あの町へ9
まさか…俺が長い間戻って来なかったから、エリーズの奴、俺に愛想を尽かせて…
「ない、ない、ない、ない!!」
そんなことあるもんか。 エリーズは、俺と結婚するって言ってくれたんだ。
二年かけて、ようやく俺という男の良さをわかってくれたんだ。
そう簡単に心変わりなんてするもんか。
うん、大丈夫だ。
必ず、エリーズはみつかる!
そうだ…もしかしたら、エリーズは気晴らしにお宝探しに行ってるだけかもしれない。
俺がいない寂しさをそういうことで晴らしてても不思議はない。
そうだよな…
ずっと宿屋にいたら、誰だって退屈だもんな。
外にも出かけたくなるよな…
そう考えると、少しだけ気持ちが落ち着いた。
(エリーズ…愛してる…)
エリーズのことを考えながら、俺はいつの間にか眠りに落ちていた。
*
(あぁ、腹へった。)
激しい空腹を感じて、俺は目を覚ました。
柱の時計を見ると、もう夕方だった。
思ったよりも長い間眠っていたようだ。
俺は、身支度を済ませると、町のレストランに向かい、その足で昨日の酒場に戻った。
昨夜聞いた二人組のトレジャー・ハンターはまだ帰っていなかった。
俺は昨夜と同じようにエリーズの情報を聞いて回ったが、誰からもエリーズに関する話は聞けなかった。
仕方なく、適当なテーブルに紛れ込み、一緒に酒を飲んでいたところ、新たに入ってきた男がエリーズらしき女を見たと話した。
男の話す女の外見はまさにエリーズそのものだ。
間違いなくそれはエリーズだと思った。
「あんな別嬪はめったにいないからな。良く覚えてるぜ。
たまにひとりでここに来ては、何杯かあおって帰っていったよ。」
「それで、エリーズとはどんな話をしたんだ?」
「話?あの女は綺麗だがひどく可愛いげのない女でな。
誰が話しかけても、ろくな返事はしなかった。」
「そうか…」
そうなんだよな…
エリーズは最初からそうだった。
俺もどれだけこけにされたことか…
本当にクールな女なんだ。
「そういえば…」
「何かあったのか?」
「一度だけ、あの女が涙を流してるのを見たことがある。飲み過ぎたんだかなんだかわからないが、とても悲しそうな顔をしていたな。」
「悲しそうな顔…」
そうか…俺のせいなんだな。
すまない、エリーズ…
俺が長いことひとりにしちまったから…
きっと、エリーズは寂しかったんだな。
寂しくてたまらずに、それで気晴らしにお宝探しに出掛けた…
多分、そんなところだろう。
でも、それなら、俺に伝言の一つでも残しておいてくれりゃあ良いものを…