あの町へ4
「そういえば、せっかくもらったっていうのに、魔法の網は結局一度も使わなかったな。」
「アレクシスはみつかったけど…そうだ…せっかくだから、使ってみないか?」
「そうだな!それは面白そうだ。」
ユリウスも特に反対はしなかった。
俺達は、木々の間に何かいないかと、懸命に目をこらした。
「あ、あそこにフクロウがいるぞ!」
枝の上に一羽のフクロウが止まっていた。
「よしっ!それじゃあ、まずは私だ!」
俺はフクロウにそうっと近付き、狙いを定めた。
「えいっ!」
フクロウ目掛けて、俺は魔法の網を放った。
網は、フクロウのやや右側に飛んで行き、フクロウはバタバタと羽ばたいて逃げ去った。
アランがそれを見て、大きな笑い声をあげる。
「チェッ!」
何も捕らえられなかった網は空中でくるりと円を描いて、俺の手元に戻ってきた。
「本当に戻って来た!」
「さすがは魔法の網だな!」
「それにしてもけっこう難しいもんだ。思ったところにうまく投げられない。」
「次は俺だ!俺ならきっとうまくやれるぜ。」
アランは片目をつぶって、微笑んだ。
森の中を少し歩き、今度は枝の上にいるりすをみつけた。
「あそこにりすがいる。
「ようし…あいつにしよう。」
アランは足音を忍ばせてりすに近付き、そして気合いを込めて網を投げた。
「あ…ああっ…!」
りすはいち早く網を察知し、転がるようにして枝の上を走って逃げた。
「畜生!もう少しだったのに…本当に意外と難しいもんだな。」
「だろ?思った方向に投げるのはなかなかに難しいよな。」
「でも、ちゃんと戻って来てくれるのはすごいよな。
どうせなら、獲物のところまで追いかけてくれりゃあ良いのに…」
「いくら魔法でもそこまでは無理だろう。」
その後、ユリウスも投げてみたが、やはり捕らえることは出来なかった。 しかも、戻ってきた網が、鳥の飛び去った後に気を取られていたユリウスの頭にすっぽりかぶさり、俺達は腹を抱えて爆笑した。
あの気難しいユリウスさえもが、苦笑した。
考えてみれば、こんなに笑ったのは久しぶりのことだ。
俺はあと少しで呪いを解いてもらえるし、ユリウスはアレクシスがみつかった。
アランも俺達の嘘の役目が達成出来たと思ってるし、そんなだから、皆、気持ちも自然と明るくなってるのかもしれない。