ハッピーエンド
ヨルは思い切って、彼と会う約束をした。
出来る限りヨルの家から近い場所を選んでもらって、夜……といっても危なくない時間帯にして貰った。
というのも、人目を避けたかったからだ。
それでもやっぱり、パジャマ姿で駅周辺を歩いているヨルは周囲から浮いていた。本人も勿論それに気づいていて、恥ずかしそうに俯いていたよ。近所のコンビニならともかく、駅となるとそれ相応に明るいし目立つからな。
やがて、スカイプの彼と思しき人がきた。ヨルの姿を見て、驚いた様子だった。それでも、彼はこう言ったんだ。
「今日は来てくれて本当にありがとう。会えただけでうれしい」
ヨルにとっては、この一言で十分だったはずだ。
彼女は大泣きして、それでも彼はすべてを受け止めてくれた。彼女の過去も、容姿も、パジャマ姿も、何もかも。
――副人格は、それを見て満足したよ。俺たちの役目も、ここまでかなあって。
なあ先生。ヨル以外の人格をすべて消すとか、統合するとかしてほしいんだ。なんか知らねーけど、そういうのって出来るんだろ? 時間がかかってもさ。
この身体をすべて、ヨルだけの物にしてほしい。ヨルには好きな服を着て、出掛けてほしいんだよ。
俺たちはもう満足なんだ。ヨルの、あんな笑顔を見れたんだから。