一話~日常が非日常に変わるとき
どうも、皆さん始めまして。神ヶ月雨音と申します。
今回から、小説を投稿させていただくことになりました。
自分は学校で文芸部に所属しており、それなりに経験はありますが、まだまだ至らぬ点も多くあります。
つたない文章ですが、温かい目で読んでいただけると幸いです。
また、よければ感想など下さると飛んで喜びます。
では、聖天のQ、始まります。
ある夜。あるビルの最上階に位置する一室。その中に、無機質な機械音声が響く。
「不可逆性人類戦闘プログラム、デスゲーム『アルマ』。実行します」
なんてことのない、ごく普通の平日の午後。緋奈月夕姫は、彼氏の月見里来人と一緒に下校していた。
「ねえ来人、今度の日曜空いてる?」
「んー、空いてたと思うよ。何処か行く?」
「うん。どこに行こうか~」
「うーん」
傍から見ればなんてことのない光景だ。ただ一つ、来人が左手にナイフを隠し持っていることを除けば。
「なあ夕姫」
「ん?」
夕姫が来人のほうを向く。そして来人が左手を振り上げた。その時。
パン。と、乾いた銃声が響いて、来人は頭から血を流し前に倒れた。
「ひっ!」
咄嗟に後ずさる夕姫。しかし、倒れた来人は、みるみるうちに見知らぬ人物に姿が変わっていく。
「ったく、『偽造』なんていい能力持ってんだから、もう少し有効に使えっての」
「ら、来人?」
夕姫の背後に現れ、右手で拳銃を持っている少年は、まぎれもなく本物の来人だった。来人は少し悔しそうな表情をしながら、夕姫に言った。
「今の、見たよな?」
「う、うん……」
「くそっ、すまん夕姫。何があったか言いたいところだが……話はあとだ。俺の後ろに隠れろ」
「えっ?」
「いいから早く!」
来人の剣幕に気おされ、即座に夕姫は来人の後ろに隠れた。ふと見ると、さっき死んだ来人に化けていた人物は、跡形もなく消えていた。
「そこにいるんだろう?『不可視』使ってても判別できる」
「よくわかったね。まあ、レーダーで存在はばれているから仕方ないか」
突然、来人の視線の先に男が現れた。片手にはナイフを持っており、背中にはマシンガンを背負っている。
「お前もさっきのやつみたいに夕姫を狙うのか?」
「クイーンの可能性があるからね」
「だからって、一般人を無差別に殺していいわけじゃない」
「でも、殺さなきゃ俺たちが殺されるまで終わらない」
男は来人たちめがけて跳躍してきた。一気に間合いが詰まる。来人は男の腹に蹴りを入れると、男を吹き飛ばした。そして立て続けに引き金を引く。
「その子は彼女かい? 熱心だね」
「うるせえ」
男はあり得ない身体能力で来人の銃弾をかわしていく。来人もそれに合わせて男の動きを追いながら引き金を引いていく。
能力『不可視』
突然、男の姿が消えた。しかしそれでも来人は臆しない。虚空から放たれる銃弾を、あり得ないスピードで全て撃ち落としていく。
「夕姫、目瞑って耳塞いでろ」
「えっ、あ、うん」
来人の後ろで夕姫が蹲る。それを確認すると、来人は銃を握りなおした。
次の瞬間、ナイフが来人の首をかすめた。すんでのところで上体を逸らし、即死から免れた来人は、男の体があるであろう場所に銃を向ける。
「終わりだ」
能力『決着の銃弾』
来人が引き金を引いた途端、男の姿が現れ、地面に倒れた。ただ死期を待つのみの男は、少し顔を上げて来人を睨んだ。
「『決着の銃弾』……銃弾が当たった者を無条件で絶対に殺すことができる能力……つまりお前は……」
「そうさ。俺はキング。そこら辺のプレイヤーと同じにするな」
憎悪と納得の入り混じった表情をしたまま、男は息絶えた。すると、男の死体が消えていく。
「……よし、もう大丈夫だぞ夕姫」
「お、終わったの?」
恐る恐る目を開けた夕姫は、目の前に立つ来人から一歩後ずさった。
「まあ、そうなるよな。ちょっと説明するよ」
「う、うん」
「普通は一般人に教えるものじゃないんだけどな、仕方ない」
来人は一呼吸おいて、言った。
「これは不可逆式人類戦闘プログラム、デスゲーム『アルマ』だ」
夕暮れ時、公園にいた夕姫は、来人から受けた説明を何とか噛み砕いていた。
『アルマ』とは、全国の人間から無差別に選ばれた百人のプレイヤーが殺しあうデスゲームで、プレイヤーはそれぞれ一つずつ能力が与えられ、その能力を駆使して殺しあう。というのが主な内容だった。他には
・プレイヤーには、クイーン、キング、そして普通のプレイヤーの三種類が存在し、クイーンとキングは一人だけである。
・プレイヤー同士は、お互いが一般人かプレイヤーかの判別がレーダーで可能である。しかし、クイーンのみは他のプレイヤーから判別ができない。
・プレイヤー間の判別の際、通常のプレイヤーとキングの区別はできない。
・ゲームの終了条件は、クイーンが殺されるか、クイーン以外のプレイヤー全員が死ぬかである。なお、死亡したプレイヤーは生き返らない。
・他のプレイヤーを殺した場合、そのプレイヤーの能力を得ることができる。
・クイーンを殺すことができるのは、キングの持つ『決着の銃弾』のみである。また、キングが殺された場合、殺したプレイヤーがキングとなる。
・プレイヤーに殺される以外の死に方をした場合(事故死、自殺など)は、そのプレイヤーの能力はクイーンのものとなる。ただし、キングの場合はランダムで通常のプレイヤーがキングとなる。
などがあった。
「つまり、来人はキングで、ゲームを終わらせるためにクイーンを探してる。ってことでいいんだよね?」
「うん。俺はキングだから、他のプレイヤーに狙われやすいんだ。夕姫を危険に晒してしまうから隠してたかったんだけど、ごめんね」
「ううん、大丈夫だよ」
クイーンが一般人との判別がつかないため、先ほどのように無差別に一般人を虐殺する輩もいる。ついでにキングも殺せる可能性があるとしたら、夕姫が狙われる可能性もかなり高くなる。
「でも、俺が絶対に守るから、安心して」
「うん。来人なら信頼できる」
「よかった。じゃあ約束、他の人にアルマの話をしないこと、いい?」
「うん。わかった」
「よし、じゃあ帰ろうか。危険だから家までは送るよ」
「ありがとう」
夕姫は来人の右手を握って歩き出した。その手がつい先ほどまで拳銃を握っていたことなど、夕姫には関係なかった。
来人「来人と」
夕姫「夕姫の」
二人「"教えてアルマ"のコーナー!」
来人「いぇーい」
夕姫「わーい」
来人「てことで、あとがきのスペースを使って、アルマについての説明及び本編の復習をしていくよ!」
夕姫「今回はアルマについて!来人お願いね」
来人「はいはーい、アルマって言うのは、本編でも説明があった通り、無造作に選ばれた100人のプレイヤーが殺し合うゲームだよ。ゲームと言っても、死んだ人間は蘇らないんだ」
夕姫「怖い話だね。プレイヤーはどうやって見分けるの?」
来人「プレイヤーの携帯電話に、プレイヤー同士がどこにいるかわかるレーダーのアプリがインストールされているんだ。それを使って、一定範囲内のプレイヤーを探すことができるよ。また、普通のプレイヤーと一般人は、視認した時に感覚でわかるようになってるんだ」
夕姫「そのへんのメカニズムどうなってるの?」
来人「わかんないんだ。もちろん、本編でもあった通り、クイーンだけは判別がつかないよ」
夕姫「なんでこんなゲームが始まったんだろうね」
来人「さあ…誰が始めたかもわかんないしね。謎ばっかりだ。まあなんとかしてクリアするよ」
夕姫「うんその意気だよ来人。じゃあ今回はこの辺で、また次回お会いしましょう!」
来人「またね〜」