第13話 浩次の秘策
拝借した車でキャンプ場へむかう恭兵たちは、途中でサービスエリアのコンビニで昼食を買い、再び本線へ戻っていた。
コンビニでは、男性店員が恭兵たちを引き留めて、芽愛に迫ったが、そこは恭兵がボコボコにしたので何とかなったが、本当にこのルールだけは理不尽としか言いようがない。
芽愛と舞が昼食を終えると、まさかの舞から声がかかった。
「ところでアナタ、浩次のスキルのことも知っているのかしら?」
「ずいぶん唐突ですね。もちろん把握してますよ」
「お兄さんはどんなことができるの?」
恭兵は浩次のスキル及びユニークスキルのことを舞に教えた。
「――それで男共が芽愛ちゃんを狙っているのも厄介だけど、兄貴自身が不死身ってことだよ。制限時間を過ぎるまで絶対に死なない」
「まるで殺人サイボーグね……」
「そっちの方が可愛い。サイボーグなら木っ端みじんにすれば止まりますから」
「それもそうね。でもどうやってその力を手に入れたの?」
「……それはちょっと説明するのが難しい、というか……自分でもわからないんですよ?」
さすがに「異次元から来て、このスキルを手に入れました」と言ったら完全に頭のおかしい人だ。
「とにかく、時間まで見つからなければ、全部終わります」
とりあえず話を無理やり逸らしたが、舞の怪しむような冷たい視線を受けながら、恭兵は車を走らせた。
○
学校の理事長室に戻った浩次たち。
未だに恭兵たちが検問に現れないことにイライラしながら待つ浩次。
すると、ドアがノックされた。
「入れ」
入って来たのは武須田だ。
「ボス、鹿島先生を捕まえました」
「わかった。ちゃんと抑えておけよ、使い道があるかもしれん」
「はい」
「それと、理事長の家に行くぞ」
「どうするんですかボス?」
「調べるんだ。何か行先の手掛かりがあるかもしれない。理事長の家は知ってるか?」
「はい、確か……」
浩次は武須田と一緒に芽愛の家に着くと――窓を割って――中に入る。勿論だが、恭兵たちは居ない。
「でもボス。一体何を探せばいいんですか?」
「何でもいい。手掛かりになる物だ」
「はい……」
アバウトな命令に渋々従う武須田は、とりあえず一階の部屋という部屋をとりあえず探し始めた。
浩次は2階に上がり、芽愛の部屋に入った。
しかし、芽愛の部屋には特にこれと言って目ぼしい物は無い――タンスに仕舞われた下着には夢中になったが……。
続いて浩次は舞の部屋に入った。
舞の部屋は元々芽愛の父親と相部屋なので、少し広めになっている。
ベッドの側にある棚の上に目を向けると、そこには写真が何枚か飾られており、その中の一枚に、まだ幼い芽愛の後ろに立つ舞と芽愛の父親が写された物を見つけた。
(そういえば、父親は死んでいたんだったな……)
そこで浩次はあることに気づく。
「おい、理事長の両親はどうしてる?」
「既に亡くなっています」
「じゃあ、実家は?」
「さぁ? ただ茨城の出身なのは覚えてます」
「茨城?」
(そこは設定していなくてもリアルなんだな……)
なぜか感心していると、ある疑問が浮かんだ。
確か恭兵が向かっているのは南、ここから茨城は真逆の方角だ。
実家の線は低いだろうと一瞬考えたが、ある考えも浮かんだ。
「まさか……ゴッドアイ、禿 恭兵」
〈検束します〉
ゴッドアイとは、ユニークスキル『上空遠隔視』の発動呪文だ。
浩次の目の前にスクリーンが現れ、恭兵が今居る場所が映し出された。いつの間にか車はシルバーのスポーツカーに変わり、高速道路を走っていたが。
スクリーンを見た武須田は、恭兵たちの現在地を見ると、こうつぶやいた。
「ここは……下りですね」
「下り? 北上しているのか⁉」
「間違いないです」
陽動だったか……。
どうして検問に引っかからなかったか不思議だったが、これで謎が解けた。
「検問を解除させろ、あいつらが北に逃げたなら、やるだけ無駄だ。それと、何とか理事長の実家の住所を調べろ」
恐らく恭兵たちが目指しているところは、間違いなく舞の実家だろけど、その住所が分からない。
浩次が悩んでいると、武須田があることを提案した。
「なら、法務局に行って理事長の婚姻届けを調べれば、本籍の欄に書いてあるんじゃないですか?」
「そうなのか?」
「はい」
まさかの武須田のアドバイスで、浩次はすぐさま暴力団を引き連れて、地元の法務局に向かった。
普通なら一般人が入るには色々条件が付くが、今の浩次ならそれは全く関係ない。
控室でしばらくすると、局長らしき年配の男性が現れ、その手には舞の婚姻届があった。
確かに本籍の住所がちゃんと書かれている。
これで恭兵の目的地は舞の実家であることは間違いないだろう。
しかし問題は、今から出ても、恭兵に追いつけないことだ。
恐らく恭兵は自分たちを迎え撃つ準備をして待ち構えるはずだ。
それでも浩次にとっては殆ど問題ではないが、やはり先回りをして恭兵たちが来るのを待ち構えたい。
「何とかして先に着く方法はないのか⁉」
浩次が悩んでいると、チンピラの1人が尋ねた。
「ボス、ヘリを使えばいいんじゃないですか?」
「ヘリ? あっそうか! よしっ、すぐに飛行場へ行くぞ!」
組員たちは「へい!」と一斉に出て行った。
これで恭兵たちを抑えることはできるだろうが、やはり不安だ。
万が一出し抜かれた場合のことを考えないといけない。
浩次が再び舞の婚姻届を見た時、ある作戦を思いついた。
万が一待ち伏せが失敗した時に、恭兵たちをおびき寄せ、さらに舞は味方になるよう仕向けるための。




