初見殺し対策①
さて、気を取り直してベスビアナイトの歌で行われた数々の初見殺し対策をしていこうと思う。
明日から始まる学園生活の中で、まず最初に行われた初見殺しがクラス分けテストだ。
「成績が良い分には問題ないのだけど、悪かった場合が問題なのよね……」
成績が良い分には全キャラクターを攻略対象にできるが、悪かった場合に攻略可能なのはレオンとギルバルドのみ。ハース、クロードを攻略するには成績が良くなければならないのだ。このテストの成績が良くても悪くてもクラスは固定。それもあって初見だとただのチュートリアルと勘違いされやすいため、初見殺しと言われている。
「それに、成績が悪いなんてムーンクォーツ家の人間として相応しくないわ……シーラ!」
「お呼びですか、お嬢様」
「去年の授業内容を復習しておきたいの。必要なもの一式を揃えてちょうだい」
「畏まりました」
専属のメイド、シーラを呼びつけて勉強道具を用意させる。
「ひとまず、一に勉学、二に作法よ。なにがなんでも、学年トップ目指さなきゃ!」
ゲームの頃のクイズでは文系、理系の四択問題だったが、ここではそんな問題が出るはずがないのだ。昨年の知識もあるにはあるが、記憶が戻ってきたこともあって特に勉強については曖昧にもほどがある。
「数学と国語に関しては問題ないわね……ノートを見る限り前とあまり変わらない。問題は歴史と世界情勢!」
記憶が戻る前の私も真面目だったことが幸いした。ノートを見れば大筋程度なら掴むことができる、あとはひたすら暗記するしかない。
「あぁ、もう。時間がいくらあっても足りないわ!」
「お嬢様」
ひとまず学園があり、自国でもあるスタードロップ国から手を付けようと参考書に手を伸ばせば声がかかった。
「何?シーラ」
「お嬢様はご存じないかもしれませんが、毎年ある程度の問題の傾向がございます。今から申し上げます箇所を重点的に、そして昨年話題になった点などもあげられたほうがスムーズに進みます」
「あら、協力してくださるの?」
「全ては、お嬢様とムーンクォーツ家のため、ですから」
そういえば、ゲームのクイズでも稀にヒントが表示されることがあった。恐らくゲームのように問題を解いている最中にヒントを出すことはできなくても、勉強の段階でならヒントを出すことが可能なのだろう。
「スタードロップ国の歴史からやるつもりなの。シーラ、お願いできるかしら?」
「畏まりました。先ずは……」
何はともあれ、今は全力でやれることをやるだけ。
「何が何でも明日のテスト、トップ5に入ってみせるわ」
無我夢中で、ペンを走らせた。