悪魔学園アルデリ記 〜わたくし、最強ですが生徒です〜
主人公アルデリ=デファデルトは男性。
一人称は「わたくし」
古代最強の悪魔。
だが、1度封印された事により力は少し落ちている。
また、平和な生活を送るために力を隠している。
バレたら、また封印されるかもしれないからだ。
魔界でも遥か古に存在を刻んだ最強の悪魔、アルデリ・デファデルト。
圧倒的な魔力と理知的な頭脳、そしてどこか気品漂う立ち居振る舞い。
だが長き時を眠りに費やしていたため、彼は魔界の今を何も知らなかった。
そんな彼の密かな趣味――
それは、現在の魔界を取り仕切る“上級悪魔”たちを影から観察することだった。
「……ああ、美しい……っ、わたくしは、こんな距離で……その、お姿を拝見できるなんて……っ!」
彼の目の前に現れたのは、魔界の頂点に立つ三柱。
深紅の長髪を風に揺らす、情熱と威厳の化身——レオス・ヴァルフェイン
水面のごとき透明感と氷の気品をまとう、水色の髪の女性——セレネ・リヴァルディス
月光のように冷たく輝く銀髪を持つ、静かなる策略家——イグノル・クラヴィス
その日、彼らは魔界統治に関わる会談のため、人知れぬ場所に集っていた。
アルデリは茂みの影から震えるようにその姿を見つめていた。
(わたくしは……いま、歴史に名を刻む存在を、肉眼で……っ!!)
しかし。
「……そこの者。なぜ覗いている?」
「――ッ……わ、わたくしはっ、あの、ち、ちが……その、ええと……っ!」
声をかけたのは、レオスだった。
怯むように顔を引きつらせ、言葉を詰まらせながら、アルデリは必死に手を振る。
「わたくしは……ただの通りすがりの、あの……ええと、悪魔でして……!」
「……名前を。あと、身分証を。」
「わ、わたくしは、アルデリ・デファデルトと申します……っ。し、身分証は……その、持っておりません……っ」
レオス、セレネ、イグノルの三人は目を見合わせた。
古い名――まさかとは思いつつ、記録に存在しない悪魔の名に警戒を深める。
だが、セレネがその様子を見て、ふっと微笑んだ。
「この子……かわいいわね。興味深いわ。身分証がないなら、魔界名門校《地獄焔魔学園》に入れてあげたら?」
イグノルも頷く。
「ふむ。学苑を卒業すれば、正式な記録も得られる。四年、そこで過ごせ」
「え、えっ……? わ、わたくしが……学び舎に……っ!?」
焦り、困惑、戸惑いながらも、オススメされたことが嬉しくて断れなかった。
「……ま、まさか……三柱の上級悪魔様に……お、オススメいただけるなど……っ!」
こうして、最強の悪魔アルデリは、
憧れの上級悪魔の手配で、《地獄焔魔学園》への入学を果たすこととなる。
――だが。
「……あの、ちょっとだけ、学校って……面倒ではありませんか? その、わたくし、もしつまらなければ……しれっと帰ろうかと」
「卒業するまで出られないよ。逃げたら魂の契約破棄だ」
「…………え、ええっ!?」
こうして、最強の悪魔は力を隠し、わけあって魔法学園の生徒となった。
“普通の悪魔”としての四年間が、今、幕を開ける。