第21話 悪夢
カナマート2号店が始まると、数日は満員御礼だった。店内の飲食料がほとんどなくなるという状態だった。人造ロボ店員もテキパキと仕事をこなしている。
納品から品出しまでやってくれるので、ダンジョンのひとつでも逆にいけるんじゃないの?とも思えるほどだ。
フランチャイズ料を取られることもないので、お金だってまるごと私にはいってくる。店長室では暇なカナが雑誌を廃棄のおせんべいを食べながらファッション雑誌を読んでいる。なんかもう天国のようだ。一見そう思えた。
トントン、と店長室にノックが入り、ロボが1体入ってくる(ロボは限りなく人間に近い容姿をしている)。
「アノ、テンチョウ、テンチョウ」
「はいはい何でしょう」
「ヒトリ、テンインガ、フサギコンデマスケド」
どうしたのかしら。厨房に入っていると、角でロボがうずくまっていた。
「どしたの?」
「ワタシハ、ダメナロボデス…」
「何がダメなの?」
「ハッチュウミス、ヲ、シテシマイマシタ…」
「どこだろ…これかな?コーヒーシュークリーム3個が…300個ぉ!?」
「ワタシハ、ダメナロボットナンデス…」
ロボはふさぎ込んだまま動かない。
「とにかく落ち込むのはやめて。待ってて」
カナは店長室に戻り、ロボットのマニュアルをよく読んでみた。
「白痴症候群—————人間に限りなく近いので、失敗すると過度に落ち込むことがあります。軽度だとすぐ直りますが、重度だと戻ることはないので、自死モードにして廃棄してください」
はぁ…あれは軽度とは言えないしなぁ。
とりあえずあと4時間後に来るシュークリーム300個を裁くことに専念した。150ウーロンのこれを50ウーロンにして、店頭販売。賞味期限が短いので勢いで乗り切る!と、言葉で言うのは簡単だけど、どうなるやら。
お店の1角にスペースを作り、ドライアイスを敷き詰めてからシュークリームを敷き詰める。
「大特価!シュークリーム50ウーロン!」
この看板で何とかしのぎたい!
「シュークリームいかがですかー」
「イカガデスカー?」
1号店と2号店で呼びかけてみる。安さで皆が注目して買っていく。何とかいけそうな気がしたので呼び込みはロボに任せ、カナは1号店の厨房に戻った。そこにはうずくまってから2日目のロボがいた。
「売れそうだから気にしなくてもいいんだよ?」
「ユルサレナイ、ダメナロボデス…」
カナはうずくまるロボを自死モードにした。




