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あの町へ6




「大丈夫か?しっかりしろ!」


「う、うう…」


目が覚めた時、あたりは夕暮れに包まれ、俺の前にはユリウスがいた。

ゆっくりと半身を起こす…




「ユリウ…ス……」


俺は思わず自分ののどに手をやった。

そう…俺の声は元通りの男の声に戻っていたからだ。




「ユリウス…俺……」


胸のふくらみもなくなっていた。

折り曲げられたズボンは、脛のあたりまでしかなく、ぶかぶかだった服もぴったりになっていた。

そっと、股間に手を伸ばす…

あった!あるべきものがそこにはあった。




「や、やった…!

俺…男に戻ったんだ!!」


俺は思わずユリウスに抱きついていた。

ユリウスは嫌がりもせずにじっとしていた。




「……おまえにはすまないことをしたな。」


「え?」


ユリウスには似つかわしくないその言葉に、俺は一瞬我が耳を疑った。




「あ…カエルに変わる呪いも解いておいたから、もう心配はない。」


「そ、そうなのか、ありがとう。」


俺がそう言うと、なんとなく気まずい沈黙が流れた。





「ステファン…」


ユリウスが俺の名を呼んだ。

今まではずっと「お前」呼ばわりで、名前を呼ばれたことはほとんどなかったから、なんだかちょっとおかしな気分だ。




「なんだ?」


ユリウスは、俺の目をじっとみつめ…そして、ゆっくりと口を開いた。




「……おまえには本当に世話になった。

アレクシスをみつけてくれてありがとう。」


「ユリウス……」


そんなこと言われたら、調子が狂うじゃないか…




「俺の方こそ大変なことをしてしまってすまなかったな。」


ユリウスは小さく首を振る。




「すぐにエルフの里に戻るのか?」


「あぁ…こっちにはずいぶんと長居をしてしまったからな。」


「そうか…じゃあ、達者でな。」


「あぁ…おまえもな。」


俺達は、お互いの身体を強く抱きしめた。

大嫌いだったはずのユリウスが、今はまるで親友みたいに思える。




「じゃあな!」


「エリーズとかいう女と幸せにな…」


ユリウスはゆっくりと町はずれの方へ歩き出した。




「ありがとう!」


「またいつか……」




「あ……」




手を振るユリウスの姿が急に薄くなり、そして、空気に溶け込むように掻き消えた。




(ユリウス……)




なんて言ったら良いんだろう…

ほっとしたような寂しいような…そんな切ない気持ちが胸の中を埋め尽くした。

意地悪でわからず屋でいつも不機嫌で…




そんなエルフがいたことを、俺は、きっと、一生忘れない…

俺はユリウスがいなくなった場所をずっとみつめてた。




(あ……!)




そうだ、こうしてはいられない!

早くエリーズに会いに行かなきゃ!




「エリーズ!!」




俺はその場から駆け出した。

エリーズの待つ宿屋を目指して…!


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