第二幕 少女
何もない大地をただ歩き続ける二人がいた。丈の長いマントを羽織り、腰に剣を刺し、片腕に盾を着けた片手剣士風情の少年。歳にして十代後半。名はレイル。彼の斜め後ろを、ついて行くのは小柄な人間。背は少年の胸辺りまで。フードをかぶり、体全体をマントで覆った不思議な出で立ち。その体格からやっと歳が分かるか分からないか。彼女はミリア。歳にして十代半ば。魔導師であることを隠して生きている。もちろん、少年は知っていが。
「レイル、次は何処へ」
「あぁ、もうすぐ着く筈だ。今度は街じゃなくて村だから少し分かりにくいかも……。けど、近くの街に採れた作物を売れるほど豊かな実りのある村らしいから」
ミリアはその時急に立ち止まると、ある方向を指差した。人前では滅多に出さない身体の一部だ。
「どうした?」
レイルも気づいて立ち止まる。そしてミリアの指差す方を見て、そこにそれはあった。
「あれって」
まさか、という表情でレイルは固まった。ミリアは腕をマントの中に戻して、少年に答えるよう首肯した。
「でもなんで、あんな様に。この辺りの土地は確かになにか秀でたものはないが、土の質は良いし、地下水もたっぷりある有数の豊作地域じゃ」
不信に思いながらなも村に近づこうとするレイルをミリアはマントの裾を掴んで止めた。
「黒い」
呟くミリア。その瞳は真っ直ぐに村の方を見ているようだ。レイルは首を横に傾けた。
「黒い、嫌な気で包まれている。嫌な予感がする」
ミリアは強くマントを握りしめた。そんな彼女の手をそっと取ってレイルは歩き出した。
「兎に角、行ってみよう」
村の入り口に門らしきものはなく、ただ草木で出来たアーチらしきものはあったが、それも寂れ朽ちていた。中に入って見るものの、活気というものは一切なくただどんよりとした空気が流れるばかりだった。村人は誰一人として外にはいない。とりあえず二人は村の奥に向かった。大抵はそこに村長の周りより少し豪華な家があるはずだ。村の真ん中にある道に沿って真っ直ぐに進んで行った。
村は意外と大きく、道の周りには田畑が広がっていたが、作物が青々と育つ様子は見えなかった。ただ枯葉や腐った果実がそこに広がるばかりだ。田んぼに水は引かれておらず、畑に耕されたふかふかの土はない。荒廃した完全なる荒地だ。それらの奥に見える家々も人が生活を送っているような雰囲気はなく、ただ端の方から腐って行くのを待っているだけのように伺えた。
「急ごう。人のいる気配がする」
レイルはミリア腕を引いて歩調を早めた。ミリアも必死について行こうと頑張ったがどうしても歩幅が合わずに苦労しているようだ。一回、近くに井戸があったせいでか道がぬかるんでいて、足を取られころびそうになり、それ移行はレイルが抱いて走ることになった。ミリアが抱かれながら小さく謝ると、レイルも悪かったと言い、それから安心しろ俺が絶対に護ってやると付け加えた。
間も無く大きな家の前に到着した。レイルはミリアを抱きあげたままその家の戸を二回手の甲で叩いた。少しして扉が開き、中から小さな女の子が顔を覗かせた。
「誰……」
レイルは予想外の人間が出てくるのでかなり驚いたが、顔に、笑みを浮かべてその女の子に話しかけた。自然と態勢を低くして目線を合わせる。ミリアもするりとレイルから降りた。
「はじめまして、俺たちは旅人です。ちょっとこの村に用があって来たんだけど、話を聞ける大人の人はいるかな?」
女の子は無言で少年を見つめて、走って室内に消えた。足音が遠ざかり、また少しして戻ってくる。
「おじいちゃんが入って来なさいって。話はわしがしようって。こっち来て」
女の子に促されるまま二人は室内に、そして“おじいちゃん”がいる部屋に案内された。
「いらっしゃいませ。このような何もない村にはるばるお越し下さりありがとうございます」
大きな木の扉をくぐった先にその人はいた。
「玄関までお迎えすることが出来ず申し訳ない。どうにも年で体を悪くしてしまい、手助けなしではまともに体を起こすことすら出来んのですよ」
その人は立派な口髭を持つなかなか風格のある“おじいちゃん”だった。
「いえ、お気になさらず」
レイルは恐縮したように答える。ミリアはその背中に隠れて立っていた。
「この子はリサと言ってな、わしの孫娘だ。今年で十歳になる」
リサと呼ばれた案内人の女の子は小さく頭を下げた。
「ははは、どうも最近は人に懐かなくてな。許してやってくれ。この子の親、わしの息子とその妻は幼い時流行病で死んでな。その後すぐ対抗できる薬が出来たんだが、間に合わなかった。リサは親の顔を知らんのだよ。ずっとわしが親代わりだ」
“おじいちゃん”はリサの頭をそっと撫でた。リサはむすっとした表情で突っ立ったままだ。ミリアの無表情とは違い、幼さのある可愛らしいものだ。
「俺たちは見ての通りただの旅人です。俺の名はレイル、こっちの……後ろにいるのがミリアです。ミリアも人と話すのが苦手で、すみません」
レイルが頭を下げると、ミリアも背中から少し顔を覗かせてゆっくりと腰を曲げる。フードの影になり空いた部分はそこだけ世界を生成し忘れたかのように暗闇が広がっていた。
「おっと、申し遅れました。わしはここの村長、情けない状態ですが、何せ今後を継がせるものはいなくてね」
「そのことなんですが、よければお話お聞かせ願いませんか?」
レイルは思い切って本題を投げかけた。
村長は悲しげな顔を必死に取り繕うと笑顔を作りながらも、時折途方に暮れたような顔をちらつかせて、何故村がこうなってしまったのかを教えてくれた。
「それは突然の出来事でした」
この村は近くにある街と商売をしながら生計を立てていました。その街は様々な街や村、遠くの方とも商売をしておりまして、中々珍しいものが手にはいるのです。それのおかげで我々の農業ももっとはかどるようになりました。
ある日のことでした。いつものように街に作物を売りに行った青年達が血相を変えて村に帰って来ました。何があったのか尋ねると、青年達は震えながら今までの二倍作物を渡さないとものは売らんと街の人が言ってきたそうな。その人達はいつもの商人と違ってなにやら怪しげだったとか。街も何だか重苦しい空気に押しつぶされていたと。翌日、その怪しげな人達数人がこの街にやってきました。わしと話がしたいと。もちろん、作物を二倍にしろとのことでした。わしは現状をありのまま話しました。今までの量が精一杯だと。この村にある田畑では二倍もの量は渡せない、それでは我々の食べるものがなくなると。そうしたらその人達は、何とも恐ろしいことをおっしゃいます。なら今まで以上に働け、田畑も広くすれば良い、と。それは不可能でした。村のものとも話し合いましたが、まず、なぜ急にそんな量を渡せと言ってきたのかが分からなかった。わしは思い切って尋ねてみたのだ。するとな、下民どもが生意気なこと言ってるんじゃない、これまではしたでに出てやったがもう許さん、時間切れだと言って、荒々しく村を出て行きました。まぁ、商売をしなくても自分達だけてやっていけないことはなかったので大丈夫だろうと、むしろ辛い目に合わずに済んだ、今まで通りやっていこうと一層団結を深めたように思えました。しかし、ここからが本当の悪夢の始まりでした。
その者達が来た日から数日後、村に明らかな異変が起こったのです。田畑の作物がどれもこれも枯れ始めた。
最初は何かの病気かと思いましたが、原因を探しても何も分からず、それに草木までとうとう元気がなくなってきまして……これはどうやら、よくないことが起こっているなと。村に何か災いが降りかかっているんだと。今では怖がって誰も外に出ず何とか今までの蓄えで生きている日々です。ここまで来るのにみてきた通りです。酷い、有様だ。
「わしは、悔しくて悲しい。村長であるのに何も出来なかった。皆のために何もしてあげられなかった。あの者達が来たのはきっと偶然ではない。あの者達が村に何か持って来たに違いないのだ!」
「そう、大体あってる。その人達がこの村を黒い力で覆ったのは間違いないだろう」
ミリアが口を開いた。それだけで十分驚きなのに、ミリア不思議なことを言う。
「これは呪いのように実証のないものじゃない。嫌な気はしていたが、やはり何らかの魔力が働いている」
村長に言っているのか、レイルに言っているのか、ミリアは誰とも視線を合わせずに淡々と語った。
「この村は、もうすぐ終わる」
パンッと肌と肌が触れ合い弾ける音がした。そしてレイルの後ろで何かが倒れる。リサが村長のそばから消え、そして確かにレイルは激しく息をする音を捉えた。自らの腰の方に。
「気持ち悪い。消えろ、消えろ! お前みたいなのが、この村を不幸にしたんだ! ここから出てけっ」
耳をつんざく叫び声。一瞬、誰が言ったのか分からなかった。レイルが慌てて後ろを振り向くとミリアが床に手をついて倒れていた。フードは何かの拍子に外れたらしく、少女である顔が露わになっている。
「気持ち悪い、不気味、おかしい、変、狂ってる! お前のせいだ」
声の主はリサだった。荒く息をするのも同じく。リサは倒れるミリアを
憎悪に満ちた瞳で見下ろし、今にも襲いかかりそうな勢いだ。
「リサ、落ち着きなさい」
村長に言われ少しだけ息を整えるもののミリアの前から動こうとはしなかった。
「一応言っておくけど、私じゃない」
またミリアが視線を床に向けてそう言った。リサの瞳にさっと暗い色が戻る。
「お前のせいだ! この村が、私の家族が!!」
リサがミリアに飛びかかろうとした瞬間だった。今まで状況を判断し切れていなかったレイルが動いた。素早くミリアの前に体を出し、リサのきつく握られた拳を掴んで止める。ミリアは特に驚いた様子もなく、相変わらずの無表情で床に長い髪の毛を垂らしていた。そのすぐ近くに一滴二滴血が落ちる。
「止めないで、お兄さん。それともそいつに味方するの」
レイルは何も言わない。リサは訝しがってずっとミリアを捉えていた瞳をレイルに向け、竦み上がった。レイルに止められた拳が自然と力をなくしていく。
「いや……」
見る見る間にさっきまで怒りに燃えていた瞳が光を失い、恐怖の色で染まっていく。手が小刻みに震え雫が頬を伝った。
「やめて、レイル。私は平気」
再び黙り込んでいたミリアがやっと話した。感情のない平坦な声で。レイルが、ミリアに気を取られた瞬間リサは村長の元に走って逃げた。
「嫌われるのも、このくらいの傷も、もう慣れた。このくらいで済んだことを良しと思わなければ」
ミリアは立ち上がり、赤く腫れた頬から滴る血を気にもとめずリサを見た。しっかりと目を合わせようとするが、リサは逃げた。仕方ないと村長に視線を移す。
「これは私の力ではない。私の力はこんなに邪悪ではない。たぶん、この村に来たっていう人達の中に魔導師がいた。それに、そこそこ力の強い。この感じからして魔力は村の中側から発せられた。なら媒体となったものがあるはず。そしてそれは、村の中心部に潜む」
リサはまだ震えている。そして村長は、ただただ驚いたという顔でミリアとレイルを交互に見た。口が自然と開いている。まさに呆然とでもいうべきか。
「あの、それは本当でしょうか」
恐る恐る村長は尋ねた。
「本当だ。単なる灌漑でここまで酷い不作になる例は稀だ。それにあなた方も少なからず感じているだろう、嫌な気を」
ミリアがあまりにも当たり前のように真実を告げるので、絶望と悲壮から村長は肩を落としうなだれた。
「わしが、あの時条件を飲まなかったから、村のみんなを巻き込んでしまったのだ」
「おじいちゃん……」
リサが顔を上げて情けない顔自分を見つめてくる“おじいちゃん”を抱き締めた。
そんなことはつゆ知らず、ミリアはレイルをしゃがませるとその耳元に囁いた。
「私なら、この村を救える」
レイルは目を丸くした。
「本当か!」
「相手が魔力なら、魔力で相殺できる。実際そんなに強いわけでも無い。根源もだいたい掴んでいる」
期待に胸を膨らませんとばかりに瞳を輝かせ、ミリアを見つめた。
「私はどうしたらいい」
ミリアは尋ねた。感情の読めない無表情は相変わらずだが、声色はどこか寂しそう。自分には可能なことがあるけれど、どうしたらいいか分からなくて不安でいっぱいと言った問い。レイルは笑った。
「ミリアに出来ることをやればいい」
ミリアは少しの時間逡巡した様子を見せ、やがて口を開いた。目線をレイルから村長に変える。
「私なら嫌な気を取り除き、元の平和な村に戻す事が出来る」
リサが真っ先に振り向いた。目を充血させ頬を紅潮させている。村長らゆっくりと顔を動かし、絶望にくれる瞳でミリアを見た。
「本当ですか、救って下さるのですか」
ミリアは頷いた。
「おじいちゃん……」
リサはまだ恐怖と怒りが胸に残っているのか複雑な表情である。小さな女の子の頭の中は色々な可能性と不安が交差し結びつきせわ忙しなく働いていることだろう。
「信じて良いのですね」
「それは私の決めることではない。私の力を借りるも捨てるもあなた次第だ」
村長はぐるぐると渦巻く嫌な想像を振り払い振り払い一筋の光を掴むかの如く手を伸ばし長らくお願いしますと呟いた。
「君は、いいの」
ミリアは最後リサにも尋ねた。
「おじいちゃんが、良いっていうなら」
リサは不満そうに言い放った。ミリアの頬を伝う血はまだ流れ続けていた。
村長を木製車椅子に乗せると、ミリアは真っ直ぐに歩き出した。もちろん体を起こす際はレイルの手助けが必須だった。車椅子を押すのはリサにである。
ミリアは村の真ん中にある道をただ歩き続けた。車椅子があるので歩幅はいつもより小さめでゆっくり。やがてたどり着いたのは古い神社でも雰囲気のあるお寺でもなく、ただの井戸の前だった。
「この井戸は多分、村の真ん中にあるだろう」
「あぁ、確かにその通りです」
「なら決まりだ。ここに魔力の根源となる媒体があるはずだ。やってきた人達は、ここで何かしなかったか?」
ミリアの問に村長は首を捻ったが、リサは違った。車椅子の影に隠れながら声を出す。
「やってたよ。覗き込んで綺麗だって言って笑って、その後石を落としてた。真っ黒で鈍色の石」
ミリアはまた決まりだと言った。そして井戸の中を覗き込む。
「この中に媒体はある」
「まさか、中に入って探すおつもりですか?」
ミリアは当然だと頷いた。
「これほど深い井戸だと、どこに媒体があるかの私にも分からない。中に入りさえすれば嫌な気を辿って破壊することが出来る」
そして飛び込もうとしたミリアをレイルはすんでのところで止めた。
「待て、慌てるな」
ミリアはなぜ止めると首を傾げる。
「俺の鞄にロープがある。それで降りよう」
レイルは素早くロープを取り出すと一端を近くの木に結びつける。数回引っ張って心配そうだが頷きもう一端を井戸に落とした。少しして入水音がする。
「すみません村長さん。井戸の周りでロープを結べるのは木しかないのですが、この辺りは他より腐敗が激しくいつ倒れてしまうか分かりません。安全なところで見張っていてくれませんか。それとこの鞄、濡れると大変なんで置いて行きます。預かっていてください」
「はい、分かりました。リサ、下げてくれ」
レイルは背負っている大きな鞄を村長に渡し、リサが車椅子を引いて離れたのを確認した後、井戸を覗き込むミリアを抱き上げて中に飛び込んだ。
「しっかり掴まってろよ」
ミリアは頷いてレイルの服を握り締めた。レイルは慎重に、しかし素早く井戸を降りていく。外の光がだいぶ小さくなった時レイルの足が水に触れた。
「着いたぞ、水面だ」
レイルに言われ、ミリアはレイルに抱かれたまま手を伸ばして水に触る。
「何か分かるか」
「嫌な気、見つけた」
そう呟いたかと思うとミリアはいきなり体制を変え始めた。
「行ってくる」
「行ってくるってどこへ、まさか水の中! 待てって」
レイルの静止耳にも止めずミリアは水に潜った。淀んだように暗い水の中はレイルにもどうなっているのか分からなかった。自分も行こうかと思考を巡らすが、結局待っている方がミリアの邪魔にもならないし、浮いてきたらすぐに抱き上げられるとその場に留まった。
「くそっ」
あと数秒気づくのが早ければ、止められたのに、あと数秒手が早く動いたら抑えられたのに、レイルは水面付近でロープを握りしめただ待つことしか出来ない自分を呪った。
数分、いやそんなに長くないのかもしれない。ただレイルにとっては一時間とも感じられる時間が過ぎ、ミリアは何もなかったかのように浮いてきた。その体はびっしょりと濡れて、火の日の光が僅かしか届かないこの場では寒いに決まっていた。
「大丈夫か?!」
「平気。ほら」
そう言って差し出された手の平に乗っていたのは真っ黒で何も移さない、まるで虚無を凝縮して固めたようなそんな石だった。
「それは……ってそれどころじゃない。早く俺に掴まれ」
レイルに肩を引き寄せられミリアはそのまま再び抱き上げられる。
「保つかな……」
引っ張ったロープの感触に何か違和感を感じたのか首を捻る。
「旅人さん! 危ない、木がっ」
案の定だった。レイルが井戸を登り始めたちょうどその時、木が限界を超え倒れた。幸いまだ登って少しだったので落ちた衝撃はさほど強くはなかったが、閉じ込められたも同然だった。
「村長さん達は大丈夫ですか!」
レイルは声を張った。
「ああ、こちらは大丈夫です。すぐに、村のものを呼んで新しいロープも用意させますので、少々お待ちを」
そして走り去る音。
「ごめんな、ミリア」
木に負担をかけないよう待っている間は水に浮いているべきだったかと後悔する。変わってミリアは何も問題はないと言う顔でレイルを見つめていた。
「さっきの石は何だったんだ?」
「これが魔力の媒体。これが村を闇に染めた原因と言ってもいい」
レイルが話を振って話し出すのはいつものことだ。そう言えば、ミリアの片頬が晴れている。色々あって、リサに叩かれたあと治療してやるのを忘れていた。レイルは心の中でごめんなと謝りながらその赤い頬に触れた。ミリアが一瞬痛みを感じた表情になる。普段感情を表に出さないミリアでは珍しいことだが、そんなことはどうでもいい。
「痛むのか、すまん」
「大丈夫、気にするな。これくらいの痛みにも慣れている」
慣れている。叩かれた時もそう言っていた。ミリアには一体どんな過去があったんだと不意にレイルは気になった。
「知りたいか」
「え……」
「知りたそうな顔をしていた」
反射で視線を水面に移行する。
「知りたいと思うことは悪いことではない。私だってレイルのことが知りたい」
レイル、名を呼んだ。滅多にないことだ。いつも服を引っ張るかして自らの意思を示す。
「俺は別に、大した過去なんて」
「言いたくないのだろう。私も無理して聞きたいとは思わない。しかし、私はレイルが知りたいというなら教える」
今日はいつもより饒舌だ。それは、怖いくらい。けど饒舌な時に、ミリアのことを知りたいとも思ってしまった。レイルは思はず口走る。
「あの、教えてくれないか」
言いかけて旅出す時にした自分の覚悟を思い出し慌てて止める。どこと無く不思議そうなミリアに違和感のないよう誤魔化しの言葉を続けた。
「あの、さっき見せてくれた石のことを」
「これのことか。さっきも言ったようにただの魔力の媒体だ。そんなたいそうなものではない」
「でも、これがこの村に悪い気ってのを持ち込んだんだろ? ミリアは持っていて平気なのか」
ミリアはレイルの手を取ってそこに石を乗せた。ふわりと暖かい感触がレイルの手に伝わる。
「これは……」
「嫌な気なんて感じない。なぜなら私が石を包み込むよう新たな魔法をかけたからだ。多分、もうこの村の嫌な気もなくなっているだろう」
そう言えば確かにミリアが潜っている間水中で何か光ったかもしれない。レイルは考え事をしていたせいか気づかなかったようだ。
「破壊はしないのか」
「してもいい。ただ、気になることがあって」
「気になること?」
ミリアは少し考えて、決意したように頷くと驚きの真実をあっさりと口にした。
「この魔力を知っている」
魔力を知るとはどう言うことだろう。レイルは呆気に取られた。
「つまり、この魔力に一度、いやこの魔力の持ち主に一度あったことがある、と言ったら分かるだろうか」
驚きを隠せないままに首肯するレイル。
「私が使う魔力とこの石に込められていた魔力では根本的に違うものがあるんだ。複雑な問題なんだが、俗に言う白魔法黒魔法。ただ御伽噺で言われるような人を救う力と人を傷つける力といった明確な差はない。私の力だって人を傷つけるしこの力だって人を救う。ようは使いようだ。ただ、根本が違うのは事実。またこの異なる二つの力がぶつかり合わないよう年に何度か会談をするんだ。その場に私も数回連れていかれ、そこで見たことがあるんだ。それだけ」
まだそれだけではないとレイルは直感した。しかし、聞きたい気持ちがないわけではないが今のミリアに聞くのはあまりにも酷な気がして遠慮した。忘れそうになるがいま二人がいるのは井戸の中でロープが切れたため水に浸かっている状態なのだ。レイルと違い頭から水で濡れているミリアは寒いに決まっているだろう。早く助けはこないのか、そうレイルが思ったと同時に頭から声が降ってきた。
「助けにきたぞ、旅人さん! 今ロープを落す、掴んだら声をかけてくれ。あとは俺らに任せろ」
聞いたことのない青年の声だ。近くの家から呼んできたのだろう。活気のある、若々しい声。他にも何人かのざわめきが感じ取れた。レイルは自然と口元を緩める。
「ミリア、肩に乗って」
正面から抱き上げた状態のミリアをロープを掴む方とは逆側の肩に乗せる。足を押さえて最後に新たなロープを握った。きれたロープは持って帰るため既に縛って腰のベルトにくくりつけてある。
「準備出来ました。上げてください!」
レイルの声に数人の男性が反応し、ロープを引っ張り上げた。程なく二人は救出された。
「ありがとうございます旅人さん。何とお礼をしたら良いのか」
一番体格の良い青年が二人の前に現れ例を言った。後ろにいる老若男女様々な人々も口々に感謝の意を述べている。
「俺は何もしていません。この子が救ったんです」
肩の上に座るミリアを指してレイルは笑った。いつの間にフードをかぶっていたのか、ミリアは隠れるように肩から降りるとレイルにひっついた。
「こんな可愛いらしいお嬢ちゃんが、あ、いや失礼。恩人の旅人さんなのに」
「……良かった」
ミリアは顔を半分をレイルのローブに埋めながら呟いた。小さな呟きだがしっかりと思いは伝わったらしい。
「ありがとうな」
人々は満面の笑みだ。
「そうだ、旅人さん。今夜は我が家に泊まって下さい。お疲れだろうと家で暖かい湯や、大したものは出せませんが料理を用意しています。広場でお礼の意を込めみんなで食事をしようと。旅人さんが湯を上がった頃には完成すると思います。是非!」
精一杯の歓迎を今更ながらに受け断る理由など一つもなかった。
「では、お言葉に甘えて」
二人は案内されるまま近くの家へ通され、一旦別々に別れそれぞれ湯に浸かり疲れと汚れを洗い流した。
「ひっ、く、くるな!」
ミリアがいるという部屋の前に案内されたレイルは中からする声に目を見開いた。あのミリアが誰かと話してる、といった驚き様が見て取れる。
一応ノックしてから声をかけた。
「レイルです。入るぞ」
レイルが扉を押した瞬間ミリアが飛びついてきた。
「一体どうしたんだ……」
見るとミリアの長く美しい髪は可愛らしく結われ、服も村娘のお洒落着を借りているようだ。そういえばレイルもローブを着ていて分かりづらかったが村人の服を借りているようだ。
「服を洗ってくれると言うから、遠慮したんだが無理やりこの格好にさせられた」
相変わらずの無表情かつ無感情な声だが、今はそれが照れて恥ずかしがっているようで愛らしかった。ミリアにそのつもりは一切ないだろうが。
「で、なぜ悲鳴を上げていたんだ」
「傷薬を塗り髪をいじられた後、ここで待って色と言われた。そしたらあの子が」
確かに部屋の中にはもう一人女の子がいる。どこからどう見てもリサだ。
「なんだ、仲直りしたのか」
「そうだよ旅のお兄さん!」
違和感を感じだ。もっとも、ミリアにこんな一面があったのかと驚き嬉しい気持ちが一番大きいが。
「違う。喧嘩などした記憶もないし、そんな和気藹々としていたわけでは」
「旅のお兄さん、お願いがあるの。ミリアを抱き締めていいかな。リサ可愛いの大好きなんだ」
つまりそう言うことか。
「ミリア、だから逃げてるのか」
返事はない。そう言うことのようだ。
「リサちゃんがさせてって言ってるんだからいいんじゃないのか」
「女の子と話したことない」
どうやら適当に言っていた人見知りが激しいと言うのはあながち間違いではないのかもしれないとレイルはひとりごちた。
「リサちゃん、やっちゃっていいよ」
ミリアは一瞬その言葉の意味がわからず、即座に反応したリサに捕獲された。
「可愛いー、暖かーい、気持ちい」
年の差はあろうとも背がさほど高くないミリアは爪先立ちするリサにあっさり背を抜かされている。頬ずりをして満面の笑みを浮かべるリサにミリアはどうしていいか分からないようだ。
「あらあら、あの子があんなに人になつくなんて」
レイルの背中で声がした。案内してくれた女性が二人を見て微笑んでいる。
「リサちゃんは普段からあんな風ではないのですか?」
「えぇ、人見知りなわけではないのですが、ある日突然人に寄り付かなくなって。まるで世の中を怖がっているようで、村長の元を離れなかったんです。今思えば、初めて街の人がここに来た日からだったかも。でもね、さっきここを訪ねてきて、旅の女の子はいるかって言うから、いるよって言うと会いたいって、笑ってね。嬉しかったわ。前は元気な普通の女の子だったから」
レイルも二人を眺めた。その様子は姉妹のようにも見え、このままリサといる方がミリアには幸せなのではと思ってしまった。しかし、そうは出来ないだろう。今ミリアをこの村に置いて行くのは危険だと、悟っていた。魔力を悪用する魔導師がいる。もしミリアが魔導師と知れたら殺すかもしれないという可能性は消せない。ミリアも分かっているだろう。長居は無用。明日には、出なければならない。
「そうそう、お食事の用意ができましたのでこちらにどうぞ。リサ、旅人さんを案内して」
「はい! 行こ、ミリア」
ミリアは年の離れたこの女の子に不思議な感情を抱いていた。今まで心から可愛いとか暖かいとか言われたことはなかった。しかしリサはあっさりと当たり前のようにミリアを愛し抱き締めたのだ。愛というものは遠い存在だと思っていたミリアにとってそれは驚くべきことだったのだろう。人に愛されるというのは。なぜ、リサはあんなに軽蔑していたミリアを今はこんなにも愛しているのか。
「ミリア、私ミリアが大好き!」
リサは何の躊躇いもなく言うのだ。
食事会の行われた広場は驚くほど賑やかで和気藹々としていた。数時間ほど前まで生気の一欠片すらないような村だとは誰も思わないだろう。まだ草木は力を取り戻していないが心なしか青みを取り戻しているように見える。水の巡りも良くなったそうだ。
二人は色々な人々から感謝を述べられた。子ども達は歌を歌い、絵や文字が書かれた髪を綺麗に飾って二人に渡した。気持ち程度ですがと手作りの装飾品を贈る者もいた。全てをレイルが受け取り、湯から出た後返された大きな旅鞄の片隅にしまっていく。
ある若者は言った。
「何でだろう、村長が俺らを呼びにくる少し前に今まで感じていた不安や恐怖がすっと消えてさ、不思議と元気が湧いてきたんだ」
きっと村を覆っていた黒い気が取り除かれたからだろう。ある母親は言った。
「今まで元気のなかった赤ちゃんが急に泣き出してね。嬉しかったわ。だって笑いながら泣いてるんだもの」
ある老人は言った。
「ずっと治らなかった咳が急に止まってな。楽になったのだよ」
子ども達は口々に言った。
「ありがとう」
全部全部ミリアのお陰だ。ミリアがこの村に希望をもたらしたんだ。村人の悪に屈しない強い思いが、ミリアに届いたのかもしれない。願いを叶える、ミリアの名にふさわしい行為ではないか。
「旅人さん! ご無事で何より」
人ごみをかき分け二人の前に現れたのはなんと村長だった。杖をつきながらだが、しっかりとその足で歩いている。
「大丈夫なんですか?」
レイルが無理をしているのではと心配そうに尋ねるが、村長は胸を張って大声で笑う。
「平気ですよ。まだ完全とは行きませんがちゃんと一人で起き上がれて一歩一歩を踏み出せます。これでリサに迷惑をかけることもない」
そういえば、二人が人々に囲まれたあたりからリサの姿が消えていた。
「リサなら心配いらんよ。忘れ物を取りに一度家へ戻っておる。またすぐここに来るさ。今日は二人が泊まられる家にリサもおりますので。ミリアさん、あの子は一人っ子で親しめる年上の女性はいないのです。どうぞ相手になってやっとください」
ミリアは安定でレイルのローブに隠れており、そこから顔だけ出して頷いた。
「ありがとうございます。では私はこれにて」
まだおぼつかないながらも村長は人ごみに消えた。
「ミリア、なんでリサちゃんと仲良く?」
「別に、リサがくっついてくるだけ」
さり気なく名前で呼んだ。本に和谷話は気づいていないかもしれない。レイルは込み上げた笑を一生懸命押し殺した。
その夜。リサはミリアと同じ部屋で寝た。レイルは別の部屋で村の男性何人かと話をして皆そこで寝てしまったらしい。
リサは終始ミリアに抱きついて可愛いだとか暖かいだとか最初言っていたことと同じような言葉を連呼した。見ていると本当に中の良い姉妹見たいで、微笑ましい。
「ミリアはさ、笑ったら絶対にもっと素敵になるよ! どうしていつも寂しそうなの?」
寂しそう、リサの目にはミリアの無表情がそう映るらしい。実際に寂しそうだからか、村の人々か感情豊かだからそう見えるのかは分からないが、リサは聡い子、侮れない。心の奥底、なにか鋭いものを持っていて感じると途端態度を変える。良い方か悪い方かは相手の心の持ちように決まる。リサは上辺なんかに騙されない子なんだ。
ミリアもそれは感じていた。ミリアも相手の心を読むことができるが、それは魔力が反応するからだ。リサのいわゆる直感というものは、ミリアにとって計り知れない力を持っている不思議なものだった。魔力のように根源が見えているものではない、計り知れない力を持ったもの。
「ミリア……?」
「ん、あぁごめんなさい。えっと、何で笑わないかだっけ。それは多分、笑い方を知らないからだと思う」
「笑い方を知らない?」
リサは意味が分からないと首を捻った。
「小さい頃にね、笑い方は習わなかった」
「簡単だよ? 私が教えてあげる。えっとね、口のこことここをくいって上げるの。ほら、にーっ」
リサは指で口の左右を押さえて持ち上げた。口角が上がり笑顔になる。
「ほらミリアも。にー」
リサからしたら寂しそうなミリアのにも無理やり同じことをする。
「ははひにはふふかひい(私には難しい)」
リサに無理やり笑顔を作られたまま話すのでちゃんと話せてなくリサは大仰に笑った。
「それが笑顔というものなんだな」
笑うリサをミリアはただ見つめた。
やがてリサが笑うのを止め、息を整えながら抱きついた。
「大丈夫! ミリアもすぐ出来るようになるよ」
「そう、だといいな。そろそろ寝よう。おやすみ」
「ん! おやすみミリア」
二組敷かれた布団の一組を完全に無視してミリアの眠る布団にリサが潜り込み二人揃って眠りについた。
翌朝、ミリアは早朝に目覚めリサを起こさないよう注意しながら布団を抜け出し、昨夜女性が持ってきてくれたいつもの服に着替えた。丁寧に畳まれて、良い香りもする。ローブまで綺麗になっていた。
今までローブを脱いだことのないミリアの旅着は驚くことに制服のように見えた。ミリアの太もも半分程まである丈の淡い水色スカート、真っ白なブラウス、紺色で胸にエンブレムのついたベスト、スカートと同色のネクタイ、スカートギリギリまである黒い靴下。髪型もいつものように戻す。目の上で揃えられた前髪、肩ほどまである横髪を腕に巻いていた紐で交差させながら縦に結ぶ。長い後ろ髪はスカートを隠すほど、美しい赤茶色。
しかしミリアはすぐにローブを纏った。そういえば、杖は。ミリアが無表情ながらも物寂しいそうなのは杖がないからだろうか。
その時、小さな足音が扉の向こうから聞こえた。ミリアは慎重に扉を開く。
「よっ、今起こしに行こうと思ってたんだ」
片手を上げ小声で囁いたのはレイルだ。もうマントも武具も鞄まで背負って準備は満タンらしい。
「私も、出れる。ただ、杖を返して欲しい」
どうやらレイルに預けていたらしい。いつの間に、そんなことをしていたのだろう。しかし、あれほど大切にしていた杖を預けたと言うことはそれだけレイルを信用しているということだろう。それに、脱ぎたがらなかったローブをあっさりと取ったのも、何か意味があるのかもしれない。
「はい、お預かりの品だ」
簡単に渡せるよう既に鞄からは出していたらしくマントの内側から杖はミリアの手へと返ってきた。すぐにミリアもローブの中へ隠す。
「じゃあ行くか」
レイルが出口の方へ歩き出した。ミリアもその背を追って外へ向かう。
家の扉を潜りすぐそこにある大きな道へ出ようとした瞬間だった。
「待って!」
呼び止められた。振り返るとそこには寝ぼけ眼で、まだうつらうつらとしているリサがいた。
「お姉ちゃん……」
リサは泣きそうになりながら力なく言う。誰のことをなんて思わなかった。
「お姉ちゃん、行っちゃうの?」
必死に手を伸ばして追い求めるリサ。悲しげな表情のレイルにミリアが動いた。
「またいつか逢える」
リサの涙腺が破れた。とめどなく涙は溢れ出す。
「ミリアお姉ちゃん……」
「うん。リサ、またな」
力強くリサの体を抱きしめるミリア。無表情なその顔が今は逞しく思えた。
「お姉ちゃん、これ」
リサは必死に笑顔を作りながら小さな手に握られていた可愛らしい髪留めを渡した。
「私の宝物、ありがとうとごめんなさいの、気持ち」
「ありがとう。大切にする」
ミリアは前髪に付けてそう言った。そしてミリアの方も何か渡した。
「これは私の思いを込めたもの。きっとリサを守ってくれる」
小さな手に乗せられたのはその手に見あった大きさの白い光を放つ水晶玉。リサは握り締め大きく頷いた。
「私ね、最初お姉ちゃんを見た時怖かったの。村を悪くした人と同じ感じがしたから。でもね、お姉ちゃんは違った。村を助けてくれた。私を大切にしてくれた。悪い人達とは逆だったの。ごめんね、痛くしちゃって……。でも、今はとってもとってもとーっても大好きだよ! ミリアお姉ちゃんは私の大切な大切な人なんだ」
涙を流しながら笑うリサはとても輝いていた。いつまでもつつけば良い時。けど、そういかないのが現実。
「ありがとう、でも、行かねばならない。このままだとこの村を巻き込んでしまう。リサ、私は強くなって、また逢いに来る。それまでしばらくお別れだ」
行かないでと訴えるリサの視線を振り切ってミリアはレイルの元へ帰る。そして二人はなにも言わず歩き出すとその村を後しにした。
「良かったのか、別れて」
「良いも悪いも、私にはやらなければならないことがある」
「そのようだな。ミリアの旅の目的はそれか?」
ミリアは首を横に振った。違うらしい。
「旅に出た目的はなかった。ただ、成り行き上そうなったまで。しかし、こうして他の魔導師の邪魔をしてしまったからには、ただのうのうと旅をするわけにもいかない」
ミリアは決意していた。こうなることを、こうなる前から。けど、レイルは。
「そうか……」
揺れていた。
「にしても、昨日今日とよく喋るな。何かあったのか?」
慌てて話を変えた。レイルの中でこのままではいけないという意識が働いたのだろうか。
「それは、あの村の人が良い人だから」
「良い人? 確かにそうだけど、それなら街の人も」
「街の人は偽善者ばかりだった。村の人は本当に幸せを愛していた。私は美しい人としか話したくない。汚い人は、平気で人を騙す。私はそんな人と話してると、自分も汚くなるようで嫌なんだ。美しい人は、見た目なんかに騙されない。心を見る力があるんだ。そんな人は話してて落ち着く。リサをはじめ、あの村の人たちには皆その力があった。私が普段人に顔を見られたくないのは、魔導師だとばれたくないこともあるが、相手がどんな人か分かり尚且つ美しい人ではない限り、姿を晒したくないのだ」
つまりミリアが顔を見せるということは同時に信用を表すのだ。信用したものだけに自らを教える。疑心暗鬼ではなく人を見る力があるこその特性だろうか。ミリアは守りが硬い分、信じたら一生、裏切られたら酷く傷つくようなそんな“美しい人”なのだ。
ミリアはレイルになら全てを話していいと言った。それは、レイルを信用している証拠だ。
「俺は、そんな素敵な人じゃない」
レイルの呟きは風に消えた。
今回も楽しく書かせていただきました。
まだまだ続きますよ。なので後書きはあっさり終わらせたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。また次もよろしくお願いします。
2012年 11月17日 春風 優華




