惑わしの森11
*
「ずいぶんと遠いんだな。」
「まぁな。」
アランのねぐらまでは、相当な距離があった。
坂道を上がって行くからには、山の上の方に向かっていることは間違いない。
背の高い下草が生い茂り、道らしき道もない酷い道程だった。
ただ、アランは俺のことを女と思ってるからなのか、なにかにつけ俺のことを気遣ってくれた。
ユリウスとはえらい違いだ。
それに、しばらく歩いた時、空に丸い月が見えたんだ。
久しぶりに見えた月に、俺はしばしみとれてしまった。
「このあたりは、下より木が少ないから昼間だと明るいんだぜ。」
「へぇ…そうなのか。」
それにしてももう月が出てるってことは…一体何時間歩いてるんだ?
「アラン…」
「もうすぐだ。
あの茂みの向こうなんだ。」
その言葉は嘘ではなかった。
アランが指差した先には茂みしかないように思えたが、その先には洞窟がぽっかりと口を開けていた。
「わが家へ、ようこそ。」
アランがおどけてポーズを決めた。
洞窟の入り口はあまり大きくなく、背の高いユリウスにはギリギリの高さだったが、通路を進んだ先に、居間にしては広すぎる程の空間が現れた。
アランは持っていた松明を壁にかけ、もう一方の松明にも火を点けた。
明るい火の光に照らし出された部屋の片隅には、植物の弦で編んだと思われる枕のようなものがあり、食べ物らしきものの入った籠やこまごましたものがいくつか置いてあった。
「殺風景な部屋だろ?」
「いや、なかなか良いセンスだと思う…わよ。」
俺がそう言うと、アランは苦笑した。
「ま、とにかく座ってくれ。
あ、その前に水を汲んでおくか?」
「水場は近くにあるの?」
「あぁ、すぐそばだ。」
ユリウスを洞窟に残し、俺は水筒を持ってアランに着いて行った。
アランの言った通り、洞窟からほんの数分歩いた所に泉があった。
「わぁ!」
俺は泉の水をすくい、ごくごくと飲んだ。
このところは、残りの水を心配しながらわずかずつしか飲んでなかったから。
「生き返った気分だ!」
思う存分水を飲んだ俺は、水筒に水を汲み入れた。
「ありがとう、あんたのおかげで助かったよ。」
「気にすんなって。
さ、帰って何か食べよう。」




