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Snowy owl~幸せを探して~  作者: 神在琉葵
最高で最悪な日
15/120

最高で最悪の日12




「エリーズ!起きてるか!?

エリーズ!」


俺は、エリーズの泊まってる部屋の扉を叩いた。




「……誰?」


程なくして、扉の向こう側から聞きなれたエリーズの声が聞こえた。




「俺だ!」


「……俺?」




(あ…そうだった…)




今の俺は、今までの男の俺じゃないってことにはたと気付き、慌てて言い直した。





「わ…私…ステファンの妹の…」


「……ステファンの?」


俺がそう言うと、エリーズはやっと鍵を開けてくれた。

まだ起き立てらしく、ガウンを羽織り、全くのすっぴんで髪も乱れていたが、それがまた妙に色っぽい。




「何?私の顔になにかついてる?」


「え?……あ、そうじゃねぇんだ……じゃなくて、そうじゃないんです。

に、兄さんが言ってた通り、綺麗な人だなと思って…」


俺がそう言うと、エリーズの顔は不機嫌そうな表情に変わった。

何か気に障ることでも言ってしまったのか、それともこんな朝早くに叩き起こしたのがまずかったのか…




「……そんなことより、こんな朝っぱらから何なの?

ステファンに何かあったの?」


「あ、そ、そうなんです!

じ…実は、家族にものすごく大変なことが起きて、私ではどうにもならないので兄さんを呼びに来て…

兄さんはその用が片付くまで帰って来れませんが、なるべく早くに戻って来るからしばらくの間待ってて欲しいと、あなたに言付を頼まれて…」


話しながら自分でもいやになって来る程、ひどく曖昧な言い訳だった。

だが、今はこのくらいのことしか思いつかず、俺はエリーズがどんな反応を見せるかと、どきどきしながら彼女の返答を待った。




「……そう。

わかったわ。」


「え……それだけですか?」


あまりに素っ気ない彼女の言葉に、俺は思わずそう問い返していた。




「それだけって…他になにかあるの?」


「い…いえ…そういうわけでは…」


「じゃあ、もう良いわね?

私まだ眠いから失礼するわ。」


冷たく扉が閉められようとした時、俺はたまらなくなってエリーズの身体に抱きついた。




「な、何なの!?一体…」


彼女が驚くのも無理はない。

エリーズは俺を引き離そうとしたが、俺は力を込めてエリーズの身体にしがみついた。

これからしばらく…もしかしたら、考えているよりずっと長い間、会えないかもしれないんだから。




「エリーズ…兄さんが…あなたを誰よりも愛していると…

そして、兄さんの代わりにハグを…」


そう言った途端、エリーズは俺の瞳をじっとみつめ、その腕から抗う力が抜けた。




(ありがとう、エリーズ…

愛してる…世界で一番愛してるぜ…)


口に出せない想いの丈を、心の中で俺は何度も叫び続けた。


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