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情報の確認

 こんなにも朝が憂鬱だと感じた日はない。

 当主に迎え入れられ、貴族としての生活が始まった二年目。

 我が儘も弱音もはかず、ムーンクォーツ家の人間として相応しくあれるように努力をしてきた。けれどまさか、自分が乙女ゲームの主人公に成り代わっているとは微塵も思わなかったが。


「そんなこと言ってる場合ではないわね。最低でも攻略可能な人物くら確認しておかなきゃ」


 まずは王道。スプリングシードの第一王子でありながら、訳あって身分を隠して貴族として通っている、成績優秀、容姿端麗……まさに才色兼備のレオン・シャルトリアことレオナルド・シャルトリア・スプリングシード。性格もよく、ライバルキャラも最後には親友ルートの大団円エンドだ。

 続いて人気ナンバー2。眼鏡ツンデレは人気ですよね、生徒会副会長のハース・フラエスト。ライバルキャラは嫌がらせをしてくるので、それを撃退しながら攻略する必要があると聞いた。

 3人目は生徒会の議長、攻略キャラ唯一の上級生。ギルバルド・サマーケイル。サマーケイル国の第二王子である。騎士としての生き方を尊敬し、弱者に優しい性格。

 4人目はフォールウィング国にある学園の留学生であり、第一王子。クロード・フォールウィング。口数少なく無表情。このルートが通常の登場キャラの中では最も難易度が高い。

 5人目は攻略キャラ唯一の後輩にして隠し攻略キャラのサーキアス・オルバ。その高い頭脳で入学を果たした数少ない平民。引き取られる前の主人公とはよく遊ぶ中だったこともあり、主人公をお姉様と慕ってくれる。

 攻略キャラ5人中3人が王族という何とも言えないバランスだが、王子様に憧れる乙女を対象ターゲットに制作されたという裏話があるのだから仕方がない。


 この大陸は5つの国で成り立っている。スプリングシード、サマーケイル、フォールウィング、ウィンターティア、スタードロップ。

 五つの国の中で中心に位置するスタードロップ国の国立学園には、各国の王族、貴族、騎士、頭脳を見込まれた平民が通う。王族とはいえ分家筋だったり、貴族でもピンからキリまで。全寮制のためそれを好まない王族貴族は自国の学園に通うことも多い。秀でるところのあるものには最大の援助をするため、平民でも努力をすればタダで通える。それがスタードロップ国立学園だ。


「といっても、私一人しか攻略してないのよね……王道のレオンしか」


 何を隠そう、私は全クリする前に死んでしまったのだ。目当てのサブキャラクターを出す前に。

 目当てのサブキャラクターは二週目以降のプレイで、隠しルートのサーキアスを攻略するうえで必要なキャラクター。サラ・ロリスという名前ということは知っているが、詳しいことはキャラクター紹介にも出ていない。

 イラストなどで上げられることもあったらしいが、どうせならクリアしてから見ようとしていたのが仇になった。


「名前しか情報がないんじゃ難しいわよね……」


 仕方がないと割り切り、今後をどうするかを考える。

 順当にいけば、誰かしらのルートに入って婚約となる。が、誰とも結ばれないルートも存在するのだ。

 けれど、私を迎え入れてくれた叔父……ガストーネ・ムーンクォーツへの恩もある。たとえ攻略キャラクターでなくとも婿を取り、恩を返したい。


「私はもう、月菜ではなく、ルーナ・エルヴィスでもない。ルーナ・ムーンクォーツなんですもの。とりあえず、攻略キャラはおいておきましょう!ここは現実、物語の大筋を知っているとはいえ目の前にいる人が生きている以上、好きになるかどうかは私次第、彼ら次第。それを知っている道をたどれば"はい、攻略"なんていくはずないのよ。何より、本来自分より身分の上の貴族の婚約者を恋愛があったからといえ横から搔っ攫うなんて家一つ沈められても文句は言えない行動……明日から、慎重にいかなくては」


 両頬を軽く叩き、気合いを入れ直した。

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