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第8話 激走スーパーマシン

 武須田ぶすだの車は、校門から少し進みカーブに差し掛かる。

 カーブは生い茂る太い枝の木々が、まるで日の光を――夕方だからあまり日の光は無いが――遮るトンネルのようになっている。

 それを過ぎ、やがてビルが並ぶ四車線の広い一般道へ出た。

 車の中では、芽愛メイが両手を拘束しているガムテープを何とか剥がそうともがいている。


「待ってろよ相川あいかわ、もうすぐ助けてやるからな」


 絶対に嘘だ。

 イヤらしくニヤけた顔を見れば分かるが、今武須田は芽愛を犯すことしか頭にない。

 何とか脱出しようしたいが、ガムテープは全く剥がれない。むしろ後ろに回されている状態で腕がどうなっているのかさえ分からない。

 芽愛は悔しさから涙を流した。

 その時――


「何だ⁈」


 鼓膜を激しく揺さぶるような轟音が近づいて来る。

 武須田はルームミラーで後ろを覗くと、1台のスポーツカーが近づいている。

 まるで猛獣が雄叫びを上げながら獲物を追いかけるように。

 その運転席に居るのは恭兵キョウヘイだ。


                 〇

 

 武須田の車を追いかける恭兵、その表情は少し楽しそうだ。

 恭兵が運転するこの車は恭兵が書いたノベルに登場する車だ。恭兵からすれば夢のような気分だろう。

 

 マシン・SKN1。

 ベースの車は、GT-R R35。

 外見は市販のものと殆ど変わらないが、ボンネットにある空気を取り入れるための吸気口エアインテークが通常より大きく、漆黒の鎧の如く冷たく輝くメタリックボディの両サイドには、サイドミラーから後部の窓ガラスまでゴールドのラインが伸びており、ホイールもゴールドメッキが施されている。

 他にもこの車には秘密がある。

 それは……。

 

(こいつから逃げられると思うなよ)


 アクセルを踏み込み、大きくなる爆音に恭兵のテンションはどんどん上がって行った。

 自分は今、浩次のミッションを邪魔していることを完全に忘れる程……。

 恭兵の車に気づいたのか、武須田の車はスピードを上げ、他の一般車を避けながらなんとか恭兵の車をまこうとしている。

 しかし、武須田のセダン車に対して恭兵の車(SKN1)はスーパーカーにも匹敵するほどのパワーを持っている車だ。邪魔な一般車が居なくなれば当然逃げられるはずはない――そもそも恭兵のスキルが発動している間は何処に逃げても無駄だが。


                 〇

 

 丸葉まるは学園・理事長室――

 理事長の席に座っている1人の男。

 男の目の前にはホログラムのように浮かび上がったスクリーンがあり、そこには上空から撮影するように武須田の車と恭兵の車のカーチェイスが繰り広げられる。

 男は電話を手に取り、電話を掛けた。


『はい110番緊急電話です。事件ですか? 事故ですか?』


 電話の相手は警察だ。


「事件です。女の子が男に誘拐されています。場所は丸葉学園入り口の進行から南西へ向かっています。車はスポーツカー、男は銃を持ってます」


 男の通報は通常なら少々アバウトで通信係に訊き返されそうなのだが……。


『分かりました。すぐにパトカーが向かいます』


 それを聞くと男は電話を切った。


「さぁ、どう動く恭兵?」


 そう、男の正体は浩次コウジだ。

 今浩次の目の前に現れているスクリーンは、彼のユニークスキル『上空遠隔視』、警察の追跡ヘリの高性能カメラのように上空から地上の様子を窺うことが出来る。

 ただし、建物の中までは見ることが出来ないうえ、更に消費するスキルポイント多いので下手な場所で使うと無駄遣いになってしまう欠点がある。


「武須田先生はやりますかね……?」


 浩次の後ろにいる男が問いかける。その声は何処かイラつきがあった。


「さぁ、どうだろうね……」


 浩次は振り向きもせずに答えた。


「浩次さん、出来れば奴を俺の手で始末させてくれませんか?」

「その機会があれば好きにしろ」


(あればな……)


 そう言って不敵な笑みを浮かべる浩次。恭兵とは違い、恭兵のことは他人もしくは完全に敵と認識しているようだ。


「ちょっと盛り上げてみるか。キャラ武装、武須田にトカレフ」


〈トカレフ、転送します〉


 浩次のスキルナビゲーターが報告した。

 恭兵のスキルナビゲーターの声とは違い、浩次のスキルナビゲーターの声はあからさまに低い男の声だ。

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