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魔女っ子、異世界知る①

 ロゼッタの住む村に着いた。

 村から少し離れた場所で絨毯を片付けて、ミラクルモードを解いておいた。

 あんまし、人に見せたらあかんからな。


 で、今は村の中心にある開けた場所で、村人たちに囲まれていた。

 主にあたしが質問攻めにあっている。


「よそ者が何もんかえ」


「お嬢ちゃんはどこから来たのかね」


「ロゼッタちゃんのお友達かい?」


 ああもう、うっとおしい。一人ずつ質問しいや。

 

 あたしが愛想笑い振りまいていると、ロゼッタが間に入って来てくれた。


「みなさん。彼女はアカリ。森の奥で出会いました。記憶喪失になって名前やお家の場所、何をしていたのかとかわからないそうなので、記憶を取り戻すまで私の家でお世話をすることにしました。みなさんも仲良くしてあげてください」


 ロゼッタ......。

 感動したわ。あたしのためにありがとう......。


 ロゼッタの説明を聞いた村人たちは皆涙ぐんでいた。

 えっ、なんで泣いてるん?

 

「お嬢ちゃん......その歳で記憶失ったんか......つらいなぁ」


「苦労したな。好きなだけこの村にいてね」


「これ、うちで採れたゴンリの実よ。持っておいき」


 ゴンリの実? というのをバスケットごと受け取った。

 一。赤い。

 二。手のひらに乗る大きさ。

 三。丸くて、ちょっとくぼんだ所にヘタがある。


 どれどれ、ガブリッ。もぐもぐもぐもぐ。

 うーん、普通にリンゴ。

 ゴンリって逆さに読んだだけやん。


 それにしても、みんないい人や!


 

 雲が太陽の下を通過した。

 そういえば森の中にいたから太陽って久しぶりな気がするわ。

 あたしは空を仰いだ。


 うん?

 なんや......。

 なんかおかしいぞ。

 

 なんか雲がピンクに染まってる気がする......。


「って、えええええ、雲がピンクやん! どうなってるん? なあなあロゼッタ。あたしの目がおかしくなったんかもしれへん」


「えっと...... 雲がピンクなのは当然ですよ。さっきも火竜(サラマンドラ)と闘いながらあの雲を突き抜けていたじゃありませんか」


「あの時は焦っていて全然気付かんかったわ! 雲って普通白いやろ? 夕方ん時にちょっと赤み帯びて軽くピンクなるくらいやん。まだそんな時間ちゃうやろ」


 ロゼッタは首をかしげていた。


「アカリの言ってることが理解できません」


「理解できるとかそんなレベルじゃあらへん! 海は青いとかそんなレベルの話やで」


「そうですが、現に雲はピンク色ですし...... 私が生まれた時から雲はピンク色でしたよ。よく聞く昔話でも雲はピンク色ですし」


「うーーー、なんか納得できひんーー」


 意味わからんわ。ロゼッタが嘘ついてるようには思えへんし。

 結構マジなトーンやったし。


 実際、今は雲の色ピンクやもんな。多分おかしいんはあたしやってん。そうそう。

 記憶喪失なんやから、雲を白やと思い込んでしまっててもおかしいないよな......?




「この村に治癒魔法を使える者はいないかー!」


 突然、村に低い声が響く。

 その声色には焦りが含まれてるような感じがした。


「いきなりなんや?」


「さあ。なんでしょう」


 声のした方角をみると、そこには武装している男性がいた。

 剣を杖のようにして、片足を引きずりながら、人を背負っている。

 まるで軍人さんやな。


「お城の兵士さんです。怪我をしているみたいです」


 ロゼッタは隣で呟いた。


「おい、あんたらどうした?」


 近くにいた村人が兵士に話しかけた。

 

「森で黒狼ウルフの群れに襲われて、仲間が負傷したんだ。この村に治癒魔法が使える者がいれば助けてほしい」


「それは大変です! うちの村には聖女見習いがいます! ロゼッタ!」


「はい。すぐそちらへ向かいます」


 村人はロゼッタを呼びつけた。

 不安やわ。なんであんな武装して怪我してる兵士んとこに女の子呼びつけるん?


「ロゼッタ?」


「アカリ。済ませたらすぐ戻ってくるので、少し待っていてください」


「それはええけど......」


 ロゼッタは兵士のところへ走って行った。

 あの傷結構酷そうやけど、ロゼッタ治療できるんかな......。

 あたしと同じくらいなのにお医者さんって天才やん。

 てか、確か賢い大学出て勉強せな医者になられへんかったよな......?


 もしかして闇でこそっとやってるん?

 あたしは思わず近くの村人に尋ねてみた。


「ロゼッタってブラッ〇ジャックなん?」


「ぶらっ〇じゃっく? なんだそれは。この村で治癒魔法が使えるのは聖女見習いであるロゼッタちゃんだけなんだ」


「治癒魔法ってなんなん?」


「治癒魔法を知らないのか? 人の怪我を治癒する魔法のことだ。痛いところに手を当てるとみるみる怪我が治るという魔法だよ」


「ええっ! ロゼッタって魔法使えるんか? しかも人の怪我治すって、それは禁止された行為やで! 魔法で治してもうたら反動で治した怪我と同じくらいのペナルティつくんやで」


 あたしがそういうと、村人は「がははは」と笑う。なに笑ってんねん。笑うとこちゃうで。


「アカリ嬢ちゃん。おいらを田舎もんやと思って揶揄ってるなぁ~。治癒魔法にそんなペナルティなんてないって。もしそんなペナルティがあるのなら、この世界の医者は皆今頃土の下......って、お嬢ちゃん」


 ロゼッタと兵士の方から淡い輝きが目に入ってきて、あたしは思わずロゼッタの方へ駆け出した。

記憶喪失にこの世界が異世界であると違和感持ってもらうのって難しいっ!

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