紫音さんと栄井家のSUMMER TRADITION
これは、自分で1から考えたオリジナル小説です。
過度な期待はしないでください。
新たな出会いの日々である、1学期を終え、のんびりした日常を過ごす夏休み。
まぁ、部活動してる人はのんびりできてないだろうけど、現に皐月は、夏休み入る前から部活のヘルプにちょくちょく借り出されていた。
そのせいか、こんがりとキレイに日焼けしている。
「?どうしたの?お兄ちゃん?」
僕は無意識のうちに皐月を目で追っていたらしくそれに気付いた皐月が首を傾げている。
「あっ、いや何でもない。相変わらずキレイに日焼けしてるなーって思っただけ」
「お兄ちゃんもそう思う?キレイだよね!ここもほらっ!」
皐月は、タンクトップにショートパンツと典型的なスポーツ少女の格好をしているため、日焼け跡が服の隙間から見えている。
見えているからわざわざ見せなくてもいいのに、結構、グイグイくる。
「見えてるから!わざわざずらさなくても見えてるから」
「お兄ちゃん、ここもここも!か」
胸元の服を持ち上げて見せてくる。
「キレイに水着の跡、残ってるでしょ!」
「そうだね。こんなにキレイに残ることあるんだ」
「でしょでしょ!」
この時期の皐月は破壊力が高く、いつものことだけど慣れない。
「わたしのも見てー!」
夜月が会話の一部始終を見ていたのか、日焼けの跡を見せてくる。
皐月と一緒に手入れをしているからなのかキレイに日焼けしている。
「夜月もなかなかいい日焼け跡がついてるね。でも、皐月より日の光を浴びてないからやっぱり薄いね。まぁ、皐月が濃いだけかもしれないけど」
「ねえ、りんはどうなの?」
「僕は、何にも手入れしてないからガサガサだよ」
「ホントだ・・・なんか白いのがついてるけど、それ痛くないの?」
「これが痛いのは日焼けした時だけだから今は平気かな?それに、卯月に比べたら大した事じゃないよ・・・」
「それは剥がさないの?」
「逆に剥がすと正常な皮膚も剥がれるから痛いし血だらけになるよ。こうなったら自然回復させないとダメだから気になっても触らないようにしてね、自分のも他の人のも」
「そうする。大切な人たちを自分が傷つけたくないもんね」
「よろしい」
久しぶりに頭を撫でると気持ちよさそうにする。
「そういえば、家の隣でなんかやってるね。さっきからトントン聞こえるし」
「ねー、家の中だと音が小さいからあまり気にはならないけど」
「・・・気にならない程度の音で一定のリズムだから眠くなる。お兄様の食べ物の切る音に少し似ているから、なおのこと心地いい・・・」
「ここの家、かなり優秀だよね。遮音性も高いし、中の温度を一定に保ててるし、家具も新しい物が多いし」
「・・・そして、料理も美味しい」
「それはどうも。何ができるんだろうね?」
「図書館!」
「夜月は毎日、行きそうだね」
「・・・純粋に新しい家じゃないかしら?そもそも、もとは廃屋だったでしょうし」
「こんなところにわざわざ建てる物好きもいるんだね」
引っ越してきたことには何か理由があるのだろうが、何も知らずに僕たちの家庭環境に口を出してくる連中たちにはもうこりごりだ。
今の生活を楽しんでるのに、その幸せを哀れまれるのは正直言って悲しくなってくる。
「・・・案外、お兄様狙いの誰かが来たりして・・・」
「むしろ、『栄の二月』狙いかも?」
「・・・うわ、なにそれきも・・・」
「君は、僕に同じようなことを言ったの忘れないようにね」
何故か落ち込んでる卯月。
「なんで、卯月が落ち込んでるのか僕には理解し難いのだけれど?」
「・・・だって、私達はお兄様がどこへ行ったとしてもついていくつもりなのにそんなこと思ってるなんて」
「?よく分からないけど、どこに行くにしても僕はみんなを連れていくよ。たとえ、誰かが嫌がったとしても。そりゃ、みんな家族だし、1番上のお兄ちゃんだからね」
こう言う会話をしているとよく複雑そうな顔をする。
(嫌がったら相手のことを尊重すべき?)
今はその答えを出す事は無理なのでその時になったらお互いに話し合って決めよう。
「ねえねえ、りんー。明日、シオンさんの所で写真撮影があるけど、この日焼け跡、大丈夫かな?」
「夜月のはちょうどいい小麦色の肌で夏らしいけど私のは小麦色超えて焦茶色なんだよね」
「むしろ、僕たちの方が問題じゃないかな?肌荒れで皮膚が大変な事になってるし」
「・・・そうね。わたし達は、見る人からしたら痛々しいものね・・・」
「まぁ、相談してみるしかないか」
遠い方で夜月と皐月が「小麦色の肌って何?」「美味しそうに焼けてる肌。食べちゃうぞー。あむ」「くすぐったいよー。焦げてるけど残しちゃダメだよね。はむ」「きゃー、食べられるー」みたいなやり取りしてたけど・・・なるほど、これがてぇてぇってやつか理解した。
「ちなみに教えて欲しいんだけど、卯月の腕ってどうなってるの?」
「・・・こんな感じよ。お兄様は?」
「うわぁ・・・いつもの事だけど、相変わらず酷いね・・・ボクも今年は酷いね。卯月ほどじゃないけど・・・」
お互いに腕を見せ合いながら不安に駆られている。
「1日でどうにかできる問題じゃないよねこれ?」
「・・・今回は着物?隠せれればいいけど」
「男だと袴?袴は半袖のイメージが強いから隠せる気がしない
。まぁ、いざとなればあの2人だけで事足りると思うけど」
「・・・いろんな着物きたいけど、仕方ないか・・・お兄様の袴姿も見たかった」
「着物はいろんな種類があって、柄や色で印象がガラッと変わるけど、袴はシンプルな物が多くてそこまで変わるかな?まぁでも、色では変わるか」
「・・・お兄様はシンプルでいい。派手なのは・・・ちょっと似合わない」
「でも、派手なお兄ちゃんも見てみたいと私は思うけどね」
「じゃあ、りんも着物?一緒に着ようよ!」
あー、最悪な形で夜月が地雷を踏んだ。
「・・・お兄様の着物姿。・・・何だかそそるわね・・・」
「お兄ちゃんは中性的な見た目だから・・・うん、普通に可愛いと思う・・・いいねぇ」
「なんか、2人とも怖い・・・」
そりゃそうだ。何故か分からないけど、この2人は僕に女装をさせたがる。
可愛いものを着せたいのなら夜月に頼めば喜んで着てくれると思うのだけれど、そういうのを僕に着せたがる。
「夜月。この時期になると夏祭りというのがあってね。住む人たちを守ってくれたり助けてくれたりしてくれる神様に『僕たちは元気です。だから、安心してください』って見せるためにやる期間限定の行事でね。その期間中によく着るのが着物なんだけど、着物は女性が着るもので男性は袴っていうのを着るの。で、コイツらは僕が着物を着ていることを妄想して、おかしくなるから気をつけてね」
「そ、そうなんだ・・・これからは気をつける・・・あの2人はあのままでいいの?」
「そのうち、戻ってくるから大丈夫」
その後、しばらくして自分の世界から戻ってきた2人が妄想を現実にしようとしてきたため、自然と素っ気ない態度になってしまい、2人が泣きついて来たので仕方なく、普段通りにやって行くことにした。
昨日から日焼けのことで色々悩んでいたけど、とりあえず行ってみることにした。
「こう言う新しく目立った建物って地域復興の礎になったりするけど、前と変わってないね」
「・・・そうね。大体のお店は閉まったまま。この建物だけ、別の世界に見えるわ」
「まぁ・・・設備の良さや衣装の種類なんて、実際にやらないと分からない物だしね・・・」
「また、みんなで写真撮り放題!?やったー」
今回は、全国各地で夏祭りがある時期なので、着物と袴のモデルをやることになっている。
現に今日は紫音さんのお店の地域で夏祭りが開催されている。
僕たちでは普段は遠くて行っていなかったがついでに紫音さんが「夏祭り一緒にいこう」と誘ってくれたのだ。
なんでも、僕達4人とプライベートでも仲良くしたいらしく、今日はそのはじめの一歩としてお誘いをくれたみたいだ。
『ただ私はカメラマンであり、カメラ好きであるからプライベートでもカメラを撮りたいからそこは勘弁してね』だそう。
『もちろん、プライベートで撮影したのは大切にするし、勝手に何かに使うつもりはないから安心して、悪魔でカメラマンではなくただの紫音としてあなた達を写真に収めたいだけ、もし、言ってくれれば現像したのも渡すからお願い』
写真で思い出を残すことができない僕達にとってはありがたい申し出だったので、僕達4人が満場一致で承諾をした。
「でも、どうしよっか・・・夜月と皐月は夏らしく日焼け肌だけど、僕たち卯月は結局、ガサガサ肌だしな」
「・・・まぁ、仕方ないじゃない、これはすぐ治るものじゃないから」
夜月と皐月だけでも楽しんでもらいたい所だ。
「こんにちは〜、紫音さんいますかー?」
「いますよー。中に入ってこっちへ来てください」
すぐに返答が返って来たので、声のしたところに向かう。
「こんにちは。紫音さん、お久しぶりですね」
「こんにちは。こんなところにご足労いただき、ありがとうございます」
「・・・どうしたんですか?紫音さん、具合悪いんですか?」
「あまり無理しないでくださいね」
「・・・具合悪いならまた日を改める」
「?」
紫音さんの話し方が間違ってはいないはずなのに、なんだか気持ち悪くて僕たちは3人は紫音さんの心や体調の心配をしてしまった。
夜月は、理解できてないようだ。
「あのねー、君たち。いくらなんでも失礼すぎない?確かにお願いしたのはこっちなんだけど、少しはお姉さんとして見て欲しいな」
「これは、失礼いたしました。年上の女性の方とはあまり接したことがなく、どう接するのが良いのか未だに掴めず申し訳ございません。お気を悪くしてしまったようで、申し訳ございません」
「うわ・・・何それ、気持ち悪いんだけど」
「紫音殿、これは先ほど貴女が行ったことであることをお忘れのないようお願い申し上げます」
「あーもう、分かった分かった。ごめんなさいね、私もいい歳だから結婚しろって母親が勝手にお見合いの場を設けてしまって、男の人はどんな感じの人がいいか試してみたの」
「なるほど、分かりました」
「で、どうだった?」
「どうって、僕は紫音さんとは素の状態で関わっているから純粋に気持ち悪かったですね。紫苑さんだってそうじゃないんですか?」
「いやあなた、ストレートに言い過ぎ・・・流石の私も少し傷つくんだけど」
「そもそも、女性の方はなんでよく見せようとするんですか?そういうのって、死ぬまで自分を作って生きて行くことになるんですよ。そんなの疲れるだけでしょうし、いざ、本当の自分を見せたら幻滅されるんですよ?だったら、最初から素の自分に好意を持ってくれてる人と一緒になった方が楽ではないんですか?」
「・・・そう言う男性が多ければ、少子化も少しは改善されるのかもね。でも、いいの?そんなこと言って?それに該当するのって、凛くん、あなただけになるの分かっていってる?」
「・・・・・な、ななな何を言ってるんですか!?確かに僕は、紫音さんのことをどっちかというと好意的に思ってますがだからこそ、紫音さんにはいい人にお嫁に行って欲しいと思っています」
「わ、わかったから落ち着いて、ほらお水飲んで」
「あ、ありがとうございます・・・」
渡されたお水を飲み干す。
「ふぅ・・・すみません、取り乱しました」
「大丈夫?」
「大丈夫です。ですから・・・」
「ストップ、ストーップ!・・・あのこの話やめにしましょう。私が後ろから刺されそうで怖いから・・・」
僕の後ろにいる皐月と卯月からものすごい黒い感情が感じ取れる。
「あー、ほらほら。2人共落ち着いてこれから楽しいことが始まるんだから。殺意を出さない。2人だって、紫音さんが悪い人にお嫁に行くの嫌でしょ・・・」
「それは・・・まぁ」「・・・わたしも同意見」
「ありがとうね。ちょっと、準備してくるから待ってて」
私は、オーナー室へ入るとその場にへたり込む。
鏡を見なくてもわかる。
私の顔は、ゆでだこのように真っ赤に染まっていて、心臓もバクバクだ。
「落ち着け私!あの子は、まだ高校生!それに不意打ちだった。初めて会った時は受け流すことができたから大丈夫!」
自分に言い聞かせながら心を落ち着かせる。
「いやぁ、あの子本当に心臓に悪いわぁ・・・ちょっと、からかうつもりがまさかのカウンターで危なかった。よく耐えたわたしの顔!」
まだ、心臓の鼓動は少し早いが大分落ち着いた。
「でも、可愛かったなー。あ、そういえば、気持ち悪いって言ったけど、あのセリフ改めて思い出すと執事っぽくてちょっといいかも。今度また試してみよう」
今日が終われば、次に会うのは今月の25日以降だし、その時に試してみよう。
気の早い私は、次の再会のいたずらを考えながら撮影スタジオへと戻っていく。
紫音さんが戻ってきたので、今直面している問題について話し合おうと思う。
「おかえりなさい、紫音さん。一つお聞きしたいのですが」
紫音さんの少し火照った顔も心配だったけど、今の問題に対しての対策方法を知りたい。
「紫音さん、僕と卯月なんですけど、日焼けでこんな状態なんですがどうしましょうか?」
「そうね・・・1番簡単なのは自分の肌色と合う擬似皮膚を貼るのが楽ではあるけど、生憎、それが無いしあったとしてもその部分がどうしても材質とか何やらが違いすぎて浮いちゃうからあまりおすすめしないわ」
「まぁ、一般人が買えるのは大体は汎用性の高いものが多いですからねー、違和感を無くすには医療機関の擬似皮膚とか?まぁ、あれは火傷痕とかを治すことに使われるって聞いたことありますので単なる日焼けには時間もお金も無駄ですよね」
「私も医療機関の者じゃないから詳しくは分からないけど、まぁ、そんなもんよねー。だったら、メイクして隠した方がいいと思うけど、それがここでできる唯一の方法かな?」
「えー、紫音さんにそんな手間を欠かせたく無いしなー」
「どうする?私的には男性のモデルとして凛くんに協力して欲しいけど、強制はしないよ」
「うーん・・・」
「・・・卯月ちゃん、ちょっと」
「?」
わたしは、紫音さんに手招きされたから近づいたら、耳打ちをされた。
「ねぇねぇ、卯月ちゃん。私としてはモデ・・・目の保養として凛くんの袴姿見たいんだけど、協力してくれない?」
紫音さん、建前と本音が逆です。
「・・・私だってお兄様のいろんな姿見たいけど、強制はしないんでしょ?」
「凛くん、悩んでるみたいだからそれだったら、参加して欲しいなって」
「・・・お兄様が悩んでるのはあなたに手間を欠かせたく無いからだろうから、大丈夫の一言で済む気がするけど」
「でも、卯月ちゃんが断れば凛くんも断るでしょ」
「・・・お兄様はやさしいから私を1人にはさせないから」
「だから、一緒にやりたいって言って協力してほしいの」
「・・・協力?そんな事しなくてもわたしはお兄様と写真撮りたいから一緒にやりたい」
「えっあっそう?じゃあ、最後の後押しお願いできるかしら?これあげるから」
見せられたのはスマホの写真で以前の写真撮影の時のものだった。
「・・・これ、前の・・・」
「そう!あなた達に渡した写真は厳選したやつだからほんの一部なの。これ以外にもたくさんあるから好きな物をあなただけの思い出にしてね」
そこには、私たちに揉みくちゃにされて少し服のはだけてるお兄様の写真が収められていた。
「・・・この写真のお兄様の表情と格好のせいでなんかすごくいいわね」
「その写真、ドキドキするよね。あ、卯月ちゃんにはこれとかどう?」
次に見せられたのは、お兄様に詰め寄った際にわたしを離そうとして、私の胸を触ったところだった。
「・・・そういえば、撮っていたわね。これ」
「さすがにこれは私が持ってると大変な事になるから、渡したら消すつもりだけど」
「・・・まぁ、確かに色んな意味で誤解されそう」
「いつも自分ので見慣れてるはずなのに、なんで他人のってドキドキするんだろうね?目に毒だから本人に返します」
「・・・こんな貧相なものにそんな感情なんて物好きね」
「何言ってるの?そのスベスベで柔らかそうなお肌、今すぐにでも全身マッサージをしてあげたいくらいよ」
「・・・遠慮しておくわ。それに、そのお肌が荒れに荒れてるからこれをどうにかできるのなら私たちも写真撮影したいのだけれど」
「うーん、ちょっと失礼」
紫音さんは、荒れてるわたしの腕を撫でてくる。
「痛くは無い?卯月ちゃんが1番、肌弱いって聞いてたから・・・」
「・・・痛みはとっくに無いわ」
「うん大丈夫、隠すだけなら。痛みがあると余計に痛くなったり、荒れがひどくなったりするけど、痛みがないなら大丈夫」
「・・・そう、よかった。じゃあ、お兄様にお願いしてみるわ」
お兄様の言う通り少し危なそうだけど、いい人だからここならまた来ようと思ったのだろう。
話を終えたのか、紫音さんはカメラの最終調整に入った。
卯月がこちらへと戻ってくる。
「紫音さんはなんて言ってたの?」
「・・・メイク自体は別に構わないけど、痛みがあれば余計に痛くなったり、肌荒れが悪化するから痛みがあれば無理かなだって」
「なるほど、僕は別に痛みは無いけど、卯月は?」
「・・・わたしも大丈夫。紫音さんと同じ事聞かれた」
「それなら大丈夫か・・・せっかく、ここまできたのにただ見てるだけは申し訳ないし、邪魔になるだろうから参加できるならしたいよね」
「・・・わたしはしたい!」
「紫音さんには手間をかけるけどまぁ仕方ないよね」
カメラの最終調整に入った紫音さんをただの興味本位なんだろう、夜月が作業をずっと見ている。
カメラについて聞いたりしているんだろうか?2人でカメラを覗きこんだり、談笑したり、時折夜月が被写体になり、写り方の調整もしているようだ。
「卯月は、カメラに興味はないの?」
「・・・ないわ。そもそも、機械はあまり得意じゃ無いわ」
「へぇー、そうなんだ。自撮りとかしてそうなのに」
「・・・お兄様、前も言ったけど、わたしはコスプレイヤーでも無いし、自撮りするほどキモは座ってないわ」
「うーん、卯月は暗色系の服ばかりに着てるから、明色系とか寒色系とか暖色系の服とかも見てみたいけどね」
「・・・お兄様が望むのなら私は何でもする・・・明色系も寒色系も暖色系も・・・肌色にもなってあげる」
「自撮りはしなくていいけど、色んな服は見てみたい。でも、肌色にはならなくていいよ・・・」
「・・・そうね。お兄様は、肌色以外も見てしまったわね」
「はぁー、僕以外にそんなこと言わないでね。いつか男に襲われるよ」
「・・・わたしは痴女じゃないわ。お兄様だからこう言うことが言える。それは、分かっていて欲しいわ」
「僕も男なんだけどなー・・・」
「・・・お兄様ならわたしはいつでもウェルカム!」
「2人してそうだけど、どうにかならないのそれ・・・」
皐月の方は最近落ち着いているけど、卯月の方がこう言う発言が多い気がする。
最終調整を終えた紫音さんが聞いてくる。
「どうするか決まった?」
「はい。紫音さんには手間をかけてしまいますが、2人共隠して参加する事にしました」
「そう、じゃあこっちの部屋で待ってて、メイク用品持ってくるから」
僕たち2人は、大きな鏡が何枚も壁に並んでいる部屋に案内された。
「うわ、よくアニメとかドラマで見る控え室だよ。2人は可能性があるかもだけど、僕には無縁の場所だと思ってたのに」
「・・・現実にもこんな場所あるのね」
2人して唖然としていると後ろから紫音さんがやってきた。
「どう?なかなか、立派な控え室でしょ?」
「ここって、もしかして有名人も来るんですか?」
「うーん、マイナーな人ならくるかもだけど、メジャーな人は来ないと思う。だって、ここに来る人って私の知り合いだけだし、ここはまぁ・・・そう言う人が来てくれないかな?という思いで作った部屋だから変な期待はしないでね」
「・・・わたしたち、マイナーな有名人?」
「2人は確かに中学校では有名人でしょ、ホントのマイナーな有名人だけど」
「・・・中学校で有名になっても嬉しくない・・・そのせいで、学校での私たちとお兄様の距離が遠くなるのはイヤだった」
「あのー・・・話してるとこ悪いけど、あなたたち4人は割と有名よ?私のせいではあるんだけど、以前の撮影の影響で結構、「あの子たちは誰ですか?」とか「事務所に入りませんか?」って言われてるのよ・・・個人的にあなたたちにモデルをお願いしてるから、迷惑にならないように名前も伏せてるし、私の知り合いでそう言うのには興味がないって通してるけど、あなた達が望むなら紹介するけど」
「まぁ、みんな芸能人並にキレイだからなー」
「・・・わたしたちの日常に首を突っ込んでくる輩はいらない」
「凛くん、他人事のようだけど貴方もその1人だからね。貴方の容姿ってなんでも似合うから新しい風を取り入れるって意味で欲しがるところは多いのよ」
「・・・僕たちのことを守ってくれてありがとうございます」
「それに、私以外にこの逸材たちを渡したくないしね」
「そうですね。ありがとうございます」
紫音さんは面と向かって感謝されたり、褒められたりするのが苦手なのか、こんな感じのことを言うと照れ隠しで建前みたいな事を後付けでいう。
紫音さんのことを少しまた知れた気がする。
メイクが始まると人が変わったように真剣な顔となり、思ったより早くメイクが終わった。
手際の良く、仕上がりもバッチリだ。
卯月の腕は、まるで本当の肌のように見える。しかし、
(なんか僕の方、本来の肌より白く見えないか?)
ほんの少し違いだがその色に僕は違和感を覚えた。
(なんて言うかほんの少し女性的な肌に見える)
まぁ、男性のメイクはあまりしたことがないと思うし、せっかくやってくれたんだから文句は言わないようにしよう。
「うん、我ながら上出来」
「・・・すごい、いつもの肌みたい」
「でしょでしょ!あ、ちなみに凛くんは少し卯月に寄せたからキレイに見えるでしょ!」
「わざとだったんですか!?なんか薄々気付いてたけど、せっかくやってくれたから何も言わないでおこうと思ったのに!」
「いいじゃない、最近は白めの肌の方がいいって聞くよ」
どこ情報だそれ!そんなの聞いたことないぞ。
「手間かけてくれたし、ありがとうございます」
さて、いよいよ写真撮影会の始まりだ。
その後は何も変わったことがなく、撮っては着替え撮っては着替えの繰り返しだ。
強いて言えば、卯月が暗色系以外にも着替えでたことだ。
流石に、明色系と暖色系は恥ずかしかったのか、寒色系の服を
着ていた。
普通にかわいかった。
僕はと言うと男性のモデルが僕だけなので、紫音さんの着せ替え人形にされていた。
まぁ、満足してくれたようだし、僕自身楽しかった。
「あ、そうそう。今夜この近くで夏祭りがあるの、それで、お願いがあるのだけれど、この中から自分の気に入ったのを選んで、夏祭りに着てってくれない?」
「あっ、そうなんですか?でも、帰りが遅くなるのは・・・」
「大丈夫、私が車でみんなを送ってあげるから」
「僕は、構いませんが、みんなは?」
「夏祭り!?行ってみたい!」
「私も大丈夫!高校と中学校で、お兄ちゃんと一緒にいる機会が減って、お兄ちゃん成分が枯渇中だからこう言うのは嬉しい」
「・・・私も構わないわ。どうせ、1人で出かける気はないし、こう言う時にしか楽しめないから」
「まぁ、日焼けがひどいから外に出たくないよね」
僕も肌荒れを起こすタイプだからものすごい分かるし、家にいれば冷房がついてて過ごしやすいしね。
「あなた達、まだ若いんだから遊びなさいよ」
「紫音さんこそ、遊び盛りの時期じゃないんですか?」
「・・・あのね。凛くん、この若さで自分のお店を持って、協力してくれた人に報酬を支払うことが出来る人がそんな人生歩んでると思う?」
「・・・確かに」
「自分の夢のために進んできたのに、驚くほどにあっさり叶ってしまった人間の末路。何か残っていると思う?」
数日しか紫音さんと言う人間を知らない僕たちが言うのもなんだけど、紫音さんの電話のやり取りって仕事関連しか無いのかいつも敬語で話していた。
「確かに、仲良い友達がいたとしても紫音さんことを遠い存在に感じてそうですね」
「・・・そうね。よく分かってるじゃない」
今にも泣きそうな顔をしている紫音さんだった。
(僕も中学校、そうだったから)
家では仲良しの3人でも、2人が有名すぎて自分の手が届かない所を歩いていて、自然と近かった距離がどんどん離れて行った。
(そういえば、その関係性に我慢できなくなった2人とこのままでいいと思ってた僕で一度、大喧嘩したっけなー)
そこで、初めて喧嘩したような気がする。
(そして、そこで2人に告白されたんだった、始めは家族として好きって意味だと受け取って、僕も好きって言って自分たちの気持ちが分かったんだっけ?でも、2人は違う意味だったって言って今のこの関係性になったんだ)
「ねえねえ、じゃあシオンさん」
「どうしたの?夜月ちゃん」
「わたしたちと友達になろうよ。わたしもはづきもさつきもりんもシオンさんのこと大好きだよ。だから、友達になろうよ」
「そうね。私もあなたたちの思い出をこのカメラで収めてみたいし、新しい楽しみができるだろうし」
(大きな距離が空いてしまえば追いかける人からは前の人は見えないとはよく聞くが、前を歩きすぎた人も同様に後ろの人が見えなくただ期待に応えるだけの人形になってしまう。だから、そう言うことを気にせず、誰にでも対等に思ってくれる人が必要になってくると僕は思っている)
「シオンさん。このカメラって時間を設定すれば撮ってくれるやつなんだっけ?」
「そうそう、ここをこうやってこうすればほら」
「夜月。もう撮ってるの?」
「・・・楽しそうね」
「ほらほら、シオンさんもこっちこっち!」
「私はいいから」
「問答無用!りんもこっち!」
「ちょっ、引っ張らないで!」
カシャッ・・・
時間設定をしたカメラからシャッター音が鳴り響く。
「え?今もしかして撮った?」
「うん、シオンさんからカメラの時間設定を教えてもらったからその練習」
「別に撮るならそんなに腕引っ張らなくても・・・」
「ま、まぁ・・・夜月ちゃんは今しかないと思ったんでしょ」
考え事をしていて呼ばれているのに気が付かなかったみたいだ。
5人で撮られた写真を覗き込むと後ろにしっかりと浴衣を着てポーズを決めてる皐月と卯月、満面の笑顔をしながら両腕で僕と紫音さんを引っ張っている夜月と状況が掴めていない僕と紫音さんが写し出されていた。
「ふふふ、お兄ちゃんの顔可愛い」
「・・・紫音さんも同じような顔しててなんか笑える」
「シオンさん、これはわたしたちとのお友達記念日だよ!これからもよろしくね!」
「いやぁ・・・ははは、こんなマヌケな顔をして写真撮ったの初めてだわ。でも、これはこれで自然な表情でいいかも知れないわね」
紫音さんは、嬉しそうにしていた。
ここからは特に特別な事はなく、卯月も前回の行動を反省したのか今回は自重してくれた。
「そろそろ、いい時間になってきたから撮影会はここら辺で切り上げましょうか?」
「そうですね。大分、撮りましたから問題ないかな?」
「この中からいいものを探すのもカメラマンの仕事、何も問題ないわ!」
紫音さんは分かりやすく胸を張っている。
「それでどうするの?近くで祭りが始まってるけど、見ていくなら私もついていくけど」
「どうしよっか?」
「・・・夜月と皐月は、すでに行く気まんまんだけど?」
「そうみたいだね。じゃあ、行くか」
「帰りは任せて!私が、しっかりとみんなを送り届けるからね!」
「お願いします」
「祭りといえば浴衣!どうせなら好きなの着て行ってプレゼントするから」
とんでもないことを紫音さんが言っている。
「いやでも、着付け方が・・・」
「プレゼントするから!」
「でも、お高いのでは・・・」
「プレゼントするから!」
うん、これは揺るがないな!
「はい、ありがとうございます・・・」
いい笑顔の紫音さんは支度し始める。
「あれ?シオンさん、またカメラ?」
「うん。これは、趣味としての写真撮影用のカメラだから、常に持ち歩いてるの」
「じゃあさ、思い出になりそうなの取れたら、わたし達にもちょうだい!」
「もちろん、そのつもりよ。なんなら、アルバム作ってあげようか?」
「・・・それは、なかなか面白そうじゃない」
「とは言っても、からのアルバム帳に写真を入れるだけよ」
「お店の特別なやつとかではないんですね」
「今のところないけど、もしかしてあったほうがいい?」
僕の何気ない一言に、紫音さんが本気で悩んでる。
お店といえば、その店だけの特別なものとか必ずあると思うんだけど。
「まぁ、そこにしかない物があればそのために行く人も多くはないですよね」
「少し考えて見ようかしら?」
夏祭り会場にはそれほど遠くはなく、少し歩けば着く距離だった。
紫音さんのお店が複雑な所にあるせいか、こんな近くに神社があったのは知らなかった。
「紫音さん、なんであそこにお店建てたんですか?こっちの大通りの方がよかったのでは?」
「隠れた良店なんて趣きあるじゃない、しかも写真屋さんよ。これ以上にないシチュエーションでしょう?」
「・・・確かに、そう言うの見つけるの憧れる」
目の前の神社は、敷地が広く、出店も出ており、お前らどこにいたんだと思うほどの住民達でいっぱいだった。
人間として始めて見る夜月は子供のようにはしゃいでいる。
(それにしてもこの感覚、中学校の頃を思い出すな・・・)
みんなキレイで可愛いのに、平々凡々の僕が一緒にいると僕を見る目はあまりいいものではない。
「お兄ちゃん、気にしないようにね。どうせ一度きりだから」
「・・・むしろこんな子達をはべらかしているんだって見せびらかそう」
中学校の頃の僕を見る目と似ていたからなのか、もう2度と離さないかのようにしっかりと両腕を掴んでくる。
「あの純粋に歩きにくいんだけど、過ぎた事は気にしてないよ。懐かしいなこの視線って思っただけ、見知らぬ人達にもこんな視線向けられるなんて、ホントに2人は自慢の妹達なんだね」
みんな可愛くてキレイだし、和服も似合ってるし、この人達に囲まれてる僕は幸せ者なのかも知れない。
・・・紫音さん、本気で彼氏作ろうとすれば、すぐ出来そうだけど僕たちにかまってていいのかな?
そのあとは、出店を見て周り、お参りをして、最後には花火をみんなで見た。
さすがプロのカメラマン、花火がちゃんとキレイに撮れていた。
夏祭りが終わる頃には夜も更けていて、紫音さんの車で家へ送ってもらい、その帰り際に5人の集合写真を1人1枚もらった。
最初の思い出をカメラに収めることができ、これからの事を考えると紫音さんの言った通り、アルバムが必要そうだ。
こんにちは作者の清喬(旧セユ)です。
夏といえば浴衣に夏祭りに打ち上げ花火ですよね!
と言う事で今回は夏の風物詩(summer tradition)と紫音さんのお店の写真撮影会です。
実際、25歳くらいでお店を持つっていろんな事を犠牲にしないと出来ないですよね。
さて、今回は紫音さんのお店での浴衣のモデルのお話でした。
その後はプライベートでの夏祭りでした。
久しぶりの栄井家のお話でもありましたね。
小説内での時間は夏休み中なので、栄井家のお話です。
次はまた、紫音さんが出る予定です。
ただ、場所は変わるかも知れません。
それでは、また次回会いましょう。バイバーイ。




