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魔女っ子、プリカルステッキ

 ポコリンと再会したあたしは、一旦キノコ狩りを中断して家に戻ってきていた。


「なんてことしてくれたポコ! アカリはとんでもないことしたんだぞポコ」


 テーブルを挟んで手前側。ポコリンがものすごい剣幕であたしを怒鳴り責めてくる。


 それはなんでも自白するキノコをあたしがポコリンに食べさせようとしたから......ではない。

 あの後、早々にロゼッタにそんなキノコないと言われてあたしの野望は打ち砕かれた。


 じゃあなんでポコリンがお怒りなんかと言うと、あたしがミラクルモードをこの村の人に見せびらかしたことが原因みたい。どうやらそれが気に食わんみたいや。


 ちなみにポコリンはあたしのことをアカリと呼ぶようになった。



「別にいいやん。この村の人は魔法の事を知ってるみたいやし......。ロゼッタに至っては魔法を使うことができるんやで。あたしが魔法をこっそり使わなあかん理由がわからへん」


 あたしがそういうと、ポコリンはため息を吐いて、肩を竦める。

 


「アカリはミラクルモードをただの魔法だと思っていたポコ? ちゃんとこの世界の魔法と自分の魔法の特徴を比較したポコか?」


「ミラクルモードはただの魔法違うん? まあ、あたしの魔法はこの世界の魔法と比べて平和的で便利やとは思ったけど」


「こりゃだめだ。アカリはぜんぜん分かってないポコ。この世界の魔法と同じ次元で考えてやがる......ポコ」


「あたしが何をわかってないっていうん? 魔法は魔法やろ? 昔、あんたが魔法やって説明しとったやん!」


 あたしがそういうと、ポコリンは黙り込む。

 ホンマ、自分が言ってたこと忘れたんか。

 

 あたしが【プリカルステッキ】を使えるようになってすぐ、ポコリンはあたしの前に現れて、確かに"魔法の力"やとあたしに説明した。


 少し間が開いて、ポコリンはあたしに聞こえないように何か呟く。



「あの時は魔法なんてない文明の惑星やったから、魔法って説明しただけだし......。でないと、この馬鹿理解しなさそうやったしポコ」


「なんか今、あたしの悪口言わんかった?」


「な、なんにも言ってないポコ」



 何言ってるか聞こえへんかったけど、悪口言ってるのは分かった。

 

 あたしはポコリンを睨む。

 ポコリンはばつが悪そうな様子。


 するとポコリンは誤魔化すようにロゼッタに話題を振った。



「お前は、ロゼッタといったポコ?」


「は、はい。......あっています」


 急に話題を振られたロゼッタは反応が一瞬遅れた。

 ロゼッタの表情が少し歪んでいる。

 

 ポコリンをロゼッタに紹介した時、ポコリンを初めて見たロゼッタは悲鳴を上げた。

 喋る魔物(モンスター)は聞いたことないとかで、さっきまで結構動揺しとった。


 動揺言うか、あれは気味悪がってたって表現がいい気もする。

 あれから時間が経って、あたしとポコリンが喋ってるのを見せてたら慣れてきたっぽいけど、ロゼッタはまだ薄っすらと警戒してる気がするわ。


 ドンマイ! ポコリン。

 まあポコリンは気にしてないやろうけど。



「ロゼッタはアカリのミラクルモードを見たポコ?」


「はい。見ました」


「それを見た時どう思ったポコ?」


 ロゼッタはあたしの方を見る。

 そして初めてミラクルモードをみた時のことでも思い出しているのか、少し間を空けて返答する。


「なんでもできる夢のような力だと感じた......と思います」


「その夢のような力は、魔法だと思ったポコ?」


「いいえ。アカリが魔法というまでは、もっと別の何かと思っていました」


「ということポコ。わかったポコか! アカリの使ってるミラクルモードはこの世界でも異質なものなんだポコ」


 そう言いながら、ポコリンは長い耳の片方であたしの方を差した。

 なんや? 何が言いたいんか、あたしには全然わからんねんけど。


「はぁ......。その様子じゃ理解してないポコ」


「もっと分かりやすいようにいいーや! なんでミラクルモードを村の人とかに見せたらあかんの?」


「人間なんでも願いが叶う奇跡みたいな力があるって分かったら、人々はアカリに依存してしまうポコ。依存すると人間は自分たちで何もできないダメ人間になるポコ。自分の力で問題を解決する能力がなくなった人類は、力が及ばないような大きな問題に直面した時、滅びることになるんだポコ」


「なるほど。そう言われたら、そーかもってなるわ。だから人前で魔法使ったらあかんのか」


「そういえばアカリは記憶を失ったといってたポコ。【プリカルステッキ】の説明をするからしっかり聞くポコ」



 ポコリンがそう言うと、ロゼッタは席を立ち上がった。


「私は席を外しましょうか?......その、あまり人に聞かれない方がいい話ですよね?」



 ロゼッタが立ち去ろうとすると、ポコリンが呼び止める。


「ロゼッタも聞くポコ。もうロゼッタはミラクルモードの奇跡の力を目の当たりにしたポコ。だからこの力についてロゼッタも知っておいた方がいいポコ」


 ロゼッタは再び椅子を引いて、席に着いた。




  ◇



 かつて、妖精の国があった。

 妖精の国は人間たちとは別の世界に存在した。

 自然豊かで美しい景色が広がっており、その名の通り妖精たちが楽しく暮らしていた。

 妖精の国は平和で活気づいており、妖精たちは幸せだった。


 そんなある日のこと、闇の使者が妖精の国と女王の力を我が物にするため、妖精の国へ侵攻してきた。

 戦い方を知らない妖精たちはなすすべなく、何千という闇の使徒の前に散っていくことになった。


 「このままでは極悪王者ワルキングに私の持つ"奇跡"の力が奪われてしまいます。ワルキングは"奇跡"の力を使って全宇宙を支配しようとするでしょう。それは阻止しなければなりません。私は今から"奇跡"の力をこのステッキに変え、この宇宙にある人間の誰かに託そうと思います。その所有者が分かるのは、ポコリンあなただけ。【プリカルステッキ】の所有者を導き、ワルキングに力を奪われないようお願いします。......まあできればワルキングぶっころして妖精の国を取り戻してね。後は頼みましたよ」


 女王はそういうと【プリカルステッキ】に姿を変えて、宇宙の彼方へ消えていった。


 その後すぐに妖精の国はワルキングの支配下に落ちた。


 ポコリンは【プリカルステッキ】の所有者が変わるたびに、その所有者のいる惑星へと向かい、パートナーとして側でサポートしてきた妖精であった。


 最初ポコリンも【プリカルステッキ】について全く知識がなかった。

 何百回と【プリカルステッキ】所有者のパートナーをしているうちに、その詳細を体系化したのである。


 "人に魔法を見せびらかしてはいけない"というようなアカリに課したルールも、ポコリンがその過程で作ったものである。


 

 【プリカルステッキ】には二つの力がある。

 ミラクルモードとプリンセスモードだ。


 ミラクルモードとは"奇跡"の力。いかなる可能性も引き起こし、運命を変えるくらいの奇跡の力。奇跡を求める誰かのために使うと力が増し、そして反対に人を攻撃をするなど悪いことや、死者蘇生や傷や病気の治癒に使うと、ペナルティーを受ける。

 

 プリンセスモードは"浄化"の力。闇の使徒から身を守るために持たされた戦闘能力。悪しき者を浄化することができる。



 そして、善悪の判断は【プリカルステッキ】の所有者に委ねられる。

 つまり、何が善くて、何が悪なのかは、アカリが決めるということだ。


 ポコリンはアカリが間違った道へ進まないように導く使命がある。


   ◇


「――ちゃんと聞いてるポコか?」


 ポコリンの唐突な大きな声に、あたしは目が覚めた。

 んーー、眠い。


 あたしは目を擦って、ポコリンに向き合う。

 

「まさか......寝てたポコか?」


「そんなわけないやん! 妖精の国があったんやろ? それでどないしたん?」


「それ話の序盤ポコ......」


 その後あたしは夜中まで説教された。


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