魔女7
「あれか…」
「ほら見ろ!俺の言った通り、ちゃんとあっただろうが!」
そう言いたい気持ちをぐっと抑えた。
奴と言い争って苛々するのも馬鹿馬鹿しいから。
「じゃ、行こうか。」
「待て。相手は魔女なのだぞ。
こちらには武器もない。
なのに…」
「アレクシスのことを知りたいんだろ!?」
「くっ…」
ユリウスは唇を噛みしめ、わなわなと震えていた。
その姿に俺は吹き出しそうになるのを堪え、魔女の家に向かってすたすたと歩き続けた。
(いざとなったら、とにかく走って逃げよう…
今の俺にはそうするしか手がない…)
扉の前で、大きく深呼吸をすると、俺は、古めかしい木の扉を叩いた。
しかし、返事がない。
「魔女はいないのか?」
気が付くと、ユリウスがすぐそばに来ていた。
「こんばんは!」
大きな声を張り上げながら、俺は再び扉を叩いた。
「誰じゃ。騒がしいのう…」
扉の奥からしゃがれた声が聞こえ、ゆっくりと扉が開かれた。
そこに立っていたのは小柄な婆さん。
長い白髪をひとつに束ね、鷲鼻で、への字の口をしたいかにも魔女らしい婆さんだった。
「あ、こ、こんばんは。」
「……何の用じゃ。わしは忙しいんじゃ。早く言え。」
「あ…す、すみません。
実は、俺…じゃない…私達はフクロウを探してまして…」
「何?フクロウじゃと…
ん…んんん……?」
魔女は、俺に近付き、俺の顔をしみじみとみつめた。
「おまえ、呪いをかけられておるな。」
「わ、わかるんですか!?」
「当たり前じゃ!わしを誰じゃと思っておる。
魔女の中の大魔女・サンドラじゃぞ!」
「そ、そうなんですか…」
サンドラって言われても、俺は魔女に知り合いなんていないし、魔女の世界の事にも詳しくない。
婆さんがどんなものすごい魔女なのか、それともただのはったりなのかもわからない。




