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第8話 護衛

 理事長室を後にした恭兵キョウヘイたちは、昇降口に向かっていた。

 理事長室から昇降口までは、割と近いが、同時に敵に出くわす可能性も高い。

 恭兵はライフルを構え、何処から現れるか分からない敵に警戒している。

 すると恭兵たちの正面から拳銃を持った組員が現れ、恭兵は透かさず引き金を引き組員を狙撃。

 倒した組員を無視して先へ急ぐ。


「ねぇ、一体何がどうなっているの?」


 状況を理解できていないマイが恭兵に訊いた。


「浩次《バカ兄貴》のスキルのせいで、男共全員年齢問わず芽愛メイちゃんを狙っているんだ――って言うより、言いなりになってる、が正しいかな?」

「あなたも()ですよね?」

「俺は――」

「――恭兵さんは例外よ、お母さん」

「……。そう……」


 さすがに3回目なので芽愛が恭兵の代わりにツッコを入れた。

 その恭兵は嬉しいような悲しいような複雑な思いがあったが。


「でも、どうして芽愛を狙うの⁉」

「私もよく分からないけど――って言うか恭兵さん。危うくファーストキスを奪われるところでしたよ⁉」

「ファーストキス?」

「言ってたじゃないですか『私の()()()を狙っている』って⁉」


(あっ……そっちで考えていたのか……)


 直接言うのが恥ずかしかったため、回りくどく言ったせいか、芽愛は「初めて」と聞いて、ファーストキスを思い浮かべていたようだ。

 本人に対して確認するわけではとはいえ、女子に向かって直球に「処女」と言うのは少し抵抗がある――というより考え過ぎかもしれないが、言えばセクハラのような気がしてならないというのが本音だ。


「ゴメン。上じゃなくて()なんだ」

「下?」


 やはりピンと来ないか、と恭兵が他の言い方を考えていると、恭兵のヒントに気づいたのか、舞が答えた。


「それって、()()()()のこと?」

「バ、バー……!」


 それを聞いて理解した芽愛は、本編では絶対に見せないほど顔を真っ赤にして。


「そそそ、そっちだったんですね⁉」

「そう、そっちだったのです」


 回りくどい言い方をして申し訳なさを感じていると、「居たぞ!」という声と同時に正面から拳銃を持った組員が現れた。


「隠れろ!」


 恭兵が叫ぶと、芽愛と舞は近くのトイレの出入口に避難し、その間に恭兵のライフルで狙撃。組員を倒した。


「行こう」


 恭兵が呼びかけると芽愛と舞が後に続いた。

 そこで恭兵はある違和感に気づく。他の教職員が見当たらないのだ。

 男の職員が居ないのは良いが、それでも女性の職員も居ないのが気になる。


「そう言えば、他の教職員は?」

「全員帰らせました。ただ、男性職員が何人か……」

「残っている訳ねっ!」


 恭兵は素早くライフルを構え、鉄パイプを握る男の足を撃ち抜いた。今まで見てきた暴力団とは格好も雰囲気も違う。恐らくこの学校の職員だろう。


(ホント、めんどくせぇ……)


 その後も組員やらチンピラ――偶に男性職員――が行く先々で現れては恭兵がそれを狙撃する、この繰り返し。現れる相手の人数は少ないが、正直うるさい。

 ゲームなどで出て来る、他のキャラクターを守りながら目的地に向かうかなり面倒くさいボディーガード的ミッションをやっているような気分だ。


「ところで恭兵さん。昇降口に向かっているんですよね?」

「そう」

「あそこって、ガラの悪い人がいっぱい居ましたよ?」

「あのくらいなら大丈夫」


 恭兵はプランがあるからか自信満々だが、芽愛は不安を隠しきれない様子だ。



 そして昇降口に近づいた恭兵たち。

 敵を倒しながらだったせいか、理事長室からここまで数十メートルしかないのに妙に長く感じた。

 下駄箱がならぶ通路の先には、SKN1と――そして6人のガラの悪い男たち。


「居たぞ!」

「隠れろ!」


 咄嗟に下駄箱の陰に隠れると同時に無数の銃弾が飛んで来た。

 思った通り、昇降口の前には組員やチンピラが集まっていた。


「おい出てこい、もう逃げられねぇぜ! 大人しく女を渡しな⁉」


 サングラスを掛けた――夜なのに――組員の挑発する強気な声が聞こえる。


「どうするんですか恭兵さん……?」


 それでも恭兵は動じない。むしろ「いやなこった!」とこちらも強気で言い返すほど余裕だ。


「お前は馬鹿か⁉ こっちの方が人数は上だぞ⁉」


 サングラスの組員の言う通り人数的にもそうだが、武装している数では圧倒的に恭兵たちが不利だ。


「本当に大丈夫なの?」

「大丈夫です。これ持ってください」


 不安そうな舞に恭兵は言い聞かせると、ライフルを舞に渡し、SKN1のコントローラーを取り出し起動した。


「確かにそっちの方が頭数は上だ――でもな、それだけで勝った気になるのは早いぜ!」

「ふん。強がるなよガキが――」

「――後ろ見てみろ!」


 そう言って振り返った隙をついて反撃という定番の手段。

 組員たちは恭兵の言う通り全員振り向く――


「おい、見てみろ」

「はい」


 ――ことはなく。チンピラの1人だけが後ろを振り返って様子を窺い。それ以外の連中は恭兵たちの方を向いたままだった。これでは反撃しようと現れた瞬間に撃たれてしまう。


「誰も居ませんよ」


 チンピラの一言に「やっぱり」とサングラスの組員はもらした。


「全然引っかかってないじゃないですか恭兵さん……」


 これには芽愛も少々呆れ気味だ。


「この嘘つき野郎。誰も居ねぇじゃねぇか!」

「誰が()()だって言った⁉」

「はぁ⁈」


 組員たち全員恭兵の言うことが理解できず、首を傾けた。


「絶対に顔を出さないで」


 芽愛と舞にそう言うと、恭兵はSKN1のコントローラーに付いているボタンに指を置いた。


追尾トラッキングモード……」


 そう言ってボタンを押すと、SKN1のボンネットにある2つの吸気口エアインテークの下にある「CMGコントロールマシンガン」の銃が上昇。


「なんだ?」


 その機械音に気づいた組員たちが振り返った瞬間、マシンガンが火を噴いた。この銃は操作をしなくても自動で動く物を攻撃する「追尾トラッキング」モードが付いているのだ。

 マシンガンによって次々に倒れ、やがて攻撃対象が居なくなったため、マシンガンは沈黙した。

 恭兵はもう一度コントローラーのボタンを押してマシンガンを格納。

 恭兵が下駄箱の陰から出た。組員たちは全滅しているようだ。


「もう大丈夫だ。早く車に!」


 先に駆け出した恭兵に芽愛と舞も続こうとしたが、舞は足を止め、芽愛もつられて立ち止まった。

 横たわる組員を見て、舞はやはり複雑な表情を浮かべていた。


「さぁ、早く!」


 先に進む恭兵が2人に向けて急かした。


 その時だ。


 ドン!

 ズカーン‼


「うおっ‼」


 SKN1が突然の爆発。恭兵は爆風で押し戻される形で床を転がった。

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