このパーティに魔法使いが加わった!
「このパーティーの魔法担当が今日来るからな」
面倒臭そうに顔を歪めて俺に話ているのは此処の勇者、メグロット……通称メグである。
って、そんな説明文いらないんだよッ!
そーれーよーりー、魔法担当!?
それって魔法少女的なアレですか!
遂にむさい男二人組から一転、紅一点が艶やかに咲き誇り、俺とのラブを深める純愛ラブストーリーが始まるのだな!
了解、了解。
どんな奴が敵であろうと君は僕(俺)が守る!
「可愛子ちゃんカモーン!!」
「うるせーよッ!」
◇◆◇◆◇◆
……………どうしてこうなった?
「メグ、いや、メグ様……こちらの方は?」
なんか、美形サンが目の前にいらっしゃっるんだけど。
美女じゃないよ。美形だよ。
「ん、魔法担当のランドだ」
「違う!俺が聞きたいのはこちらの方は…お、お、男なのではないのかと聞きたいんじゃコノヤロー!」
恐ろしいことが起きてしまった!
今の俺の言葉も恐ろしい程変だったとか、それどころではなくて、目の前にいる魔法担当者が男という事実に対して!
なんで魔法担当が男なんだよッ!そこはボインなお姉様だろ!普通はッ!
「騒ぐな、大砲ぶち抜くぞ」
かちゃり、と頭にセットされた大砲が頭にガツガツ当たって痛い……。
「ゴメンナサイ」
一応謝るけどな、俺の悲しみはどうしてくれるッ!
ちらっと、ランドを見れば微笑む美形がいた。
「はじめまして、貴方が異世界から来たっていう新しい子ね」
差し出された手は怪我や、肌荒れのない白くスベスベしていそうな、まさに理想の女の手。だが、骨張り大きいそれは男だとそれとなく主張していた。
「……メグ、匿って」
それだけいうとランドの視界から自分が消えるようにメグの後ろに隠れる。
男らしくない?
いや、だって!男(しかも美形)にオネェ言葉だぜ?
なんか、美しいのか悲しいのかわからなくなってきたじゃんか!
女の子は望んだが、こんな嘘っぱちな女の子望んでないしッ!
これなら男のがまだいいわ!
何か見てはいけない物を見てしまったかのようにガクブル震える俺の首根っこを掴み、メグは軽々と俺をランドの前に突き出された。
「……鬱陶しい。」
「み、見捨てないでくれッ!」
メグの手から逃れようとジタバタと身体を動かしてみたが……うん。メグの腕は逞しいですね。1ミリも動かないや。
「あら、可愛いわね」
フフフフッ、と上品に口元を手で抑え笑うランドにぞわぁと背筋に寒気が走る。
「ひぃ、マジで怖い!」
ナニコレ!もしかしてオネェアレルギーなのかもしんない!
ほら、鳥肌が止まらない!
「メグロット様!お願いします俺を助けて」
顔を青くしながら懇願する俺に対し、メグは口角をゆっくりと上げ、滅多に見せない笑みをする。
「助けて欲しいのか」
悪魔のような笑みだがオネェが目の前に迫っている以上、俺の選択肢は一つだ。
「助けて下さい!」
「嫌だ」
………ッ!?
即答だと?俺の懇願は?え、意味がなかったと。
「さぁ、新人ちゃんいらっしゃっい」
きゃー、美形サンが天使の笑みで俺を呼んでるー。鳥肌が主張し過ぎて肌がヤバいや☆
そのまま、メグからランドへと俺は渡り午後の紅茶、かっこよく言うとアフタヌーンティー?に強制参加させられている。
「大丈夫よ」
にこり、目を細めコロコロと鈴の転がしたように笑うランドに俺は思いっきし眉をひそめ、しかっめ面で返してやる。
「何が大丈夫なんだよッ、大丈夫ならなんで俺は椅子と結ばれてんだ」
こんな固い椅子と手錠で結ばれるなら、その美形で捕まえた女の子と結ばれたかった!
泣きたくなるような思いを隠し、ランドに睨みをきかせる。
「だって、そうしないと逃げてしまうでしょ?」
それはそうだが、物騒な真似はやめて欲しい。
「んで、何が大丈夫なんだよ」
「あー、それは私オネェ口調だけど女の子しか愛せないから同性には興味無いって意味でよ」
にこやかに返してくるランドに「当たり前だ!」と毒づく。
「あったら多分俺は死んでる」
泣くな俺、頑張れ俺。
きっと、神様は俺の頑張りをちゃんと見ていてくれてる筈だ。
「ふふっ、あー、遅くなったけど魔法担当のランドよ。主に回復役だから怪我したら何時でも癒してあげるわよ」
そういって差し出された手に先程までの嫌悪感はない。まだ、鳥肌は立ってるけど。
怖ず怖ずと椅子と繋がれていないほうの手を出すと、思ってた通り、スベスベの肌触りのよい手をしていた。
「…………よろしくお願いします」
なんか、俺はまた一つ成長したみたいです。
一刻も早く普通と呼ばれる生活に戻りたい。
滲む視界に見えたのは「あらあら、泣かないで」とあやす美形のランドの姿で早く美女と呼ばれる女の子に会いたいと思うのだった。