あの町へ21
*
「本当にありがとうございました。」
「ステファン…ありがとう。
あんたには本当に世話になった。」
「エリーズ…幸せにな…」
俺には、それだけ言うのが精いっぱいだった。
次の朝、俺は二人を見送った。
奴らは故郷である北の大陸に帰るらしい。
汽笛が鳴って、船が港を離れる…
俺は、甲板の二人に手を振って…だんだん小さくなる船を見送った。
船の姿がなんだかぼんやりかすんで見える…
(畜生め…!)
俺は、流れ出た涙を指で拭った。
俺の恋はあっけなく終わった…
ここ最近のことがまるで夢だったかのように思える。
恋い焦がれてたエリーズが俺のプロポーズを受けてくれて…
意地悪なエルフに女にされて…
白いフクロウを追いかけて…
そして、ようやく幸せになれると思ったら…
なんてことだ…まさかこんな結末が待っていようとは…
畜生!あんな宝石、もらわなきゃ良かった。
どっかでとっとと売っ払っときゃあ良かった…
でも…あれを魔女からもらったから…
もらった宝石をエリーズにやったから…
クライブの呪いは解け、そして二人は幸せになれたんだ…
そう、元々、結婚するはずだったのはあの二人だ…
俺は、やけで結婚されようとしてただけ…
エリーズは俺のことなんて、なんとも思っちゃいなかった。
……そんなんじゃ、きっとうまくはいかない。
エリーズだって幸せにはなれなかっただろう…
(これで良いんだ…これで…)
ちょっとばかし無理はしてるが…俺はエリーズの幸せを祈ろうと思う。
なんたって、エリーズは俺が心の底から惚れた女だ…
相手の男は頼りなさそうには見えるが、エリーズのためにプリンセス・ルビーをみつけてやろうと、あいつなりに頑張った。
それに、なんたって、エリーズはあいつにぞっこんみたいだし…
うん…きっとあいつならエリーズを幸せにしてくれるだろう。
寂しくなんてないぞ。俺はけっこうモテるんだから、女なんていくらでも寄って来るさ!それに……俺にはお宝探しがある…!
そもそも俺には結婚なんて向いてなかったんだ、きっと。
もっとお宝を探せって、神様が言ってるのかもしれない。
港を離れ、俺は酒場へ向かった。
酒場はいろんな情報が聞ける場所だ。
なにか良い話が聞けるかもしれない。
(よ~し!
またすごいお宝をみつけてやるぜ!)
俺のハートはちょっとばかし冷めてひび割れてしまったが、その代わり、忘れようとしていたトレジャーハンター魂は、また熱く激しく燃え上がった。