最終回 水に話しかける実験の意味
生きていないものに話しかける。
命を分け与える行為だが寿命が短くなるわけではない。
雪山で遭難したら寝ないように話かける。
私は水に話しかける実験をしている。
怪談話をだ。
暗い部屋で電気を消し、名前は出さないが特別なローソクに火をともす。
そして47もの怪談話を語りかける。
命を分け与えるとは書いたが、これはある種の身代わりともいえる。私は昔どこかに消えてしまった友人の姿をした強い力を持つ何かに障られ、奇病を患った事がある。
今は入院中にもらった御守りにより近づけないが、近づけないだけだ。
私にその御守りをくれた人は、手放せば自分が死ぬことがわかっていたように思う。彼は別の何かに狙われていた。とりつかれ生きることにつかれてしまったとかではない。彼は
「自分は自分の祖父に、もしこれが必要な人が見つかったら渡せと言われた。」
そう言っていた。私にも同じ事を言い含める。
絶対に守らなければならない約束だとも言われた。
要はその約束を守らない事がとりついた何か以上に怖すぎるのだ。
受け取る際に一応説明書というか由緒のようなものの書かれたものをもらう。受け渡す度に受け取った人がその時代の言葉でその時代の紙に書き写す決まりになっている。
何が御守りかということは渡す人以外には教えるなといわれている。
彼が御守り作りを生業にしていたのは、それを渡した後自分を守る為だったのだろう。
ベタな話だか彼は私に御守りを渡した数日後に全身から血が噴き出し怪死している。
私は水に話しかける実験で私の病気の部分を分け与えようとしていた。点滴の液を腐らせるような何かが相手だ、ただの気休め程度かもしれないが一度も外気に触れさせずに水を作った。
実験が成功したように思う事もしばしばあった。明らかに水が増えている事がある。ただ私か夜眠ろうと目を閉じると、何者かが私にその増えた分の水をかける。その者は私の友人の姿をしているのだろうか、それならばまだいい。
もしそれが私に御守りをくれた男の姿をしているならば御守りは御守りの振した呪いを集める物なのかもしれない。