傷痕
「冬馬さん、起きてください。」
肩を軽く叩き昨日指定した時間ぴったりに目覚めを促しにきた光輝はすでに身支度を終えていた。昨日同様起き上がるのも精一杯な俺の起床の手伝いも担ってくれる。
「コーヒー淹れますね」
母親というより執事のように起こすよう頼んだ日の朝はこうして俺の身の回りの世話をする。
顔を洗い、歯を磨き、髪の毛をセットして、スーツを着ようとジャケットに手を伸ばした時昨日ダメになった灰色のスーツのことを思い出した。
「光輝、昨日俺が着てたスーツってどうした?」
「焦げてたんで捨てましたが、取っておいた方がよかったですか?」
「いや、クリーニングに出してたらクリーニング屋に電話して処分してもらおうと思ったんだけど、捨ててくれたならよかった」
慌てた様子の光輝に最初から捨てるつもりだったという意思を伝えたが、気に入っていたものだったから正直ショックだった。
光輝が淹れてくれたコーヒーを飲みながら朝のニュース番組を見る。
落ち着いた口調でニュースを読み上げるアナウンサーは可愛いと有名な人だが俺にはよくわかんなかった。
「コーヒーありがとう。そろそろ出る」
淹れてもらったコーヒーを飲み干し空になったマグカップを光輝に渡してジャケットを羽織る。多忙な一日が幕を開ける。その憂鬱に喝を入れるようにネクタイを上まで締めて玄関に向かい歩く。
玄関を出るとすぐに光輝が小走りでエレベーターのボタンを押しに行く。
俺がエレベーターの前に着いたらすぐに扉が開きどうぞという光輝に促され先にエレベーターに乗り指紋認証機に人差し指をかざして15階から下の階のボタンが収納されてる扉を開ける。
光輝がB3と書かれたボタンを押すとエレベーターは地下を目指して急降下を始めた。
「傷はどうですか?」
「正直、立ってるのもしんどい。」
歩くのどころか真っ直ぐ立っていることすらやっとな状態だった。
脇腹の傷が原因だろう。短いスパンでの負傷だから仕方がないといえば仕方がないのだが。
駐車場に到着して車に乗り込み光輝に六本木に向かうように指示をして車の中で脱力する。
全身が鈍痛に支配されて変な汗が額に滲み出す。
「一度診てもらった方がいいですよ。」
運転中の光輝から助言をされたが、医者に行ける人間ではないし、行く暇もない。
「光輝が手当てしてくれてんだろ」
「俺は医者じゃないですよ」
呆れたように言う部下に失礼なやつだなと思う。
エンジンの音が止まり目的地に着いたことを知らせる。未だに痛む体を無理矢理動かし車から降り、傷のことを周りに悟られないよう気丈に振る舞う。
カツカツと踵を鳴らしネオンが灯る前の店内に入って行く。
開店前の準備をする従業員は俺らの姿を見るなり慌てた様子で責任者を呼びに行った。
「大変お待たせいたしました。」
俺らの顔色を伺うように今日が納期のみじかめ料と言われる挨拶料や場所代、守料などというふざけた資金を茶封筒複数に分け紙袋の底にいれ持ってきた店の責任者から奪うように紙袋を受け取った。
「戻ってから金額は確認する足りなかったときは別のやつがしめに来るから覚悟しておけよ。次の納期は来月だ。」
紙袋を光輝に渡しそのまま六本木の店を後にする。
「次はどちらに?」
シートベルトを締めて毎回律儀に行なっているミラーの確認をしながら次に車を走らせる場所を聞かれ、腕時計に眼を落とす。
「まだ昼前か。先に新宿の店だな。城田組長には18時に呼ばれてる。」
わかりましたと一言了承するとともに車がエンジンの動きに合わせて揺れ始める。
「こんなに金集めてどうするんだか」
大量の札束が入っている紙袋を眺め嫌味のように嘲る。
「金はあるに越したことないですよ」
「へえ。意外だな。お前は金には興味ないのかと思ってた。」
「金に興味のない人間なんていませんよ。」
光輝は仕事のできる男だ。さらに体もでかく腕っ節も強いときた、この世界では出世にもってこいの人材だが、いつまでも俺の側近なんてやってるから金に欲なんてないと思っていたのだ。
「金はあるに越したことないですが、それよりも冬馬さんへの恩返しの方が俺は優先させたいんです。」
「ははは、随分な拾い物したな。」
自分よりも年下のガキに拾われて、自分よりも年下のガキに仕えることになって。俺はいつか寝首を掻かれるだろうと身構えていたのに忠誠を誓われるとは夢にも見ていなかった。
驚きを隠すように笑ってみた。
「そうでしょう。あなたが拾った命です、好きに使ってください。」
「そうさせてもらうよ。」
会話がひと段落するとゆっくりエンジンが止まり次なる目的地に到着した。
「ちゃんと払ってくれればいいけどな。」
「渋られたら面倒ですね。拳銃いりますか?」
「消すようには言われてない。が、持っておいた方がいいかもな。」
金がなければ殺される。俺らの世界じゃあ珍しい話ではない。拳銃の仕入れ方も警察にバレない人の殺し方も全部この世界で生きるのに重要なことで、その知識や技術がないものから飲み込まれて踏み台にされる。
地下にフロアのあるこの店も飲み込まれ、踏み台にされている弱者なのだ。
扉を引くとカラカラと扉につけられたベルが鳴り人の侵入を店内に知らせた。
オープンまでは十分に時間があるが、すでに床の掃除や机の拭き掃除をしていた。
地下に作ってあるためなかなかの広さがある店内をちょこちょこ走る少女が一人で掃除をしていた。
「おい、そこの」
店内にその少女以外の姿はなかった。責任者を呼んでもらおうと声をかけるとその少女は驚いたようにこちらをみた。
「あ!ごめんなさい!お店オープンの時間まだなんです!」
どうやら客と間違っているようだったその少女と正面から向き合って俺はギョッとした。
その少女には右目がなかった。
火傷の跡だろうか。顔の右側が赤黒く変色し瞼は開かなくなっていた。
しばらくの間その跡を凝視してしまい次の言葉が出てこなかった。
「....冬馬さん?」
そんな俺に小声で様子を伺ってくる光輝の声で我に返って次の言葉を探る。
「.....この店の責任者に用がある。呼んできてくれないか?」
そう言うとわかりましたと元気に駆け出した少女の後ろ姿から目が離せなかった。
こっち側の世界にいるんだ怪我などしててもおかしくはない。そう思ってはいたが彼女の怪我はどうしても異様なものに見えてしまったのだ。
少女と一緒に店の奥から姿を現した店の責任者はバツが悪そうな顔でゆっくりこちらに歩いてくる。
「冬馬さん、下がってください。」
いち早く危険に気づいた光輝が俺の前に足を出した。
光輝の動きに気づいた相手の男はパッと懐から刃渡り20cmほどのサバイバルナイフを俺らに向け構えた。
「今すぐにナイフを降ろして金払えば見逃してやる。」
「金なんてない!さっさと出てけ!!」
興奮気味に叫びナイフを前に突き出した男。
殺す気はないだろうと思った。殺す覚悟も技術もないと気づいた。
この世界ではそういう奴から消されるんだ。
俺の手元から溢れ出た銃の声と痛みに喚く男の叫びが店内に木霊する。
「選ばせてやる。俺らに殺されて海の中で永遠に暮らすか、お前の意思で今ここで首を吊るか。どっちがいい?」
どっちを選んでも弾痕が残っている死体は警察が動き出してしまう可能性が高いので海に捨てに行くのは変わらないが死に方くらいは選ばせてやることにした。
「次生まれ変わったときは踏み台にされる側じゃなくてする側になれたらいいな。」
お店の椅子の上に立ち天井から垂れる輪っかに頭を突っ込みカタカタと震えだす男を眺めながらそう言って男の立つ椅子に足をかける。
「待って、ください。」
大人の男が顔をぐしゃぐしゃにして泣き出す。
死を目の前にして恐怖心が膨れ上がっているのだろう。
「俺らも暇じゃねぇんだよ。」
椅子にかけた足に力を込めて蹴り倒そうとした時だった右目の見えない少女が俺の足にしがみついた。
「待ってって言ってるじゃないですか!」
必死に叫ぶ少女に唖然とする。先ほど銃を扱っていた男相手に怒鳴ることができるなんて怖いもの知らずなのか生き急いでいるのかどちらにしてもおかしなことだ。
「おい、ガキその人の足から離れろ。」
俺の足にしがみつく少女に近づき凄む光輝を制止する。
「待ってる暇はないんだ。こいつを殺さなきゃ次殺されるのは俺になる。お前もこの世界にいるんだ。わかるだろ。」
どんな経緯でこの世界に足を踏み入れたのかはわからないがいつ自分が消されるかという恐怖を抱きながら過ごしてきたことだろう。
「それはわかってます。でも、最後くらい少し時間を割いてあげてくれませんか。」
殺すな。とは言わなかった。この世界のルールをわかっているが故の言動だ。
自分と同い年か年下の少女が顔の半分を焼かれこんな血生臭い世界で必死に歩いてると思うと自分がひどく惨めな人間に思えてならなかった。
「わかった。自分のタイミングで飛べ。それまで待つ。」
死ぬことに変わりはないが涙でぐしゃぐしゃの男もありがとうございますと的外れな感謝をした。
「よかったんですか?情なんて沸いてないですよね?」
「ここで無理矢理椅子蹴ったら悪魔になるだろ。俺はまだ人間でいたいんだよ。」
なるほど。といった光輝の頭にも先日俺をボロ雑巾のようになるまで殴って蹴ってと暴行を働いた悪魔の顔が浮かんでるんだろう。
ギッと店の椅子に腰掛けて男が天井から宙吊りになる様を見る体制をとった。
「またどこかで会いましょうね。」
少女が男の手を握り笑顔で言った。まるで学生が遊びの約束を交わすかのように。
その言葉を聞くなりごめんごめん。と呪文のように繰り返して椅子から足を踏み外した。
苦しそうな呻き声が聞こえなくなった。ケータイで死体の片付けを頼む電話を入れて電話相手の到着をその場で待っていた。
「あんた、そいつの恋人かなんかか?」
最後に手を握り、再会の約束までした。ただの雇用主と従業員ではないように見えたのだ。
「え?いいえ、違いますよ!」
まさかの問いだったようだ。慌てて否定する少女はそのまま少し落ち着きを含めて続けた。
「私を買ってくれたんです。嫌な人でしたが、買ってくれなければ死んでました。」
こんな世界に入ることになるくらいなら死んだほうがマシだと思ってしまう俺には理解ができなかったが光輝もそういう理由で俺に忠誠を誓ってくれたのだ。
「水商売をするのにこんな気持ち悪い顔してる私を買ってくれたんです。最後にさよならを言う義務があると思いました。」
火傷の跡を指でなぞり悲しそうな顔で笑った少女。
「気持ち悪くない。」
咄嗟に出てきてしまった心の声に少し驚きながらも真剣に本気で届けた。
驚いた顔をした少女が何かを言いかけたとき俺の背後でカラカラと扉に付いたベルが鳴った。
電話で呼んだ死体処理役が来たのだ。
「次の仕事がある。あとは任せた。」
わかりましたと死体に黒いゴミ袋をまとわせながら返事をした処理役は少女を見つけて不思議そうな顔をした。
「これは消さなくていいんですか?」
死体を見られたから。という意味でだろう。少女もハッとして恐怖心を前面に出し始めた。
「警察に連絡をするようなら今ここで消さないとならないんだが」
「言いません。私も自殺の強要を止めずに後押ししてしまいましたから警察には言えません。」
怪しい動きがあればすぐに消すとだけ伝えて店を出ようとした俺の腕を引いて足を止めさせた。
「なんだよ」
「また、お話をしに来てくれませんか?オープンまでここで掃除をしてます。」
なんだいきなりと思ったが一時の恐怖や不安感から藁にもすがる思いで持ちかけて来た提案だろう。
「暇があったらな。」
そういうと安心したような笑顔で待ってますとだけ言い俺の腕を離した。
「冬馬さん大丈夫ですよね?」
「大丈夫だよ、仕事以外で行くことなんてない」
愛だの恋だのは弱点意外の何物でもない。そんな感情持つこと自体が自殺行為だ。光輝は俺があの子に惹かれてしまうのではと懸念しているのだろう。
今まで色んな女に会った、なぜ今更そんなに不安がるのか俺にはわからなかった。
新宿の店を出て車に乗り腕時計に目を落とすと16時を指していた。
「16時か。まだ早いよな。どうするか。」
光輝はエンジンもかけず答えが出るのを待つ。
余ってしまった時間をどう使うか思案していると車の扉をバタバタと叩く音がして心臓が上に跳ねた。
必死な様子で何かを訴えるのは先ほどの火傷の少女だった。
車の窓を開けて怪訝そうに少女を見据える俺といつでも動けるように車の外に出て行く光輝。
「なんだ?まだなんか用か?」
「お礼が言いたくて...」
「お礼?」
感謝されるようなことをした記憶はないのだがお礼がしたいと言う少女の言葉を待つ。
「...火傷の跡を気持ち悪くないと言ってくれたのがとても嬉しくて...!ありがとうございました。」
なんだそんなことか。と思ったが少女の顔を見ると心の底から嬉しそうな顔をしていた。そんなことにそこまで感謝するなんて今まで少女はどうやって生きてきたのか、彼女の目にこの世界はどんな風に見えてるのか、あの店長はどういう存在だったのか、知りたいと思ってしまった。他人に興味など向けるべきじゃないのに。
「....乗れ。」
車の扉の鍵を開けて少女の乗れるスペースを空けるためとなりに座り直した。
光輝はギョッとして俺の方を見たが大丈夫だ。と目で伝え少女を車に乗せた。
「お仕事大丈夫なんですか?」
「2時間ほど暇になったんだ。暇つぶしに付き合ってほしい。」
話をしたいと言ってただろ?と言うと少女はパッと明るくなった。表情の忙しい人だと思った。
「あ、じゃあまず自己紹介ですよね!東雲 百合花って言います!6月10日生まれのAB型で今年24歳になります!」
「え?24歳?」
自分と同い年か年下だと思っていた少女は自分より5つも年上だった。若々しいというか幼い容姿にもほどがある。
「はい!えっとあなたは?」
「篠崎。それ以上の情報は言えない。あんたもペラペラ喋るのはやめたほうがいい。」
「篠崎さんですね。そうですよね、でも私お話しするのが好きでどうしてもたくさん話したくなってしまうんですよね。」
ふふふと口元を隠しながら笑う彼女は俺らが生きている世界には不釣り合いな白さを含んでいた。
俺の忠告など無視して彼女は自分のことをよく喋った。食事が好きでチーズに目がないこと。一度でいいからイルミネーションが見たいという夢があること。花が好きで部屋に摘んできた花をたくさん飾っていること。それのせいでよく虫が出て困っているということ。
本当に彼女はよく喋った。
彼女の話を聞くことが鬱陶しいどころか心地よくなっている自分がいた。こんな風にゆっくり時間が流れたのを感じたのはいつが最後だっただろう。
「冬馬さん時間が。」
黙って俺らの会話を聞いていた光輝が時計を見て口を開いた。17時40分、1時間半以上あったのにあっという間だった。
「あ、ごめんなさい。つい楽しくて。」
「いや、丁度いい暇つぶしだった。」
急いで車から降りる彼女はありがとうございました。と頭を深く下げて扉を閉めた。
車の中がとても広く、虚しく、色味のないものになった気がした。残り1つの仕事を片付けるために光輝に車を出すように言う。
豪華な木彫りの模様が施された門の前に車を止めると中からがたいのいい男が2人出てくる。促されるまま奥の部屋に通され襖の前で立ち止まる。
奥で組長がお待ちです。と掠れた低い声で言われ、中に到着を知らせるとともに襖を開ける。
「時間ぴったり流石だな。」
「ご無沙汰しております。」
もう80を過ぎた爺さんとは思えない肉体とオーラを常備している城田組の組長、城田 勝己は手前に敷かれている座布団に座れと手で促す。
失礼します。と頭を下げ座布団に座る。
「冬馬、随分ボロボロじゃねぇか。何やらかしたんだ?」
傷のことに触れられると思っていなかった。バレないように必死に気丈に振る舞って見せたのだが。開口一番にバレるとは。
「あぁ...ボスのことをキレさせちゃったみたいで、すみません。」
そうかと豪快に笑う組長に合わせてはははと楽しくもないのに笑ってみせる。
「光輝も元気そうで何よりだな。」
はい。と小さくお辞儀をする光輝を見て城田組長は話を続けた。
「今日お前らを呼んだのは頼みてぇことがあるからだ。」
俺らの組は城田組の傘下で城田組の面倒ごとや尻拭いを押し付けられる立場にあり、断ることなんて許されないのに頼みたいなんて日本語は使いようだな。
「うちで使ってた女が一人組員と駆け落ちしようとしてるみてぇでよ。消しといてくれねぇか?」
使っていた女。美人局要員としてか組長や組員の性処理でもやらされてたんだろう。にしても駆け落ちとは大胆だなと思った。
「わかりました。終わり次第すぐご連絡します。」
「よろしくな。」
そういいどうやって集めたかはわからない2人の情報の入った封筒を俺に差し出した。
その封筒を受け取り、では。と部屋を後にしようと立ち上がった時だった。
「なるべく死体は滅茶苦茶にしておいてくれや。今後また逃げるような奴が現れるとお前らも大変だろ。」
「.....わかりました。」
つまりこれを機に裏切りや逃亡をなくすため他の組員への見せしめも兼ねてるわけだ。
あまり気乗りのしない仕事だが俺の気が乗る乗らないは関係ないやれと言われたら犯罪だろうとやる以外の選択肢はないのだ。
静かに襖を閉め城田組の屋敷をあとにした。
「殺しの仕事ですか。断れないの知ってるくせに。」
「今に始まったことじゃない。傷のこともすぐにバレた。末恐ろしいじじいだよ。」
あの悪魔のような男を傘下に入れるくらいの爺さんだ。魔王も驚愕の極悪非道な男なんだろう。駆け落ちをしようとしただけで殺すように頼むような男だ、しかも茶を啜りながらなるべく死体が汚くなるようにと。
先ほどの一連の会話を思い出すだけで身震いするくらいだった。
封筒の中からいくつかの書類を取り出し目を通す。2人が接触するタイミングで消せということなんだろう2人が会う約束をしている時間、場所、滞在時間の推測などが書かれていた。
「さっさと済ませたいな、今日の25時新横浜のホテルだ。」
「今日はやめておいた方が...」
3件も回ってるうえにこの怪我だ光輝が心配するのも当然だった。
「明日に持ち込みたくないんだよ休みなんだ。」
1日丸々休みなんてこと滅多にないためなんとしてでも休暇の時間を死守したかったのだ。
そういうと光輝も渋々了承した。
「車出してくれるだけでいいからお前は車で待っててくれ。」
「俺も行きますよ。」
「待ってろ。」
俺の身の回りの世話と車の運転と自分の仕事と俺よりも数倍多忙な光輝にこれ以上負担はかけられなかった。
命令という形なら光輝は従うしかないだろう。
納得しないという顔で黙り込んだ光輝。
「殺しは俺の得意分野だ。一人でやった方が効率がいい」
力比べとなるとあまり有利にはならないが殺しなら他に劣らない自信があった。光輝もそれには納得したようだった。
「一旦帰ろう武器を揃えて一休みしてからにする。」
「わかりました。」
光輝は少し車のスピードを上げた。