理事長室
「畜生‼」
パトカーの追跡をかわした恭兵の車をユニークスキル『上空遠隔視』のスクリーンで見ていた浩次が床を蹴った。
そして追い打ちを掛けるように突然目の前のスクリーンが消えた。
どうやら時間切れのようだ。
(恭兵の戦力を甘く見ていた。ただの銃と車のマニアだと馬鹿にしていたけど、まさかそれを呼び出すことが出来たなんて……)
恭兵なんてマニア向けの話しか書かない馬鹿だと今まで見下していたが、ここまでたちが悪いとは思いもよらなかった。
ガンアクションなんてその手のマニアか銃社会に生きる外国人の娯楽程度しか考えていなかった浩次は、アクションは勿論、銃に関する知識は映画やドラマ、アニメで偶に出る程度のものしか知らない。
先ほどの武須田に持たせた銃も、たまたま人気の推理マンガで知っていた程度だ。
「一体どういうことだ⁉」
〈禿 恭兵のユニークスキル『マシン召喚』によるものです〉
「車が呼べることは聞いていたが、あんなマシンを呼び出せるなんて聞いてないぞ⁉」
浩次は自分のナビゲーターウォッチに向けて怒号を浴びせた。
しかし、ナビゲーターウォッチからは何も言い返されない。当然だが、ナビゲーターはあくまでプレイヤーをサポートするだけで感情など無い。
浩次は左腕に付けられたナビゲーターウォッチのボタンを押した。
タイムリミットはあと「24:35」まだまだ始まったばかりだ。
しかし、自分の命が掛かっていると考えると、とても多くの時間があるとは思えない。
「仕方ないな、切り札を使うぞ」
「それで現れますかね?」
「現れるさ」
浩次は男に向けて自信たっぷりに言った。
「本当ですかぁ?」
「何だその態度は⁉ 誰のおかげで生き返れたと思ってんだ、ああ⁉」
「うっ!」
男の生意気な態度に浩次はキレて、男を殴った。
「また死体に戻りたくなきゃ、言う通りにしろ‼」
浩次が殴った男は、黒ジャージに刈り上げた髪型の体育教師。
恭兵に射殺されたはずの秋葉だ。
実は死んでいた秋葉を浩次はユニークスキル『蘇生』によって生き返えらせていたのだ。
更にもう1つのユニークスキルによって秋葉は今や浩次の右腕的存在になっている。
「す、すみません……」
秋葉は浩次に頭を下げた。
「来ないわよ!」
女性の声が強気な口調で否定したのだ。
浩次と秋葉は声の主へ視線を向ける。
そこには紫のレディーズスーツを着た芽愛と同じホワイトブロンドの女性が浩次と秋葉を睨みつけていた。
舞だ。
舞は両手を後ろに縛られた状態で部屋の隅に座らされていた。
その両脇には、何処で見つけたのかチンピラ風のガラの悪い男たちが立っていた。
「最近あの子と喧嘩したから、私のことを憎んでる。だからこんなことをしても無駄よ!」
真剣な目で浩次を睨む舞に、浩次は一瞬キョトンとした顔をするが、すぐに相手を見下したようにニヤリと笑みを浮かべた。
「嘘だな。あんたと娘の絆は、俺が誰よりも知ってる……だからこそ分かるんだよ――」
浩次は更に笑みを浮かべる。その顔はまるで悪事を思いついた悪党の顔そのものだ。
「――あんたの娘は必ず来る!」
浩次の笑みに舞は悔しそうに睨みつける。
ただそれしか今の舞には出来なかった。




