魔女っ子、異世界知る②
嘘や。あたしのミラクルモードの魔法でも人の怪我治したり、死んだ人生き返らせたり、人の心を変えたりするんは禁止されてる。反動が危険やからな。ポコリンは倫理? がうんぬんよく分からんこと言ってたけど。
あたしがロゼッタに辿り着いた時には、すでに治療は終わっていた。
嘘やん。ロゼッタやってしもたんか......。
「おお、痛くない。痛くないぞー。村人よ、感謝する」
「いえいえ、お助けできてよかったです」
先ほどまで背負われていてグロッキーやった兵士は、元気だと言わんばかりに剣を振って舞い上がる。
「ロゼッタさん。このお礼はいずれする」
そういうと二人の兵士は一礼して森の方へ消えて行った。
あたしはその一連の流れを黙ってみていた。
「アカリ? 来てたのですね」
ロゼッタはあたしに気付いて、声をかけてきた。
「ロゼッタ、あんたなんともないんか?」
あたしがロゼッタに飛びついて、全身をまさぐる。
人の傷を直したんや。どこか不具合が出ててもおかしくない。
「あはは、アカリくすぐったいです。私はこのとおり、なんともないですよ」
ロゼッタはあたしから距離を取って、くるりと一回転してみせた。
確かにペナルティは受けてないようにみえる。
「聞いたで。ロゼッタも魔法使いやってな。ホンマ、人の傷治すとか無茶なことせんとって」
「......心配してくれてありがとうございます」
◇
あの後すぐにロゼッタの家へやってきた。
一人暮らしの木造建築一軒家らしい。
あたしらはテーブルを囲んで、魔法について話し合っていた。
そこでロゼッタに教えられたんは、あたしの知ってる魔法とは全然違う魔法やった。
まず、その一。変身しなくても魔法が使えるらしい。
あたしのように、【プリカルステッキ】のような変身アイテムを使って変身して魔法を使うのではなく、MP?とかよくわからんものを消費して魔法を使うらしい。
しかも、魔法を使う時に必ずしも呪文を必要としないらしい。
そんなんずるやん。さいきょーやん。
その二。人の傷を治したり、人を攻撃するのが魔法らしい。
これは、あたしのミラクルモードとできることが正反対や。
あたしのミラクルモードでは、魔法の呪文「ぱぴぱぴぷぺぽぽぺぽぺぷぴぱ」を唱えることで奇跡のようなことを起こすことができる。
例えば、シンデレラのために純白のドレスを拵えたり、かぼちゃの馬車を用意することもできる。
けれども、私利私欲のために使ったり、人の傷を治療したり、人を攻撃したり、人の気持ちを変えたりすることはできひん。できないことないけど、失敗する可能性が高いし、ペナルティがある。
一方で、ロゼッタの知ってる魔法は、主に四大属性という火、水、風、地という属性があって、それは戦争のために開発されたものらしい。
ロゼッタの使った治癒魔法も水属性なんやってさ。
ロゼッタの知ってる魔法は、人を攻撃したり人の傷を癒すために存在するんやって。
そして、その三。魔法の存在は世界中のみんなが知っている。
なあなあ、あたしが人目を盗んで魔法使うの隠してきた過去はなんなんよ。
なあなあ、ポコリンよ。あたしに【プリカルステッキ】渡してきたとき、選ばれた少女云々言ってくれたけど、あれは嘘やったんか。
あたしが「うーん」とうなりながら、頭ん中を整理しているとロゼッタが口を開いた。
「アカリは空を飛んだり雨を降らしたりできるのに、治癒魔法が使えないんですか?」
「使うわけないやん。あたしは反動で死にたくない」
ロゼッタは首をかしげて、間を置いた後、何か答えを見つけ出したかのように人差し指を立てた。
「きっとアカリは私の知らない魔法を使えて、私はアカリの違う魔法が使えるのでしょうね。 ......きっとアカリは私の想像も及ばないくらい遠い地からやってきたのかもしれませんね!」
火竜とかいうドラゴンが出てきたときから薄々気付いていたけど、リンゴをゴンリの実って言ったり、空の雲がピンク色だったり、治癒魔法なる魔法があったり、魔法が一般的なものであったり――――
――――どうやら、ここはあたしのいたであろう世界とは、違う世界らしい?
魔女っ子の魔法はなんでもありに見えて、実は人の傷を治そうとしたり、死者の蘇生をしようとするのはNGなんです。大体の魔女っ子作品、魔法少女作品でNG行為に設定されてます。
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