あの町へ14
次の朝、俺達は山神の祠を目指して出発した。
険しい道のりではあったが、アランのおかげで迷うこともなかったし、昼過ぎにはなんとかその場所に着いた。
「ここだ。」
「へぇ…ここが山神の祠か…」
これといった特徴も何もない、小さな古ぼけた祠だった。
中にはアランの言っていた通りに、穏やかな顔をした女神像が安置され、花や果物が供えられていた。
(…エリーズの奴、なんだってこんなところまで…)
こんな山奥まで、しかも、お宝探しでもなんでもなく、ただ願掛けだけに来るなんて…
それほど、俺のことが心配だったってことなのか…
(エリーズ…心配かけて本当にごめんな…)
俺も女神像に向かって祈りを捧げた。
早くエリーズに会えますようにと…
アランも真剣に何事かを祈っていた。
アランのことだから、ステファニーの無事でも祈ってるのか…
「じゃ、行こうか。」
俺達は祈りを済ませるとすぐに、山の向こう側を目指した。
アランの話によると、ふもとに小さな村があるらしい。
日が暮れる前に、なんとかそこまで着けると嬉しいのだが…
そうでなければ今夜は野宿だ。
慣れてるとはいえ、どうせならベッドの上で眠りたい。
少しペースを早めて、俺達は歩き続けた。
その甲斐あって、どうにか村にたどり着くことが出来た。
宿さえない小さな村だったが、その代わり、朝まで開いているという酒場があった。
そこで話を聞いてみたところ、しばらく前にエリーズらしき女がここを訪ね、この先の町についていろいろ聞いていたとのこと。
エリーズは、やはりここに来たんだ!
俺は確実にエリーズの足跡を辿っている。
この分ならきっとエリーズを見つけられるだろうという可能性が見えて来て、どこか気分がほっとした。
*
「じゃあ、気をつけてな。
エリーズに会えることを祈ってるぜ。」
「ありがとう、アラン。
あんたも達者でな!」
アランとは、村の近くで別れた。
奴の故郷は、俺の行く方向とは違う方角らしい。
どうかあいつにも素敵なお相手がみつかりますようにと、心の中で祈った。
その後は、一人で街道沿いに進んで行った。
相棒がいない旅っていうのは久しぶりだから、なんとなく寂しいような気もする。
町に着く度にエリーズのことを聞き込み、そして、行く先々でエリーズの情報を仕入れた。
エリーズは、各町にしばらく滞在し、少しずつ東に向かって進んで行ったようだった。
俺は正しい道を進んでいる。
きっと、もうすぐエリーズに追いつくはずだ。