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死神少女が生きてるだけ  作者: ゲパード
第一章 大鷲篇
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第二一話「昼の一幕」



 オリヴィエさんとの勝負が終わって、その、自分で言うのもなんだけど名勝負だったってんで、そのまま宴会にもつれ込むことになったみたい。

 お前ら仕事しろよ依頼こなせよ、まだ昼だぞ。

 まぁケイ君が許可したなら自分は口を挟まないけどさ。


 というわけで今自分は酒場のまんなか辺りにあるテーブルに座らさせていた。

 主賓は座ってろってことでもあるし、それ以前にちょっと大人しくしていないといけない理由が自分にはあった。


 それは完全に凍結した右腕の治療だ。

 オリヴィエさんは今しがた自分が気絶させてしまったので、同パーティーのリィゼさんがやってくれている。ちなみにオリヴィエさんは部屋で寝かせてあるらしい、命に別状はないとのこと。

 それでリィゼさんだけど、彼女は水の魔法使いらしく、凍った腕に働きかけて解凍してもらっている。

 前世の知識から鑑みて、水魔法と氷魔法はその実おんなじものなのかな、なんて思ったりした。

 

 そうして大人しくしてる自分の周りでは、ケイ君とアルコンさんの指示のもと、さっきまでギャラリーだった冒険者さんが料理を運んだりとセッティングをしている。

 うー働けなくてむず痒い……。


「しっかしアンタすごいわねー。他の人らから評判は聞いてたけれどまさかあのオリヴィエに勝っちゃうなんて」


 リィゼさんも他の冒険者さんみたいに自分のことを褒めちぎってくる。

 自分は首を傾げる。

 そういえば気にかかっていたのだ。

 オリヴィエさんを倒してから他の冒険者さん異常に褒め称えてくるし、しまいには宴会だ。これはもしかしてオリヴィエさんは自分の想像以上にすごい人だったりするのか?


「あの、もしかしてオリヴィエさんって結構すごい人だったりするんですか? あ、いえ戦った感想として確かにすごかったですけど」


 そう自分の推測を話すと、リィゼさんはなんだかジトーとした視線を向けてきた。

 な、なんですか……?


「アンタ冒険者宿のウエイトレスの癖して知らなかったの? というかそれで戦ったの。えーとね、アイツは母親がアギラに殺されてから、私と同じように冒険者になって奴の行方を追ってたみたいなんだわ」


 うんうん。

 リィゼさんはアギラによって攫われた村の人たちの行方を探すために。

 そしてオリヴィエさんは裏切られて亡くなっちゃったお母さんの仇を取るためにアギラを追っている。

 今は4人でパーティーを組んでるけどそうだよね、最初はリィゼさんもオリヴィエさんも一人で冒険者やってたんだよね。


「私は冒険者稼業はあくまで生活のためでアギラの行方はほそぼそと追ってたんだけど……オリヴィエは違ったみたいでね。アイツはギルドに貼りだされた邪教徒絡みの依頼を片っ端からこなしていったらしいの」


 あーなるほど。そのときに冒険者の間で有名になったってわけか。

 確かにオリヴィエさんの魔法は冒険者にしては魔物相手というよりは人間相手に洗練されているように見えた。


「邪教徒の中でもかなりの大物も仕留めてたみたいで、『水葬された』ヴォルドニックや

『魂隠し』のコンチュール。名だたる邪教徒とやりあってたみたい。そしてついた二つ名は『氷彫刻』のオリヴィエ、邪教徒どもとそこで呼びだされた悪魔のことごとくを氷の彫像にしてきたからついた二つ名らしいわ」


 へぇ~それでこんなに驚かれてるのか。

 生憎自分は世間の情報には疎い。一年前まで自由に動ける立場にいなかったのでよくわかんない。

 でも二つ名っていうのはやっぱり強い奴にしか持ち得ないものだろう。

 あ、そのオリヴィエさんを倒した自分も二つ名とかもらえちゃったり!?

 どんなのがいいかなー


「オリヴィエは最初はほんとピリピリして、話しかけても全然反応してくれなかったのよねー。依頼先でブッキングとかする内にアルコンがパーティーに誘って今に至るわけだけど。アイツはなんというか丸くなったわね」


 ふーん。

 今のオリヴィエさんは自分にはすごいグイグイ来るけど、昔はそうじゃなかったんだろうな。

 そういえばオリヴィエさんの頭に生えてた猫耳は結局なんだったんだろう?

 治療のとき帽子とれて思いっきり見えてたし聞いてみるか?


「あの、オリヴィエさんって。何か特殊な種族なんですか?」


 おずおずと自分は聞いてみた。

 するとリィゼさんは少し歯切れが悪そうにそのシトラス色の金髪を弄くって、どう答えるべきか思案しているみたいだった。


「あー、あれは……本人がいないとこで言ってもいいのかしら……?」

「見るのはさっきが初めてじゃなくて、一昨日に本人から見せてもらったので大丈夫ですよ。たぶん」

 

 強迫材料として見せつけられた訳だけど、あっちから見せてきたわけだし詮索しても別に問題ないはず、そのはず。

 そうしてあのときの事をかいつまみながら話して自分が後押しすると、リィゼさんは少しショックを受けようで顔を俯かせた。


「え……私のときは一年かかったのに……」


 それから拗ねたみたいにそっぽを向いてしまう。

 あーもしかしてオリヴィエさんから猫耳のこと教えてもらうのにリィゼさんは一年かかったってことですか……?

 それを自分はたった一日でやってしまったから。

 いやあれは、たぶんその、オリヴィエさんと信頼関係が築けたわけじゃなくて、ただ交渉のために見せたんだろうと思うんですけど……。


 なんてことを説明したらリィゼさんはホッと安心したような息を吐いて機嫌を戻してくれた。


「……ならいいけど。えっと私もざっくりとしか知らないんだけどね。あれは呪いらしいのよ」


 えっ? 呪い?

 自分は予想外のワードが飛び出してきたことに驚いた。

 それはまた……なんというか随分と可愛らしい呪いですこと。

 てっきりそういう獣人なのかと思ってたけど違うの?

 というか自分この世界の獣人についてあんま詳しくないんだけど、獣人ってもしかしてそうやってできるのかな?


「さっきオリヴィエは私達と出会う前は一人で邪教徒狩りをしてたって言ったでしょ? そのときに邪教徒に呪いをかけられてああなったんだって。獣化は本来先天的なものだけれど、オリヴィエが受けたのはたぶんそういう獣人の発端となった呪いなんじゃないかっていうのが本人の談よ」


 あ、なるほどね。

 オリヴィエさんは世にも珍しい後天的な獣人なわけか。

 つまりあの猫耳はオリヴィエさんがヘマをやらかした証。

 それと同時に獣人は邪教徒によって生まれた魔の兆しを持つ人間ってわけで、毛嫌いする人も決して少なくない数いるんだろうな。

 というか獣人の呪いが遺伝するなら、これから生まれるであろうオリヴィエさんの子どもも獣人ってことなのか?

 あー、一見地味だけどわりとあくどい呪いだなこれ。

 

「それは解けないんですか?」

「解けないことはないらしいんだけど、解呪するにしても呪者を倒すにしてもめんどくさくて。今はそれどころじゃないって」

「えぇ、そんな」


 オリヴィエさんにとっては自分の体のことよりも、アギラを誅することのが大事なのか。

 なんか少し危ういな。

 いや自分も人のこと言えた柄じゃないけど。

 死神の責務を一年間放置しきってるし、そのせいで大鎌は錆びついてボロボロだ。


「その呪いはなんか実害はあったりしないんですか?」

「んー、あんま困ってる様子はないみたいだけど……むしろ夜目が効くとか耳がよく聞こえるとかで喜んでる始末よ。あ、でも爪が鋭くて邪魔だとは言ってたわね」


 オリヴィエさんほんとマイペースですね……、三日しかまだ触れ合ってないけど大方の人となりが見える。


「ん、終わったわよ」

 

 そこいらでリィゼさんの治療が終わった。

 見やればカチコチに凍りづけられてた腕は血色のいい肌色を取り戻していた。

 感覚的にはなんだかまだぎごちない感じがするので、5・6回グーパーすると、血管に血液が一気に流し込まれて、右腕が熱を持ったように熱くなった。

 腕の中で血が流れる音さえ聞こえる気がする。


「ありがとうございます。助かりました。次はリィゼさんと戦ってみたいですねー」


 いやーオリヴィエさんもすごかったけどリィゼさんも中々のやり手っぽいな。

 冒険者には珍しいレイピアなんて得物に、習熟した水魔法この人とも戦ってみたいなー。

 

「え、いやよ。そんな私戦闘狂じゃないわ」


 あっさりフラれた。

 い、いや無理強いはしないけどさぁ……あ、やめてそんなジトッとねめつけるのやめてくださいよ。

 ど、どーせ自分はバトルジャンキーですよ。

 ふんだっ!

 






 それからは自分を主賓にした宴会になった。

 料理があらかじめテーブルには並べられていて、その中にはお店では出してないものもあった。

 ウチの宿は冒険者宿にしては中々整ったものを出すけれど、それよりも手間がかかっているように見える。ローストビーフとかピザとかやけに手間かかってる。

 聞けばあれはロッシさんが作ってくれたらしい。

 ありがとうございますロッシさん。


 自分は主賓だし思っきり楽しむことにした。

 というわけでロッシさんの作ってくれたミートピザを一切れとって、丸めて口に放りこんだ。肉のジューシーさとチーズのまろやかな味わいがたまらん。


「あーもうっ! なんで私がこんなことをっ!」


 ホールではリィゼさんがジョッキを持って駈けずり回っていた。

 自分がウエイトレスしてないから、冒険者さんの間で「なんか華が足らねぇよなぁ」ということで言いくるめられてウエイトレスの真似事をさせられてた。

 がんばって~。

 お酒は好みの問題で飲めないので柑橘系のジュースをゴクッゴクッと飲み干す。


 っとそこでバァン! と入り口の扉が乱暴に押し開けられて、一人の冒険者さんが息を荒げて入ってきた。


「ハァ……ハァ……おいエリューちゃん大変だ! ……うん? なんでお前らそんな楽しそうなことになってんだ?」


 入ってきたのは三日前にリエーレさんの護衛役として同行した血盟員の強面さん、その片割れだった。

 強面コンビはどっちがどっちか判断に迷うことがままあるな。

 えーとこっちはモヒカンだから……。


 確か名前はゲオルグ・フェルゼンさん。

 強面で筋肉隆々でこれでもかってぐらい荒れくれたビジュアルをしている。いやこれはコンビ共通なんだけど。んでこっちはモヒカン、もう片方はハ……スキンヘッドというので見分ける。

 この人は血盟員なので手合わせしたことあるけど、この見た目で魔法メイン、意外や意外かと思えば、その運用が火や土の砲撃魔法をとことんブッパするという、やっぱ見た目通りじゃねーか!という戦闘スタイルにゴリ押されて負けてしまった思い出がある。


 しかし何事だろう?

 経過日数的には3日目で結構早いけれどまぁ帰ってきてもおかしくない日数ではある。

 リエーレさんの護衛につけたはずの強面さんひとりだけみたいだし、まさかリエーレさんとソフィーちゃんの身になにかあったとか……!?


「なんですか!? 何かあったんですか!?」

「おぉ、エリューちゃん。ウエイトレス服じゃねぇから一瞬気づかなかった。それにこの状況もよく分からんが……、ともかく来てくれ! おいお前らも来い! 『大鷲』の操る魔物を遂に捕まえたんだ! 今はブルートがリエーレさんと一緒に街の外で待っててくれてるっ」


 強面さんが運んできたのはその実とてもいい知らせだった。




繋ぎ回ですねー

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