二話‐消えゆく日常
どうも皆さん、お久しぶりで巣。神ヶ月雨音です。
前回の投稿からだいぶ時間が経ってしまいました。申し訳ないです。
実はこの間、家のパソコンでWordが誓えなかったんです。遅れた理由はそれです(言い訳)。
では、聖天のQ、二話でございます。
夏休みに入った最初の土曜日、来人と夕姫はショッピングモールに出かけていた。人ごみの中なら、他のプレイヤーに襲われる危険も少ないと考えたのだ。
幸運なことに、夕姫がアルマの存在を認知してから約一週間、他のプレイヤーからの襲撃はなかった。また、来人自らプレイヤーを殺しに行くこともなかった。
「久々のデートだね~」
「そうだね。俺のせいで少し危険なのが申し訳ない」
「大丈夫だよ、気にしてない」
「いや、気にしろよ……」
「まあまあ、楽しもう?」
「そうだね」
しばらく楽しんでいた二人だったが、突如来人のポケットの中で携帯が震えた。
「嘘だろ……?」
来人は恐る恐る携帯を取り出し、レーダーのアプリを起動した。するとそこには、プレイヤーの存在を示すマークが、自分以外に二つ表示されていた。
「まじかよ……」
その上、そのうち一つは確実に来人の方へ向かってきていた。数秒悩んだ末、来人は
「ごめん夕姫。トイレ行ってくる」
「え、あ、うん。あそこのフードコートで待ってるね」
「うん。悪い」
「大丈夫だよ」
来人は携帯をポケットに仕舞うと、走り出した。
トイレ前までやって来た来人は、再度アプリを開いた。すると画面には、プレイヤーを示すマークが一つしか映っていなかった。
「殺されたか? それとも『潜伏』の能力か?」
『潜伏』の能力は、レーダーに映ることがない。先ほど映っていたプレイヤーの片方が『潜伏』の能力を持っていたならば、一つしか映っていないのも納得できる。
「あなたが、プレイヤーですか?」
突然声が聞こえ、来人はあわてて携帯から顔を上げた。するとそこには、背中ほどまでの長い髪を、後ろで一つに束ねた青年が立っていた。後ろ手にナイフを隠し持っているのが確認できる。
「ああ」
「どうしますか? あなたも流石にここでやりあうのは本意ではないでしょう?」
「そうだな。場所を移しましょうか」
来人は武器を持っていないという証明に掌を青年に見せた。青年もナイフをポケットに仕舞い、掌を見せた。
「隣に、今日は開いていない臨時駐車場がある。あそこなら人は来ない」
「では、そこへ行きましょうか」
来人と青年は、臨時駐車場へ侵入した。もちろん人はいないし、警備員もいなかった。しかしそれでも、少し離れたところに車道がある。人目につく可能性はゼロとは言えない。
「さあ、見つかる前に終わらせようか」
「それは気にしないで問題ないですよ。なぜなら」
すると次の瞬間、来人の視線が隣に立つショッピングモールにくぎ付けになった。その隙を狙うように、青年がナイフで切りかかった。
すんでのところでそれをかわした来人は、数歩下がって距離を取った。今は視線を青年に注いでいるが、気を抜けば隣のショッピングモールに目が向いてしまいそうになる。
「これは……」
「ご察しの通り、能力です」
能力『集中』
「相手の視線を意図した場所に向ける能力……通行人に気づかれないのも、ここに視線がいかないように調節してるためか」
「ご名答です。さあ、続きを始めましょうか」
そう言うと、青年は先ほどと同じようにナイフを構えて飛び掛かってきた。来人はその腕を掴み、そのまま後方に投げ飛ばした。そしてその着地点を狙って発砲する。しかし青年はそれをかわすと、負けじと発砲した。
「ちっ、中々やるじゃねえか」
「そちらこそ。そろそろ能力を使っては?」
「言われなくても使うさ」
能力『不可視』
来人は能力で姿を消すと、青年の周囲を回りながら無造作に発砲を繰り返した。青年は数発かすりながらも、致命傷を避けながらよけている。
「『不可視』……それなりに厄介な能力ですね。ですが」
青年は銃を取出し構えると、虚空に一発発砲した。
(一体何を……?)
すると、次の瞬間。
能力『追尾』
青年が放った銃弾が、消えているはずの来人めがけて動き始めた。
「嘘だろ!?」
来人はとっさに能力を解除し、追尾してくる銃弾を撃ち落とした。
「『追尾』なんて持ってるとはな。予想外だ」
「奥の手だったんですけどね。さすがに仕留められませんでしたか」
そう言いながら、青年は来人めがけて発砲した。来人は落ち着いた様子でそれを撃ち落としたが、視線の先に青年はいない。銃弾に気を取られていたのではない。またもや『集中』を使われたのだ。
「チェック」
背後から青年の声が聞こえた。すぐ後ろに気配を感じる。青年は価値を確信した。しかし
能力『決着の銃弾』
来人は、ひそかに構えていた左手で後ろ手に発砲した。完全に油断していた青年は、腹部に銃弾を受けてしまった。その瞬間、勝負が決した。
「驕ったな。俺がキングと知っていれば勝ち目はあっただろうが、今回は俺の勝ちだ」
青年が持っていた能力は二つ。『集中』と『追尾』だった。これらを合わせて、今来人が持っている能力は五つになる。所持能力数が増えつつあるため、これから狙われる危険性も高くなる。
「まあ、負けねえけどな」
そう呟くと、来人はショッピングモールへ向かって走って行った。
先の来人と青年の先頭を、少し離れたところから見ていた者がいた。
「あれがキング、月見里来人ね。中々戦えるようね……」
一瞬吹いた強風に、長い黒髪がたなびいた。
来人「来人と」
夕姫「夕姫の」
二人「教えてアルマのコーナー!」
来人「いぇーい」
夕姫「じゃあ来人、今回はプレイヤーの身体能力について教えて?」
来人「了解。アルマのプレイヤーは、基本的に身体能力が大幅に強化されているんだ。常人には出来ないことが簡単に出来るようになる。銃弾を避けたり、打ち落としたりとかね。まあ、ゲームの主人公みたいなことが出来るわけさ」
夕姫「ふむふむ……体の動かし方はわかるものなの?」
来人「まあ、感覚だよ。プレイヤーになってから、なんとなくで動かせるようになるんだ」
夕姫「へぇ……ますます謎だね」
来人「まあね」
夕姫「あ、そろそろ時間みたい。それでは皆さん、また次回にお会いしましょう」
来人「ではでは~」