変な世界に呼ばれたんですけど!
ぐだくだと長い授業に、特に変わらない放課後。
いつも同じように日常を繰り返すことに飽きてしまい、壱呂は空を仰ぎ息を吐いた。
何一つ変わらない帰り道。きっと明日も同じような時間に同じようにこの道を通るのだろう。
隣で何やら熱弁をしてくる悪友に耳を傾けてみたが、なんの話か理解はできなかった。
――世界、救って。
「ッ!」
くわん、と頭を殴られる感覚とともに脳に響くように聞こえた言葉に、辺りを見回して声の主を探そうとしたが、周りには悪友と壱呂の姿しかなかった。
空耳だったかもしれないと壱呂はまた歩こうとしたが、歩くことなどできなかった。
突然足元の地面が消えたかと思うと、そのまま自分の体が重力によって下へと引っ張られていた。
「壱呂!?おいッ!」
最後に聞いた言葉は、先ほどまで訳のわからないことを熱弁していた、悪友こと幼なじみの今だかつてない程焦った声だった。
壱呂は助けを求めようと口を開いたが、ぱくぱくと口を動かしただけで、なにも応えることが出来ずに暗黒へと沈んでいった。
――ああ、俺ってなにも出来ないのな。
浮遊感を感じながらどんどんと光りが小さくなるのを見つめ、そして、壱呂は意識を手放した。
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