あの町へ16
*
「エリーズ…長い間待たせて本当にすまなかったな。
でも…なんだって、船になんか…」
「……故郷に帰ろうと思ったのよ。」
「故郷に?」
エリーズは小さく頷く。
「あんたはなかなか帰って来ないし…待ってるうちに、私、騙されたんじゃないかって思えてきたんだ。
あの日、あんたの妹だっていう女が私に会いに来たけど、何かあったのなら、多分、あんたが直接言いに来るはず。
いくら急用だって、そのくらいの時間はあるはずじゃない。」
「あ、あれは本当に俺の妹なんだ。
あん時はとにかく一刻も早く両親の元に行かないとならなくて、俺も焦ってたっていうか、なんというか頭が混乱して…」
「ご両親に何かあったのかい?」
「ま、まぁな。」
なかなかうまい言い訳が思いつかず、俺はそう言って誤魔化すしかなかった。
「それで、ご両親は無事だったの?」
「う、うん、思ったより長いことかかったが、なんとかな…」
「そうか、それは良かった。」
「心配かけて、本当にすまなかった。
でも、両親のことはもう落ち着いたし、これからはもう絶対に寂しい想いはさせない。
少し遅くなったけど…エリーズ…結婚しよう!」
「……そうだね。」
エリーズはどこか寂しそうな顔で静かに微笑んだ。
なんでだろう?
俺のことを信じてないのか?
それとも、長い間待たせたから拗ねてるのか?