最高で最悪の日10
「ち、畜生ーーーー!
おまえの魂胆がやっとわかったぞ!
なんて執念深いことを…
てめぇ…エルフだなんて嘘だろ!
こんなことを考えるなんて、やっぱりおまえは悪魔に決まってる!」
「全く、失敬な奴だな。
悪魔と一緒にするな。
悪魔だったらおまえはきっともっと醜い女に変えられているぞ。
今のおまえはけっこう美人だ。
それで、もう少し品を良くすれば、おまえを嫁にもらってくれる男もみつかるかもしれんぞ。」
「だ、だ、だ、誰が男なんかと!
俺は、エリーズと結婚するんだ!」
俺がそう言うと、エルフは喉の奥を鳴らして笑った。
「エリーズが女のおまえを好きになるかな…」
「も、もちろんだ!
正直に事のなりゆきを話せば、エリーズは俺が元に戻るまで必ず待ってくれる!
エリーズはそういう出来た女なんだ!」
「そうかな…そうとは思えんが、それならば…」
エルフは、急に目を閉じて俯いたかと思うと、低い声でなにかを呟き始めた。
(なんだ?こいつ、突然、何を始めやがったんだ?
……こ、これは…!)
エルフのこの行動が何を意味するのか気付いた俺は、その場から逃げ出そうと踵を返した。
まさに、その時、エルフの声がぴたっと停まる。
(……あれ?)
振り向くと、エルフは薄ら笑いを浮かべて俺をみていた。
俺の身体にまるで異変はない。
……さては、こいつ、失敗しやがったな…
俺はほっと胸を撫で下ろした。
「もしも……」
「え?」
「もしも、おまえが自分の正体を誰かに話したら、おまえはその場でカエルに変わる。
今、そういう呪いを付け加えておいた。」
すました顔でエルフが言った言葉を、俺は今一度、心の中で復唱した。
(もしも、おまえが自分の正体を誰かに話したら、おまえはその場でカエルに変わる。)
「……な、な、な、なんだってぇ!?」
やっぱり、こいつは悪魔に違いない…
とことん、俺とエリーズの恋路を邪魔するつもりのようだ。
せっかく、うまくいきそうだったのに…
結婚まであと一歩の所まで漕ぎ付けていたのに…
「畜生ーーーーー!」
俺は、両の拳で地面を激しく叩き付けた。