あの町へ8
(エリーズ…どこに行っちまったんだ…)
その晩はさんざん飲んで、酔いつぶれ…
俺は次の朝、店の前で寒くて目覚めた。
きっと、追い出されたんだな…
なんだかエリーズの夢を見てたような気がする…
(いてて…)
ずきっと痛む頭を押さえながら、俺はふらふらと宿屋に向かって歩いて行った。
まったくなんてこった…
まさか、こんなことになるなんて、考えてもみなかった。
ユリウスに呪いを解いてもらって…
宿屋に行ったら、エリーズがそこにいるもんだと思い込んでた。
俺の姿を見たら、エリーズは目に涙を溜めて俺に抱き付いてきて…
そして、俺達は熱い口づけを交わしながら、久しぶりの再会を祝って…
その晩は…
その晩は…
俺は、エリーズと結ばれて…
(はぁぁ…)
「なんだね?あんた、泊まるのかい?」
俺の甘い妄想を打ち破ったのは、宿屋の親父の野太い声だった。
「え?あ…あぁ、そ、そうなんだ。
何泊するかはまだわからないけど…頼むよ。」
「じゃ、二階の一番奥の部屋を使ってくれ。」
俺は手渡された鍵を持って、二階に上がった。
部屋に入ると、すぐに寝台に横になる。
しばらく寝よう…
そう思って目を閉じた時に、ふと思い出した。
エリーズが泊まってたのは、三つ手前の部屋だった…と。
きっとあのままあの部屋で待っててくれると思ったのに…
それにしても、なんでエリーズはいなくなったんだ?
もしかして、宿賃がなくなったのか?
いや、そんなことはない。
エリーズとはいくつもの仕事をして、それなりの実入りはあった。
このくらいの間に路銀が底を尽くとは思えねぇ。
それにいざとなったら、俺がやった宝石を売れば、なんとかなるはずだ。
じゃあ、なんだ?
具合でも悪くなったのか?
いや、それならなおさらここを離れないはずだ。
具合の悪い時にわざわざ離れないだろうし、もし、そうだったら、宿屋の者だって知ってるはずだ。
だとしたら、 何か特別な用でも出来たんだろうか?
でも…特別な用ってどんなことだ??
考えれば考えるほど、いろんなことが気になって俺は全然眠れなくなった。