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第一章 第八話 裏切者とお人好し

最近リアルが忙しく中々更新出来ず申し訳ありません。

少しずつでも執筆して行きたいと思いますので反逆勇者を宜しくお願い致します。


__突然の激痛が背中に走る。


___咄嗟に振り向くと。


___そこには見知った顔が無表情で俺の背中に短剣を突き立てていた。




ナターシャ・ノエル





出来れば間違いであって欲しかったが疑念と不安は…目の前で現実となる。






背中に深々と刺さる短剣の所為か、首から下が動かない。


ブランと糸の切れた操り人形のように倒れる。


ナターシャは突き立てた短剣から手を離すと瞬く間に距離を取る。


「あ…が……ぐ…」


辛うじて声を発する事は出来たがやはり身体が全く動かない


「貴様!!やはり裏切りおったな!!」


ガルディアンが倒れた俺の前に移動し、ナターシャへ両手持ちでハルバートを構える。


近くにいたオーウェンや他の騎士達も動揺が走る。


既に門をくぐり親衛隊の捕縛若しくは排除に向かってしまっている。


足並みは乱れてしまった。


「本性を表しおったか、お前達!あのダークエルフを取り囲むんじゃ」


二十数人が武器を構えてナターシャを取り囲む。


マズイ、あのスピードは囲んだ程度では絶対に無理だ。


「ガ…ル……ディ……アン……これを抜いて…くれ」


精一杯の声でガルディアンに伝える。


「…承知しました。行きますぞ」


ガルディアンは片手でハルバートを持ち、視線は逸らさずに背中の短剣に片手で握ると刺された方向に沿って引き抜く。


「____!!」


身体の中にある短剣が引き抜かれる感覚は文様し難く、続いて傷口からは血が溢れ出てくるが超回復が傷口を塞いで修復しているのか身体の感覚が戻ってくる。


首を動かしてナターシャの方を向くとナターシャを捕まえようとする騎士達が次々と倒れて行く。


まるで国民的バトルアニメのように目で追えない速さで動いている。


するとオーウェンが背中の大剣の留め金をパチンと外すと軽々と片手で持ち上げ構える。


「どうやらワシが出んとならんようじゃな」


傷口も完全に塞がり身体のあちこちがギシギシと軋みを挙げるが数秒でいつも通りに動く。


「主よ、まだ我の後ろへ」


俺が前に出ないように押さえるガルディアンの手をゆっくりと押し下げる。


「ガルディアン、ここは俺がやらないといけない」


ガルディアンは渋々と頷く。


囲みを掻き分けながら中心いるナターシャに声を掛ける。


「また、殺せなかったな…ナターシャ」


ナターシャは呆れたように首を横に振ると、ため息を一つ。


「はぁ…確かに急所を突いたと思いましたが……一体どうすれば貴方を殺せるのですか?」


少し前とは態度がまるで違う事に俺は困惑と怒りが込み上げる。


「何で裏切ったんだ…」

「………」

「俺は……俺達は信用出来なかったのか」

「………」


返答無し……だが口元が僅かに歪む。


「母親が捕まっているのは?」

「……私に家族はいません」


嘘か……。


「雇い主は辺境伯なのか」

「違います」


なら……。


「魔法使いか」

「………」


やはりか……。


「ここまで付いて来たのは、その魔法使いの指示か」

「貴方には知る必要の無いことです」

「俺の仲間になるつもりは本当に無いのか」

「しつこいですね!貴方は馬鹿ですか!ここまでの事をした相手を誘うなど…」

「俺は……お人好しだから」


するとナターシャの視界から影も形も無く消えてしまった。


「付き合いきれません」


と言うひどく鬱陶しそうな言葉を残して。


「ガルディアン、見えたか?」


「……」


ガルディアンは無言で首を横に振る。


「どういうことじゃカゲアキ!あのダークエルフはお前さんの連れじゃろう!」

「これでは辺境伯側に我々の作戦が筒抜けじゃないか!」

「一度先行している部隊を後退させなくては!」

「いや、ここは直ぐにでも先行部隊に合流して一気に叩くべきだ!」

「待たんか!熱くなっては視野を狭めるだけじゃ!」


ナターシャがあちら側の間者だとは薄々感じていたが最悪のタイミングでカミングアウトしたものだ。


床を見るとナターシャに倒された騎士達は立ち上がれないが、死んではいないようで唸っている。


痛そうだがナターシャにやられて骨折か打撲で済んで良かった方だ。


周りが煩いがこんな所で時間を無駄にしている間にも辺境伯側は対策を講じてしまう。


『黙らぬかっ!!!』


ガルディアンが恐らく"咆哮"のスキルを発動しながら叫んだ為なのか空気が震える。


グラリと目眩を起こしそうになるが何とか耐える。


他の騎士達もガルディアンの咆哮に当てられたのか、一気に静寂に包まれる。


「今大切なのは時を無駄にせず速やかに行動する事であろう!」


オーウェンはガルディアンの咆哮に耐えたようで、すぐに大剣をガルディアンに向ける。


「この裏切りはどう落とし前をつけるつもりじゃ!」


落とし前か…。


「皆さん!今は逸速く辺境伯の首を取ることが先決です!俺とガルディアンはこれから屋敷に向かいます!」


俺の話を聞くと騎士達が此方を向く。


「皆さんは直ぐに親衛隊の奴等の動きを封じて下さい!落とし前は辺境伯の首と恐らく裏で糸を引く魔法使いの首でつけましょう!」


少しは納得したのか、騎士達から向けられる剣が下がる。


「策はどうするんじゃ、真っ正面から向かっても殺られるだけじゃろう」


ようやく冷静になったのかオーウェンも大剣を背に戻す。


「今は辺境伯側の目を街の中へ向けさせたい、皆さんは敵戦力を各個撃破、若しくは無力化して頂き、最悪の場合街の外へ撤退して下さい、不足の事態があれば無理に叩く必要はありません」

「じゃがそれではお前さんが失敗すれば……」

「その時は処刑前に皆さんが団長を救い出すしかない」

「まるで博打じゃな」

「だがこのまま何もしなければ賭ける前から負けですよ」

「……」


オーウェンは腕を組み、目を閉じて唸る。


その様子を見てガルディアンは俺の近くへ来る。


「主よ、向かうならば急ぎましょう、露払いは我が引き受けましょう」


オーウェンは頭を掻きながら盛大な溜息をつくと此方に顔を向ける。


「こうなればワシも腹を括るぞ!お前達、倒れた者を救護班に連れて行くんじゃ他の者はワシと共に親衛隊の奴等を倒しに行くぞ!」


オーウェンの号令に騎士達が雄叫びを挙げる。


「お前さん二人は予定通りカゲアキに付いて行くんじゃ」


オーウェンに指名された騎士二人は敬礼する。


「「はっ!」」


向かって来る間に鑑定したが二人共レベルは15。


顔は……説明を省こう、悪い意味ではないけれど二人共に爽やかイケメン過ぎる。


このリア充め。


左の赤毛のイケメンがガストル、右の金髪イケメンがアレクシスと出てくる。


「ガストルです」「アレクシスです」


「カゲアキです、宜しくお願いします」

「ガルディアンだ」


「「………」」


二人は淡々と自己紹介するとそれ以上話す事はなかった。


確かに騎士団からしてみれば俺は裏切者を連れてきて、退くことの出来ない所まで煽動して、面倒を持ち込んだ。


その心中は穏やかではないだろう。


「目的は辺境伯と魔法使いの首と団長の救出です、二人には団長の救出をお願いします」


「「……」」


険悪な雰囲気で上司に命令されて仕方なくという感じだ。


「貴様ら、主を軽んじておるのか」


ガルディアンが二人に鋭い視線を向けると威圧感がビンビンと伝わる。


「ガルディアン、そのくらいでそれよりも急ごう」


二人はビクッと身体を震わせて後ずさる。


「「はい………」」


あの速度なら既にナターシャは魔法使いの所に到着してるだろう。


俺達も急がないと。


「その前にどうしても寄りたい場所がある」

「「「??」」」

__

____


同時刻 辺境伯屋敷


___ナターシャ・ノエル視点


私はナターシャ・ノエル。



魔法使いマエロル様の手となり脚となり、側で支えるのが私の役目。



あの方と出会ったのは私がまだ子供の頃だった。



物心付いた時には親は居らず、奴隷として売られている所を買われた。


それからはマエロル様から暗殺の技術と魔法の手解きを受け、あの方の邪魔者を排除する事になった。


辛くは無かった。


あの奴隷小屋の頃に比べるまでもない。


陽の当たらない薄汚れて赤錆の付いた檻の中で、その日その日をやっと生きるだけ。


死ねばゴミのように処分されるだけ。


あの方のおかげで私は力を手に入れる事が出来た。


___ある日


マエロル様から次の命令が下りました。


現在マエロル様の雇い主である辺境伯が自分の騎士団を潰したがっているそうです。


自らの騎士団も掌握出来ないとは情けない男ですね。


そんな事はどうでも良いですが今回は盗賊を討伐に出た部隊を盗賊を使い、皆殺しにするという事になりました。


楽な仕事の筈でした。


高見の見物で盗賊共と騎士達が殺し合うのを待って生き残った方を殺すだけ……。


あと数人で騎士団の全滅と言うこ所で邪魔が入りました。


男一人と……あれはミノタウロス!?


予定が狂いだしました。


まさかこんな所にミノタウロスが来るとは…それに隣の男は一体……。


男はカゲアキと名乗り私の嘘を信じて、辺境伯を暗殺しようと言い出しました。


殺そうとした相手を……お人好しですね……。


私でなくとも騙されて命を落とすでしょうね。


騙されているとは知らずに質問すると、どうやらカゲアキは勇者だと言っていました。


これはマエロル様に報告しなくては。


街へ到着すると騎士団と協力する事になり、騎士団との作戦会議も終わり……。


そろそろ私もこの情報をマエロル様に伝えなくては……。


そう考えながらも見張り台の上に続く階段へ私の足は向かっていました。


上まで階段を登るとカゲアキは見張り台から地平線に沈もうとする夕陽を見ていました。


嘘だと分かっていても私は、いつの間にかカゲアキに問い掛けていました。


__"何故私を助けるのか"___


するとカゲアキは。


__それでも目の前で救える人くらいは救いたいと思うよ。綺麗事だろうし上手く行くかは分からないけどね__


と答えました。


本気なのでしょう……ですがその甘さは貴方の命取りになります。


なんとなくカゲアキは、私が生き残るためにかなぐり捨てた物を大切にしているのでしょう。


自分でも不思議な事にカゲアキに注意してしまいました。


どうせ裏切るのというのに……。


この情報をマエロル様に流す時点で騎士団にもカゲアキや例えガルディアンには勝ち目は無いでしょう。


あの方は其ほどに強い。


いくらカゲアキにあの回復力やガルディアンが付いていようと。


それにしても噂をすれば、でしょうか。


見張り台の階段を降りるとそこには屈強なミノタウロス、ガルディアンが立っています。


私の方を見て腕を組んで私の進路を塞ぐように立っています。


「一つ聞かせよ」


まるで全てを見透かす様な鋭い視線で問われました。


「おぬしは主の敵か?味方か?」


恐らく何か勘の様なものを感じ取ったのでしょう。


私は当たり障りの無い答えを返しました。


「答えるまでもありませんね」

「ならば一つ忠告しておく、主はおぬしを気に入っているようだが……次は無いぞ」


ガルディアンの横をするりと通り抜けましたがそれ以上の追及も質問もありませんでした。


そして私は誰にも気付かれる事なく拠点を抜け出し、マエロル様のいる辺境伯の屋敷へたどり着く。


屋敷のマエロル様の使われている部屋へ向かい扉の前に立ちノックをしようとした瞬間、扉が開き、その先には会いたくない辺境伯と私兵の騎士が立っていた。


直ぐに進路を譲り頭を下げると辺境伯の方も私に気付いたようで、その脂肪の塊のような身体が私の前で止まる。


「お~、お~、ナターシャではないかぁぁ、ここ数日姿が見えなかったが何処へ行っておったぁ?」


舐めるような視線がとても気持ちが悪かったが、ここは耐えなくては。


「マエロル様のご命令で街の外へ出ておりました」


「お~、お~、そうかそうか、ならばマエロルは中だ、報告して来るがよいぞ」


威張るように背筋を伸ばすと肥え太った腹が更に前に出る。


「それでは、失礼します」


辺境伯に頭を下げてマエロル様の部屋の扉から中へと入る。


中は何かの走り書きしたような羊皮紙や紙が重ねられ。


本棚には数多くの書物が並べられています。


その先には壁に向けられた机で羽根ペンを動かすマエロル様の姿がありました…ローブで顔も隠しているので見えるのは口元だけ。


声をかけようとするとマエロル様は私に気付き机に向かったまま話します。


「ナターシャか……首尾はどうだ」


羽根ペンを止める事なく、淡々と話す。


「はい、実は少々問題がありまして、急ぎお伝えしなくてはならない大事がございまして……」


サラサラと動く羽根ペンがピタッと止まり、マロエル様が此方を向かれる。


「聞こう……」


「はい、実は___」


それから私は昨日から今日迄の出来事を全てマロエル様にお伝えした。


「__ですので夜にはここへ勇者が辺境伯の首を取りに来るでしょう………如何致しますか?」


暫くマロエル様は黙考するとローブの奥に見える口元がニヤリと笑みを浮かべる。


「面白い……今代の勇者がまさかこんな辺境の街へ来るとは…いや…"ここ"だからか……」


笑うマロエル様を見るのは久しぶりの事でそれ程に興味を引いたのだろう。


「ロナルド辺境伯には報告致しますか?」

「いや、伝えなくていい」

「よろしいのですか?」

「ああ、騎士団の好きにさせろ」

「では迎え討ちますか?」

「そんな事をよりもお前は直ぐに拠点へ戻り、本当に殺せないのかもう一度確認しろ、殺せたのならそれまでの事、殺せないならあとは放っておいても屋敷へ来るだろう」

「畏まりました……しかしマロエル様はカゲアキをどうされるおつもりなのですか?」

「お前は知らずとも良い……直ぐに分かる、早く向かえ」

「はい」


マロエル様に頭を下げ、私は部屋をあとにする。


私は今度こそカゲアキに引導を渡す為に、あの方の邪魔者を始末するために向かう。


それだけ考えればそれでいい。




___どんな汚れ仕事もやる覚悟を持った優しい女性だと言うことだけです__



何故、今その言葉を思い出すのでしょう……。




あんな言葉や優しさは何の意味もないというのに……。





どんなに取り繕ってもどうせ本性は他の人と同じ。




蹴落とし、憎み、妬み、陥れる。




___けどそんなお人好しの勇者が一人位いても良いんじゃ無いかな__



何故カゲアキの言葉が浮かんでくるのでしょう。



分りません……。



考えているうちに拠点の近くまで着いてしまいました。




止めましょう、既に私は引き返せない。



これが私の生き方です。




例え誰に何を言われようとも……。





____

___


時間は少し進み、騎士団が街で親衛隊と戦っている頃


___カゲアキ視点




入り組んだ路地をガストルとアレクシスの先導で進むと目の前に領主の屋敷が見えて来た。


近くの建物の陰に隠れ鉄柵の奥にある屋敷の様子を伺う。


三階建ての洋風建築の周りを無駄に広い庭があり、かがり火が所々に配置され赤々と闇夜を照らし、更に慌ただしく動く親衛隊の姿が見て取れる。


だが、屋敷の警備を固める気配は無い。


むしろ次々と屋敷から武器を携えて街中の方へと向かう。


何かがおかしい……。


普通に考えて私兵を雇おうと思う者が自分の周りを無防備にするだろうか?


ゴーレムにそれ程の信頼を置いている?


屋敷の中に更に兵がいるのか?


魔法使いの罠か?


色々な推測が浮かんで来る。



「主よ、ゴーレムが見当たりませんな」


「確かに…おかしいな」


余り時間は掛けられない。


リアレスさんとネルトさんは無事だといいけど。


「斥候の話だとゴーレムは三体でしたね?」


赤毛イケメンに聞くといちいちイケメンな仕草が腹立つがグッと押さえたて話を聞く。


「報告ではそうです、あんな巨体を一体何処に」


「兎も角、中へ潜入しましょう」


続いて金髪イケメンがやきもきしているようで落ち着かない様子だ。


仕方ない警備中の親衛隊を少し片付けるか。


「ガルディアンあそこのかがり火の無い所から柵を越えよう」

「承知しましたぞ、」


警備の手薄な屋敷の側面へと回り柵を越えて庭へと入る。


茂みに身を隠しながら入り口の方へ向かうが流石に警備が厳重で七人が見回っている……強行突破しかないか。


「行きますか?」


金髪イケメンが爽やかな笑みで聞いてくる。


実にイラッとする。


俺は先走りそうな二人を押さえ腰に下げた水袋の一つに手を伸ばす。


白銀の剣へ水を掛け、刃から滴り落ちる水は地面へ落ちる事は無く刃の周りにまとわりつき重力を無視したような光景だ。


昨夜の練習でこんな事も出来るのが分かった。


二人のイケメンは驚き口を開けている。


イケメンの驚く顔は気分が良い。


さらに、水を蛇のように剣先からロープ程の太さに伸ばしていく。


茂みから水を一番後ろの警備の方へ伸ばして背後へから水を針状にして頭を一突き。


何が起きたのかも判らないまま倒れると、ドサッという音で他の警備が気付くと倒した警備に駆け寄る所を地面へ広がる血を使いあとの六人を串刺しにして片付ける。


「流石は主、お見事です」


「「……」」


イケメン二人は驚いた顔から青い顔へ変わり言葉を失っていた。


簡単そうに思うが液体は遠くなる程、量が多い程に操作しずらく集中力が必要になる。


現に今は全身から汗が噴き出している。


蛇状にした水だけを水袋へ戻すと袖で顔の汗を拭い周りを確認して立ち上がる。


「さあ、急ごう」


「「はいっ!」」


イケメン二人が先程とは違い、敬礼までしているどういう心境の変化があったのか謎だ。


正面入り口の両開きの扉を左右に置かれたかがり火が照らしその扉を開くと中には正面に大きな階段があり、そこから左右に分かれるように左右の部屋へ行けるようだ。


イメージとしては地球で昔やった某有名ホラーゲームの洋館のような造りだ。


中に人は警備の兵は居らず、使用人さえいない。


不気味な静寂に包まれていた。


扉を開けた時に入った風が天井に吊り下げられたシャンデリアを揺らす音だけが響く。


「我々は団長を探します、御二人は辺境伯と魔法使いをお願いします」


ここでイケメン二人とは分かれ、俺とガルディアンは二人の首を狙いに行く。


「分かりました、二人共気を付けて下さい…もし団長をみつけたらそのまま安全な所まで連れて離脱してください」

「はいでは御武運を!」


全くどこまでイケメンなんだ。


二人と分かれ俺とガルディアンは屋敷の右側を捜索すると一階の廊下を左右の部屋を調べながら進むと先が別れ道となり左側の廊下から足音が聞こえる。


「主よ、此方の部屋へ」


ガルディアンが曲がり角に近い部屋を開け素早く中へ入り聞き耳を立てる。


__マロエル__ったのか___街へ出して__のかあぁ


_何時もので_____地下へ___ますか


____楽しみだ____今夜こそ完全に____向かうかのおぉ___


所々途切れ聞こえなかったがヤバそうなワードも幾つか聞こえた。


ガルディアンに顔を向け互いに頷くと部屋を出て声の向かった方へ向かう。


暫くすると前方を酷いメタボの男と騎士姿の男か歩いているのが見えた。


気付かれないように追跡したが、やはり他に誰も見当たらない。


暫くすると騎士がメタボの前に立ち、燭台の灯し火を頼りに薄暗い地下へと進んで行く。


一旦地下への入り口で立ち止まり、ガルディアンと相談する。


「多分あれが辺境伯だろ?」

「作戦会議の場での特徴とは酷似しますな」


あれが辺境伯だとするとさっき聞こえた"今夜こそ完全に"というワードが途轍もなく嫌な予感がする。


「この先何があるのか、想像したくないな」

「我もですな主よ……恐らくは主の予想は当たっているかと…」

「急ごう」


俺は近くの火の付いた燭台を持ち地下への階段をガルディアンと共に降る。


地下は一本道のようで、奥にゆらゆらと揺れる小さな蝋燭の灯りが見える。


奥から金属の軋む音と聞こえる。


俺は自分の持っていた燭台の蝋燭の火を消し、更に近づく。


「__!?、何者__オグォ…」


奥に見える鉄扉の前にいた、見張りの騎士は駆け出したガルディアンの強力な蹴りによって扉に叩きつけられ、鎧は曲がり鉄扉も凹む。


騎士は蛙を潰したような叫びを上げ、動かなくなる。


「_おい!どうした何があった!」


扉の向こうで声がするがここにいる時点で酷い臭いがする。


開けるの躊躇う程に……。


向こうから続けて確認の叫びが聞こえるがどうでも良い。


「ガルディアン……蹴破れ!」

「承知した主よ!」


ガルディアンは後ろ回し蹴りを二回叩き込むと扉は悲鳴を上げて吹き飛ぶ。


物凄い威力だ、あれは受けたくは無い……。


扉の奥には扉の下敷きとなったメタボ男がみっともなく叫ぶ。


俺は中へ入り見渡すと唖然とする。


部屋の中央にベットが一つ。


四隅には小汚い布の上に力無く座り込み片手を鎖で繋がれた四人の女性がいる。


喉を駆け上がってくる吐き気を堪え、みっともなく鉄扉で叫ぶメタボ男の横でしゃがむ。


「おい!何故ここにお前のような平民がおる!まぁそれは後で良い、早くこの扉を退けんか!」


メタボ男は傲慢な態度で俺に命令してくる。


こいつだろうが一応確認するか……。


「失礼ですが、ロナルド辺境伯様ですか?」

「そうだ、それより早くこの扉を__へぶう!ぶげっ!」


そいつは良かった。


メタボ男、改めてロナルド辺境伯の顔面に拳を二発お見舞いする。


すると辺境伯は奇声を上げて気絶する。


「フゥ、夜分遅く失礼しました。まったくこの部屋は……胸糞悪くなってくる。ガルディアン回復術を頼むよ」

「承知しました、主よ」


俺はガルディアンと近くの狼耳の女性に近づく。


ボロボロの服を着せられ着せられた女性に自分の着ていたマントを被せる


「……あなた……は……?」

「もう大丈夫だ、今助ける」


ガルディアンは右手を近づけると淡く揺らめく暖かな薄緑に発光する。


治癒(ヒール)……主よ我の回復術は初歩の物、この娘達のような状態では残念ながら限界がありますぞ」


確かに小さな傷は治っているようだが何か根本的な症状が治っていないようで脱力感が酷いようだ。


「いや、構わないから次の人を診てやって」

「承知しましたぞ」


俺は拠点で支給された回復薬の小瓶を取り出して目の前の女性へ飲ませようとする。


「いっ…嫌、何よ…それ」

「心配無い、回復薬だよ、ゆっくりと飲むんだ」


回復薬の入った小瓶を見た瞬間、酷く怯えた様子で取り乱すが落ち着かせて飲ませる。


他の女性も回復薬とガルディアンの回復術で何とか意識を取り戻しガルディアンの身体を隠す為の大きめマントを裂いて身体包む。


それぞれ違う種族のようで耳の形も違う、鑑定で調べたがそれぞれ獣人で人狼族、猫人族二人、兎人族と出てくる。


腕の鎖は鍵をクズ貴族から奪い外した。


四人とも元々美しかったのだろうが衰弱して痩せこけてなんとか立ち上がれたが足取りが覚束ない。


鉄扉を退けてクズ貴族の頬を思い切り引っぱたく。


「ぷぎゃあ!?貴様!さっきの平民じゃな!よく__」


クズ貴族は奇妙な叫びを上げて起きると俺に食って掛かるが

後ろのガルディアンを見ると真っ赤だった顔がみるみる青くなって口を魚のようにパクパクとしている。


まあその気持ちはわかるけど。


「あんたはここを出るまでの人質になって貰う」

「なっななななな何が望みだ、金か!女か」


残念でした……貴方の命です。


「そんな事より魔法使いは何処だ」

「マロエルか?それが目的か?ならば儂は関係ないのだな」


ベラベラと煩く感じているとガルディアンがハルバートの石突きを叩きクズ貴族の口を止める。


「聞かれた事だけ答えれば良い」


クズ貴族は口を閉じてコクコクと頷く。


それから魔法使いの情報を得て地上への通路を進む。


貴族は後ろ手に縛り前を歩かせる。


地上への階段を登り、誰もいない屋敷を歩く。


来る時と同じく不気味に静かで誰もいない。


不審に思いながらもあっという間に正面入口に到着してしまい扉に手を掛け外に出た瞬間。


庭の光景を見て唖然とする。


「待っていたぞ、今代の勇者カゲアキよ」

「おぉ!マロエル!儂を助けに来てくれたのか」



そこには魔法使いとナターシャ、それに親衛隊十数人と屋敷に入る前には確認出来なかったゴーレムと思われる身長三メートル程の三体が待ち構えていた。

誤字、脱字等ありましたら御指摘いただければ幸いです。


反逆勇者を読んで下さった皆様有難う御座います。

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