あの町へ17
「あ…そうだ。指輪を買わなきゃならないな。」
俺としたことがうっかりしていた。
結婚するっていうのに、まだ指輪も買ってなかったとは…
とにかくエリーズを探さなきゃって、そのことに気を取られてたからだな…
「いいよ、そんなもの…いらないよ。」
「そういうわけにはいかない…指輪はすぐに…あ、そうだ…!」
その時、俺は、ふと魔女にもらった宝石のことを思い出した。
「指輪はまだだけど、エリーズ…あんたにお土産があったんだ。」
俺は懐から宝石を取り出した。
「ステファン……これは?」
「大きさは申し分ないが、色はいまいひとつだな。多分、それほどの価値はないと思うんだが、魔女にもらったものなんだ。珍しいだろ?」
「なんだって?魔女に?」
「そうなんだ…ここに戻って来る途中にいろいろあってな。
魔女が言うには、これは、持ち主を幸せにする宝石だって…まるで、これがプリンセス・ルビーみたいなことを言ってな…」
「プリンセス・ルビー…!」
エリーズは宝石をじっとみつめ、次第に、瞳を潤ませた。
「あ…言っとくが、本物のプリンセス・ルビーじゃないぜ。
ただ、魔女がそんなことを言っただけで…」
エリーズ…なぜ、そんな悲しそうな顔をするんだ?
エリーズは、心が壊れてしまったかのような悲しい顔をしていた。
そして、まるで俺の声が聞こえていないみたいに、宝石をじっとみつめていた。