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あの町へ13

「そういえば…」




「何か思い当たることがあるのか?」


「俺…一度、ステファニーに迫ったことがあったんだ。

そしたら、あいつ…まるで初心な小娘みたいに、走って逃げてった。

それに…あれだけの器量良しなのに、いまだに独身だっていうのも、考えてみりゃおかしな話だ。」


「やっぱりそうか!

きっと、ステファニーは一生結婚してはいけない身分だったんだ!」


俺は大げさに頷いて見せた。




「そんな…それじゃあ、ステファニーが可哀想過ぎるじゃないか。」


「でも、それが村の掟なら仕方がない。

……俺が思うに、ステファニーはきっとあんたのことが好きだったんだ。

だけど、自分は結婚出来る立場じゃないし、もしかしたら、村の場所を余所者に知られてはいけないっていうしきたりもあったのかもしれない。

だから、あんたに嘘を吐いて、泣く泣く離れて行ったんじゃないのか?」


「そんな……」


我ながらうまい嘘を思いついたと思う。

アランは瞳を潤ませて、うつむいていた。

奴が、ステファニーとの思い出を良いものとして記憶してくれれば良いのだが…

そして、誰か良い人と巡り合い、ステファニーのことは早く忘れて幸せになってほしい。







「おはよう、ステファン!」




次の日の朝、アランの顔は今までとはすっかり変わっていた。

どこか吹っ切れたように、晴れ晴れとしていた。




「どうした、アラン…

心境の変化でもあったのか?」


「あんたは鋭いな。

その通りだ。

昨夜、一晩、ゆっくりと考えた。

あんたの言う通り、ステファニーはきっと俺のことが好きだったんだと思う。

でも、気持ちのままに動けないなにかがあったんだ…

あんたの推測通りなのかもしれない。

残念だけど、俺にはきっとどうすることも出来なかったんだ。

村の掟ってもんは、どんなに馬鹿馬鹿しいものでも、どうすることも出来ないからな…」


「その通りだ。

もしかしたら、ステファニーが無理を通したら家族に害が及ぶのかもしれないし、きっと、どうしようもないことだったんだ。」


「そうだ…ステファニーはそんなことも言っていた。

もしも、フクロウを連れて帰ることが出来なければ、家族にも害が及ぶとかなんとか…」


「だろ??

ステファニーはだからこそ、あんたの傍から離れたんだ。

あんたを故郷に連れてったりしたら、今度はあんたに被害が及ぶと思って…」


「ス…ステファニー…

そんなに俺のことを……」


アランは、肩を震わせむせび泣く…




嘘を吐いたことには胸が痛むが、これでアランの心の傷はずいぶんと癒えたことだろう。

そう思うと、俺の罪悪感も少しだけ薄らいだ。


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