あの町へ7
*
「な、なんだって!?」
宿屋に行った俺は、思いがけないことを聞かされた。
エリーズが、宿を発ったという話だ。
「そ、それはいつなんだ?
それで、どこに行った?」
「どこに行ったかなんてわかるわけはないよ。
何も言わなかったからね。
発ったのは、もうだいぶ前だよ。
三か月…いや、もう少し前だったかねぇ…」
「そ、そんな…」
なぜだ?
なぜ、エリーズはそんなことを…!?
そりゃあ、戻って来るまでには何か月もかかったが、俺は用事が済んだら必ず帰ると言ったはずだ…
(エリーズ…どこに行ったんだ…?)
今夜はもう遅い。
とにかく、今は冷静になって、この町でエリーズの情報を探すしかない。
エリーズがどこに行ったかの手がかりをみつけて、すぐに追いかけないと…
(まずは酒場だ!)
俺は、すぐさま酒場に向かった。
あの日…エリーズとの結婚をみんなに祝ってもらったあの酒場だ…!
「ちょっといいか?」
俺は、店に入るなり、各テーブルに着いて、エリーズの話を聞いて回った。
だが、芳しい話は誰からも聞くことは出来なかった。
それも当然なのかもしれない。
もう何か月も前の話なんだから…
どうすれば良い?
どうすれば、エリーズの行方がわかるんだ?
俺は、脳みそを振り絞って考えた。
(……そうだ!)
「なぁ、ここにトレジャー・ハンターはいるか?」
酒場中に聞こえるような大声で叫んだ。
トレジャー・ハンターなら、同業者のエリーズの噂を知ってるんじゃないかって思ったんだ。
しかし、返事はなかった。
酒場にはトレジャー・ハンターはひとりもいないようだ。
「そういえば、何日か前に二人組のトレジャー・ハンターがここに来たぜ。」
「なんだって?なんて奴だ?」
「さぁ…名前までは聞いちゃいない。
ただ…この近くにお宝探しに来てるみたいで、お宝が見つかったら、みんなに酒をおごるなんて言っていた。」
「ってことは、そいつらはまたこの町に戻って来るんだな?」
「多分、そうだろうな。」
その二人組が、エリーズの噂を知ってると言う確証はない。
だが、この先に進むのか、それとも後戻りをするのかによって、エリーズに近付くのかさらに離れるのかが変わって来る。
ここはなんとしても、手掛かりがほしいところだ。
だから、俺はあと数日だけこの町に留まり、その二人組が戻って来るのを待つことにした。
そいつらがなんらかの情報を知っていることを期待して…