あの町へ18
「プリンセス・ルビー…」
エリーズは小さな声で囁き、真珠のような丸い涙を一粒こぼした。
その涙は、エリーズの手の中の宝石にぽとんと落ちて…
その時、ぼん!という何かが弾くような音がして、その場に白い煙が立ちこめた。
「な、なにが起きたんだ…?」
白い煙が空気に溶け込むと、その場には見知らぬ男がぼーっとした顔で立っていた。
「ク…クライブ!クライブなの!?」
「え?エリーズ!?ど、どうして…」
二人はお互いに驚いた表情を浮かべ…そして、次の瞬間、強く抱き合い、熱い涙を流し始めた。
俺は、目の前のことが理解出来ず、ただその場で呆然と二人をみつめてた。
「……どういうことなんだ!?
エリーズ…この男を知ってるのか?」
「知ってるも何も…この人はクライブ…私の大切な人だ!」
「大切な…人?」
二人は、熱い眼差しでお互いを見つめあいながら抱き合っている。
「えっと…エリーズ…
どういうことなんだ?こいつは誰だって?」
「私達は結婚を誓った仲だった。
結婚する前に、クライブは、私にすばらしい宝石をプレゼントしたいから待っててくれとこの大陸に旅立った。」
け、け、け、結婚!?
俺の頭はますます混乱し、ただ、ただ、二人をみつめていた。
「エリーズとの結婚が決まった頃、僕は、たまたま道具屋で、プリンセス・ルビーの地図というものを手に入れました。
その宝石は、他には類を見ないほど見事なもので、しかも、持ち主を世界一幸せにしてくれるものだと聞きました。
僕は、それをエリーズにぜひ贈りたいと思いました。
でも、その地図が本物かどうかもわかりませんし、僕は宝探しなんてしたこともない。
だから、多分、みつからないだろうとは思ってましたけど、それでも、エリーズにその宝石を贈りたくて、僕は旅立ったんです。」
男はいかにも育ちの良さそうな品の良い顔と、穏やかな声をしていた。
多分、貴族の息子かそんなところだろう。
しかし、どういうことなんだ?
こいつは一体いつどこからここに来た?
それにエリーズの大切な人って…そりゃあ、一体、どういうことなんだ!?
「旅をしているうちに、僕はラムジーという男と出会いました。
ラムジーは魔法使い…つまり、男の魔女のような者で、プリンセス・ルビーはそう簡単には手に入らないことと、お宝のある場所はとても危険な場所だから着いて行ってやろうと言ってくれました。
地図に書いてあった場所はすぐにみつかりましたが、本当に危険な場所でした。
宝のある部屋は隠し扉に隠されており、その先も毒矢が飛んで来たり、床に落とし穴があったり…僕一人で行ってたら、きっと命を落としていたことでしょう。
いや、僕にはあの隠し扉さえみつけられなかったと思います。」