「凛、さっきも真翔とやりあってたときに少し出てたけど今も地が出てるよ……でも恐怖は序の口だって言ったろう?」
「いや、だから自分の“黒歴史”を見せられるってのは百物語的な“恐怖”の意味合いじゃねぇって言ってんだろうが!!」
凛や真翔の戯言を華麗に無視した蒼汰が指でホログラムを操作すると、次々と様々な場面転換をしながら二人の黒歴史を映し出した。さながら美味しい場面のみを抽出して流しているかのような悪意を感じる場面ばかりのように見える。
―――――――
ホログラムは森の中を映し出した。そこには魔物と真翔、そして魔物から守られるように真翔の後ろに数人の村人が居た。
『うひょひょひょひょ!!俺っち剣術の才能ありまくりんぐぅ!オーガなんて俺の足元にも及ばないね!!受けてみろ!必殺!スーパー・ハイパー・ウルトラサンダー・フェニックス斬りぃぃぃぃぃ』
フェニックスでも何でもない普通の斬撃によって倒れるオーガ。近くにいた村人が『さすが勇者様!』と称える中、真翔はわざとらしいすっとぼけた顔で村人に振り返りこうのたまった。
『あれぇ?ひょっとしてボク、何かやっちゃいました?(どやぁ)』
―――――――
「殺せえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ホログラムに映っているアイツを今すぐに殺せええぇぇぇぇぇぇ!!」
「ホログラムに映ってるの“アンタ”だから”!っていうかこのホログラム別な意味で見るの怖いんだけど!!」
―――――――
場面が転換しホログラムはアルメリアの街中を映し出す。人族や亜人族とよばれる人々が雑踏をにぎわせている中、雑貨屋に立ち寄っている凛が映し出された。
雑貨屋には亜人族用の品物も取り揃えている。凛が見ているのは猫族の耳当てで見た目は“猫耳のカチューシャ”のように見える。凛は『かわいい』と誰にも聞こえないような小さな声(ホログラムでは“わざと”音量を大きくして聞こえるようにしている)で呟くと、徐に自分の頭に耳当てを装着し、鏡に向かって独特なポーズを取ってこう言ったのだ。
『にゃーん』
――――――――
「うばあああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
女性とは思えない叫び声とともに吐血をまき散らしながら再び椅子から吹き飛んでいく凛。
「うっわ、エッグい……可愛いとか可愛くないのレベル以前の問題で元レディース総長の『にゃーん』は破壊力しかないわぁ……」
その後も二人の黒歴史が流され始め、そのたびに絶叫する二人。「これ以上見るのは怖い!」と叫ぶ満身創痍の彼らを尻目に楽しそうにしている蒼汰という名のドSは「これで最後です」とのたまうと新たな魔術を発動させた。
蒼汰が魔術を発動させるとホログラムが消え、周囲が歪み始めた。それを見た凛は慌てたように叫ぶ。
「ちょっと蒼汰!時空が歪んでるじゃないの!一歩間違えて制御を誤ったら街が吹き飛ぶわよ!」
凛の一言を聞いてギョッとした表情を浮かべる真翔。それらを無視して蒼汰は言葉を発する。
「“百物語”……伝統的な言い伝えだと百話目の後に“本物の物の怪や怪奇が現れる”と言われてるね……それで単刀直入に経緯を全部ハショって言うと、怪異をあえて可視化したのがあの空間の歪みさ。そしてその空間の歪みを利用して僕はとあることが出来ることに気づいたんだ」
そう言って蒼汰は呪文を紡ぎ終える。紡ぎ終えた瞬間、見えていた空間の歪みが爆発したような激しい閃光を放ち、3人は光の渦に包まれた。
―――――――――
3人が目を開くと、目の前に“電柱”があった。周りを見ると夜のようで“アスファルト”で舗装された道路と“コンクリート”の壁が見える。呪文を行使した本人含め、全員が暫く放心したように動けなかった。そして開口一番に口を開いたのは蒼汰だった。
「やったぁぁ!!呪文は成功した!!俺達、地球に、現代に戻ってこれたよ!!」
そう言って二人に抱き着く蒼汰。二人は未だに放心状態であったが、蒼汰の一言によって自分の身に何が起きたのかをおおよそ理解した。
「おいおいおいおい!!どうなってやがる!!もう戻れないんじゃなかったのか!!本当に、戻ってこれた……良かった……良かった……」
「え、帰って、来れたの……私、本当に帰って来れたの……う……うううぅ……うれぢいよぉ」
蒼汰に抱き着かれた二人は身に起こった現実を理解し始めると感情が噴出したのか泣き始めてしまった。さらに暫くの時を道路の真ん中で三人抱き合うという怪しい状態で過ごした後、気持ちの整理がついたのか3人は話し始める。
「それにしてもまた日本に帰って来れるとはね……でも百物語が地球に帰る為に必要だったとしても百話目の辱めは無いよな」
ジト目で蒼汰を睨みつける真翔。もちろんその視線には凛のものも混ざっていた。
「そうよ!!いくら蒼汰でも今回ばかりは許さないんだから!」
ボキボキと指を鳴らす二人を蒼汰は脅威に感じ始める。
「そ、そうだ!百物語のオチを話してなかったけど、今話ちゃうね!」
「「冥土の土産に聞いてやる」」
示し合わせたように二人に同じセリフを言われた蒼汰は起死回生の一手として思っていたことをのたまった。
「異世界召喚されて10年。僕たちの最終学歴は中卒・27歳無職のニートで、前職は勇者(笑)と魔女(笑)と賢者(笑)。こんなこと履歴書にも書けないだろうし、これから僕たちにどんな人生が待ってると思う?」
「「「いやあああああああああああああああああああああああ」」」
蒼汰が放った一言は自分にも刺さった挙句に仲間にも貫通し、夜の街に3人の絶叫が木霊したという。
――――――――――――――――
この物語のどうでもいい設定と背景
・真翔
異世界召喚された3人のクラスメイトの一人。召喚された当初は坊ちゃん刈りのデブで中二病を発症していた。異世界召喚された際に“剣術”の才能が開花し様々な技術を吸収していった。そして事あるごとに自分の力を誇示するように振舞っていたので一部の人間には大変嫌われていた。意外と努力家な所もあり、自己顕示欲を満たす為に剣術を極めて言った際にデブから卒業。親の遺伝子が良かったのか痩せたらイケメンだったというテンプレを発揮した。魔王を討伐した際に称号が与えられ“勇者”と呼ばれるようになった。地球に戻った後は自慢の体力を活かして土木関係の仕事に就くことが出来た。
・凛
元「爆走連合」という字面だけ見ても頭の悪いという感想しか浮かばないレディースチームの三代目総長。異世界召喚された3人の中の一人で、たまたま暇つぶしに学校へ来ていた際に召喚に巻き込まれた。一見見目麗しいように見えるが完全な武闘派。鉄バット片手に鉄砲玉をするような彼女が異世界召喚された際に開花したのは意外にも魔術の才能だった。元レディースである彼女は行動が乱暴で荒々しく異世界人の目線では“男”のような振る舞いに見えたため、見目麗しい見た目と相まって令嬢から告白されることもあったが、それは彼女にとってはトラウマのようなものである。とあるイケメンに惚れて告白したことがあるが「男のようにしか見えない」と言われ玉砕。それ以来、女性らしい自分を追求するようになった。可愛い物好きで人目を忍んで雑貨屋に買い物にいったりしていたのを隠していたが、今回の百物語で哀れにも醜態を暴露された。魔王を討伐した際に“魔女”の称号を貰う。地球に帰還後は通信制で大学卒業資格を得てOLとなる。
・蒼汰
百物語の元凶的存在。盗賊のような恰好をした長身の男で異世界召喚された3人の中の一人で性格はドS。召喚された際に開花したのは魔術方面での研究者としての才能だった。彼は様々な魔力の質を調べることにより全く新しい魔術を創造したり組み合わせて膨大な威力を持つ魔術を開発していった。魔術の才もあり、魔王を討伐した功績の一旦は彼が担っているといっても過言ではない。実は半年前に百物語で訪れる怪異を利用すれば自作のオリジナル魔術で地球に帰れる事を突き止めていたが「あのアホ共(真翔と凛)が驚く一番の舞台で披露したい」というドS的な理由で今回初披露となった。魔王を討伐した際に与えられた称号は“賢者”。実は地球に戻った後も魔術が使えることに気づいた彼は百物語の怪異を利用せずとも異世界と地球を行き来できる魔術を研究。異世界に召喚されて11年の節目の日に真翔の想い人であったミリーという女性をサプライズで召喚しようと画策している。それがまたもう一波乱を生む事になるのであるが、それはまた別の話である。
・王都アルメリア
アルメリア王国の王宮がある都市。魔王による脅威が去った後は商業が盛んな国の王都となった。三人を召喚したアルメリア王国は勇者一人を召喚しようと宮廷魔術師に勅命を下したが不安定な魔力力場が発生し推定勇者の真翔の近くにいた周辺のクラスメイト2名を巻き込んで異世界召喚をしてしまった。異界を渡る影響で肉体に変化が生じた3人はそれぞれ類まれな能力を発揮して魔王を討伐。この国に平和を齎した……といえば聞こえは良いだろうが、その3人は属性のベクトルが被らないタイプのトラブルメーカーで、真翔は対人関係で致命的な問題を起こし、凛は器物破損や外交問題に発展する手前の暴力沙汰を引き起こし、蒼汰は魔術研究の失敗により定期的に王都の一部が爆発に見舞われるという割かし甚大な被害を与えた。魔王を討伐しなかったらマイナスの影響しか与えなかったかもしれないと当時の王は語ったという。
・隣国ベオグラント産の120年物の超高級ワイン
質の高い葡萄の栽培で名高いベオグランドにおいて「過去300年を遡ってもこれ以上の質の高い葡萄が出来た事は無い」と言わしめた年に出来た葡萄を使用して作られた120年前のワイン。同年に大戦があり戦火を免れたワインは大変貴重で現存するのは確認されただけで世界に3本しかないという貴重という言葉だけでは言い表せない代物。1本で城だけでなく城下町まで作れる値段という馬鹿みたいなワインだが、普通はそれだけの金を払っても持ち主は当然、譲るわけがない。今回譲ってくれた理由は「魔王を討伐して人類を救ってくれた三英雄が求めている」という事情があった為に持ち主が大量の金貨と引き換えに特別に手放したのである。実は地球へ帰還する際、しれっと蒼汰が隠し持ってきていた。その後、それが発覚してまたひと騒動起きるのだが、それはまた別の話。
・娼館のミリーちゃん
真翔が通っている娼館の娼婦。プロポーションは抜群で胸は凛と比べても一回り大きい。三英雄の一人である真翔が通っているというステータスを欲し、生まれて初めて娼館に来た真翔を虜にしたのが切っ掛けで知り合ったが、なんやかんやで実はミリー自身もいつのまにか純朴で一途に自分を想ってくれている真翔に惹かれていた。三英雄が人知れず地球に帰還して行方不明になった際には王都中がパニックになったが、彼女だけは真翔が故郷に帰ったのだと悟ったのだった。ちなみに三英雄が居なくなった1年後に地球に召喚されるのだが、それはまた別の話。
・令嬢達
男のような振る舞いをしていた当時の凛に恋をした令嬢。女性が男のような恰好と振舞いをするという新たな性癖にビビっと来た彼女らは凛に恋をして告白、玉砕を経験した。三英雄が去った後は「女性が男性と女性を演じる」という劇をプロデュースし、王都にセンセーションを巻き起こした。
――――――――
気に入って頂きましたら評価を宜しくお願い致します。創作意欲も沸きますので|ω・)