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学園生活の始まり

 翌日、学園の門をくぐれば学年ごとに別々の教室へと誘導される。指定された教室に入れば、もうすでに席についている人がいる。

 中でも一際目を引くのが、薄桃色の長い髪を上品に結わえた、スプリングシード国の名門貴族、レイフォード家のご令嬢……セレナ・レイフォード。品行方正、容姿端麗。誰にでも穏やかでありながら、貴族としての心得を誰よりも理解している……まさに貴族の中の貴族。

 

「ごきげんよう、セレナ様」

「ルーナさん、ごきげんよう」


 他の令嬢にもそれぞれ軽く挨拶をして、席に着く。令息には挨拶をしないのか?いやいやいや、親しい仲でもない限り、令嬢から令息に挨拶はしません。


「全員揃いましたね。それでは只今からクラス分けテストを始めます。この成績が、未来を左右するということをくれぐれもお忘れなきよう。制限時間は90分、問題は100問。配点は伏せさせていただきます。私が開始と言ったら始めてください……全員問題は手元にありますね?それでは、開始!」


 目に飛び込んできたのは国語、数学、社会だ。理科の問題がないのはそういう世界だからだろう。得意分野がつぶされたと恨めしく思いながらペンを走らせていく。

 国語は文章読解や文法、同義語などくらいなので、ペンが止まることはない。数学も、この世界の公式より前の世界の公式のほうが速いのでそれで解いていけばすんなりと終わった。証明問題はいささか不安が残るが。そして、対策を練っていた社会科。学園の歴史から始まり、現在の情勢まで。五国の歴史の中でもシーラがピックアップしてくれたところが特に重点的に出ている。


「問題が解き終わった生徒はペンを置き、名前を確認してから回答用紙を裏返しにしてください。回収次第、退席を許可いたします」


 その言葉の10分後、私はペンを置いた。回答欄はすべて埋めたし、これ以上は足掻いても無駄な気がする。回答欄を裏返しにすればすぐに回収される。そして教室を出たところ、声をかけられた。


「ルーナ嬢、随分と問題を解き終わるのが速かったな。俺が出る時には問題の確認を行っていたようだが」

「えぇ、復習は怠っておりませんでしたので。そういうレオン様こそ、お早いですね」


 レオン・シャルトリアだ。深緑の髪に黄緑色の瞳、スプリングシード国の王族特有の色。シャルトリア家は王族の血が何代か入っているらしく、その影響と本人は言っていた。ちなみに、レオンの素性を知っているのは学園内だとセレナのみだ。


「あの程度ならさほど時間は取られない。それより、ハースが呼んでいたぞ」

「ハース様が、ですか……?」

「昨年何のクラブもしていなかっただろう。色々と環境が変わったこともあったから昨年は黙認されていたが、おそらく今年は何かしら入るよう言われるはずだ」

「そうですね、結果を待っている間に伺っておきます」

「そうするといい」

「失礼します」

 

 そういえば、クラブ活動には強制参加だったことを思い出す。昨年は環境がいきなり変わったということもあり、クラブに参加しなくてもいいと言われていたが、今年からは参加しなければならない。ゲームでは自分のステータスを向上させるのに必要で、入るクラブによってステータスの上昇値が異なるのが特徴。


「とはいっても、何部に入ろうかしら……」


 運動クラブでは武道、勇気のステータスが上昇し、文化クラブでは魅力や技術、学力が上昇する。ゲームでは乗馬、アーチェリー、フェンシング、演劇、チェス、ガーデニングから選ぶことができたが、実際はもっと種類も豊富。そんなことを考えながらも、生徒会室まで辿り着いたので、ノックする。


「失礼します、ハース様はいらっしゃいますか?」

「あぁ、来たか」


 生徒会副会長のハース・フラエスト。テンプレのような眼鏡ツンデレ。学園生活の中でレオンと親しくなり、よく行動を共にしている描写があった。


「早速だが、今年からは規定通りにクラブに所属してもらう。期日は来週までが望ましい」

「わかりました。ご用件は以上ですか?」

「あぁ」

「それでは、失礼します」


 正直一番入りたくないルートがハースルート。ライバルキャラは高飛車で傲慢。当然のように権力を振りかざす。サマーケイル国の貴族、エメロード家の三女……アナスタシア・エメロード。一番会いたくない人間だ。アナスタシアは演劇クラブだから、入らないに越したことはない。

 他の攻略キャラやライバルキャラも各々クラブに所属していて、レオンとセレナはフェンシング、ハースはアーチェリー、ギルバルドは美術鑑賞、サーキアスとクロードは乗馬だったはずだ。それ以外の人物は正直覚えていない。


「手芸部にでも行ってみましょうか……」


 あるのかどうかもわからないが、手芸ならある程度はできるし、女性らしい。技術と魅力を磨ける気がする。


「手芸部に来るの?」


 後ろから、綺麗な声が聞こえた。


「貴女は……?」


 振り返れば、そこにいたのは女子生徒。学年ピンは二年生を指しているが昨年の記憶を漁っても見たことがない。ふわふわとした短い金髪に濃紺の瞳、儚げな美女だった。


「驚かせてごめんなさい。私、サラ・ロリスと申します。去年留学していたからあなたのひとつ上だけれど、同じ第二学年なのよ」

「ルーナ・ムーンクォーツです。よろしくお願いします」

「手芸クラブに入るなら歓迎するわ。今は勧誘の準備をしていて、部屋は作品で溢れているはずよ。でもそろそろお昼時だから……そうね、放課後に来るといいわ。場所は東棟の二階で、部員は私含めて4人なの」

「そうなんですね。それでは、放課後に伺います」

「待っているわ」


 あまりにも急展開過ぎてついていけないがこれだけはどうしても記憶の中でゲームを進めてきた彼女に言いたい。

 私好みのキャラクターって女かい!!


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