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あの町へ10

そしてまた次の日…俺は、昨日と同じような時間にレストランに向かい、夕飯を摂ってから酒場に向かった。


レストランでは、たまたま話好きな男と相席になり、思ったよりも少し遅い時間になってしまった。




いつものようにテーブルをまわりながらエリーズの話を聞いていたら、昨日の男に声をかけられた。




「よう、あんちゃん!

あんたと同じような境遇の男がいるぜ。

一緒に飲んだらどうだ?」


「同じような境遇って?」


「結婚を誓った女に逃げられたらしい。」


「ば、ばかなことを言うな!

俺は逃げられてなんかいない!」




全く失礼な奴だ!

エリーズはただちょっと気晴らしに出かけただけなのに…

逃げられただと!?

俺は、頭にかーっと血が上るのを感じた。





「まぁまぁ…」




そんな俺の気持ちにも気づかず、男は俺の腕をつかんで、奥のテーブルに連れて行く。





(あっ!)




俺はその後ろ姿に見覚えがあった。

まずいっ!

逃げようと思ったら、運悪くそいつが振り向き、俺と目が合ってしまった。

そう…アランと目が合ったんだ。




「あ…あの…その…」




焦る俺とは正反対にアランはまるで反応しない。




(なんで……あ、そうか…!

俺は男に戻ったんだ!)




ついうっかりしていた。

アランが今の俺を見ても、あのステファニーだとわかるはずがないんだ。

俺はほっと胸をなで下ろした。




「このあんちゃんも、結婚を誓った女に逃げられたんだ。」


「だ、だから、それは…」


「そうか、あんたも…

今夜は飲もう!飲んで、あんな女のことなんて忘れようぜ!」




アランはふらふらと立ち上がって俺の腕をつかみ、自分の隣に座らせた。




「さ!飲めっ!」




アランはグラスになみなみと酒を注いだ。




「あ、ありがとう。」




出された酒を俺は素直に飲み干した。




それにしてもひどい顔だ…

元々、アランは酒に弱いのに、かなり無理して飲んだんだろう。

目が完全に据わっている。




「ううう…ステファニーの馬鹿野郎~!!」




アランはテーブルを殴り付けながら、泣き崩れた。

やっぱりあんな騙すようなやり方はせずに、ちゃんと話した方が良かったのか…

アランの心の傷は思ったより深いようだ。

今更ながら、罪悪感に胸が締め付けられる。




「今夜はとことん付き合うぜ。さぁ、飲もう。」




俺は、アランの背中を優しく叩いた。




「ありがとう…あんた、良い人だな…」




アランは俺に抱きつき、子供みたいに泣きじゃくる…




(すまない、アラン…)




俺は朝までずっと、ステファニーの悪口と、ステファニーがどれだけ良い女だったかって話を聞かされた。

アランは、思ってた以上に、俺にぞっこんだったようだ。

この分じゃ、立ち直るにもまだずいぶんかかりそうだ…



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