第3話 流通
「それは流通だ」
「わかります。私もちょっと心配になってました」
「そうだろう?」
トッドは瓶を口に傾けながら続けた。
「狼人用のジュースが欲しい時になかったら?マッパーがペンが欲しい時にコンビニにおいてなかったら?それぞれ売っている場所はあるが、あちこちバラバラだ。つまり在庫が少なくなった時に、こちらに届くシステムを作らなきゃいけない。」
「そうですよね~」
カナは愛想笑いをした。
「そこでだ。コンビニで扱う商品を売っている全ての元請けの所に行って、一人ひとり許可を取って来てほしいわけだ」
「ぜ、全部ですか…」
「全部だ」
「はは…私なんかにできるかな」
「カナ」
「はいっ!?」
「お前コンビニにどれだけ本気なんだ?」
「そりゃもう最高に本気ですよ!」
「じゃあやってくれるよな、頼んだ」
こうしてカナはコンビニ全品の許可を得るためのの長い旅が始まった。紙に商品名を書き、原価や許可の項目を書いてゆく。
「はぁ…こんなにあるのか。でもほぼ街の中に集約されているのでミューミューを使えば何とかなるかもしれない」
早速カナはミューミューに乗って卸業者の元へ駆けていった。
始めに訪れたのは人気のあるエルフの健康飲料だ。コンビニに置かないわけにはいかなかった。
「ダンジョン前にコンビニ?」
「そうなんです」
工場長はいぶかしげな顔をした。
「在庫が無くなりそうになったら、こちらの業者が取りに来ます。いかがでしょうか」
「こちらとしては売れるんならいいんだけど、コンビニなんて聞いた事ないからなぁ」
「これからはコンビニの時代ですよ!これからどんどん店舗が増えていきます!」
「そうかい、それなら…」
こうして『エルフ用健康飲料ミュール』の許可を得る事ができた!
そのあとは順調だった。過去の許可商品を見せて、これだけの方が許可されていますというとほぼOKをもらうことができた。
しかし数は多い。今日回ったのは60数件。あと10日以上は必要だ…。
そして10日後――――――――――
「トッドさん…許可取ってきました…」
カナは紙の束をトッドさんに見せた。
「おっ、おつかれさん。これで在庫が減ったらコンビニに回って来るシステムができる。よくやったぞ」
「しばらく寝ててもいいですかね…」
「そういえばカナにはお金を渡してなかったな。ほら、これで飯を食ってくれ」
トッドは金貨の入った袋をカナにくれた。
「わあこんなに!ありがとうございます!」
「いいってことよ!それよりまだまだやることがあるから、これからが大変だぞ君!」
「はい!」
これで何とか食い扶持ができた。私のコンビニ大計画はまだまだ始まったばかりだ!