最高で最悪の日11
「とにかく…そういうことだ。
では、私はアレクシスを探しに行く。
おまえは、女としての新しい人生を楽しむのだな。」
エルフはそう言い残すと、俺を置いてさっさと歩き始めた。
「ま、待て!
てめぇ、俺をこのままにして行くつもりか!」
「……しつこいな。
おまえがそんな罰を受けた理由はもう説明しただろう?」
エルフは振り返り、苦々しい声でそう答える。
「勝手なこと、言ってんじゃねぇぞ!
俺は、元に戻してもらうまでおまえの傍を離れない!」
「私は一生おまえを許す気はない。
おまえはそれだけ……」
「よしっ!わかった!」
俺はエルフの言葉を遮り、膝を叩いた。
「ようやく諦める気になったか。」
「そうじゃねぇ!
俺はこれからおまえと一緒にアレクシスを探しに行く。
アレクシスは俺が必ず捕まえてみせる!
だから…その時は、俺を元に戻してくれ!
頼む!
俺はあちこちを旅してるから、町の情報にも詳しいし、一緒にいるとなにかと役に立つ事も多いぜ。
な!お願いだ!」
必死だった。
俺は、どうしても男に戻りたい!
戻って、エリーズと幸せな家庭を築きたい!
その一心で、俺はエルフに懇願した。
「……なるほど。
話はよくわかった。
良いだろう…おまえがアレクシスを無事に捕まえることが出来たら、おまえを元に戻してやろう。」
「ほ、本当だな!
絶対だぞ!」
「しつこいぞ!わかったと言っただろう。
では、話は決まった。
今すぐ出発するぞ!」
助かった……
俺は頭の中から冷や汗がどっと吹き出るのを感じた。
「ちょ…ちょっとだけここで待っててくれ!
宿から荷物を取って来る。
なぁに、心配するな。
アレクシスの行きそうな場所は見当がついてるんだ。」
「なに!それは本当か!?」
「あぁ、本当だ!
だから、どこにも行くなよ!
すぐに戻って来るからな!」
俺はズボンの裾を折り返し、宿に向かって走り出した。
靴もぶかぶかになっていて、走り辛いったらこの上なかった。
本当は荷物なんてどうだって良いんだ。
俺が必死になって走る真の目的は別のことだ。