1/1
1.Entrance
ただ道を歩いていた。タンポポがアスファルトの隙間から、春の息吹を咲かせている。
「暇だ」
けして独り言が好きな訳ではない。ただ喋らないと落ち着かないのだ。
「あれっ?」
こんなところに洋館があったっけ?最近散歩すらろくにしてないものだから、町並みでさえ忘れてしまったのだろうか。
「図書館?」
入り口には図書館という文字と、開館中の札が掛かっていた。
「暇だし。」
私は扉を押した。
ギィ…さびれた音が響く。しかしシンと静まり返る館内に響いたのは私の鼓動だけだった。
「あのっ?すみませ~ん?」
小さめの声は、静けさに吸い込まれていった。
「どなたかいらっしゃいます?」
今度は少し大きめの声を発する。コトンとも音がせず人のいる気配すらない。
「帰るか…」
私は扉に手をかけた。
その時、背後からニャァ…と小さく聞こえた。
「んっ?」
振り返るとそこには本棚は無く、ただうっそうとした森が広がっていた。
お読みいただきありがとうございます。今からたくさんの童話達が待っています!