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魔女っ子、再会

 ロゼッタの家に住み始めてから一か月ほど経った。


 あたしはロゼッタと一緒に森へキノコ狩りに来ていた。


 あたしは木の根元に生えてる緑色のキノコを引っこ抜いた。

 

「なあロゼッタぁ~。 このキノコって食べれるやつ?」


「いいえ。捨ててください。食べたら笑いが止まらなくなって死にます」


「うわぁ」


 あたしは急いでキノコを地面に投げつけ、手をパンパンと払う。


「こっわ」


 ロゼッタの方からくすくすと笑う声が聞こえてきた。


「カゴに入れる前に必ず私に見せてくださいね。最悪食べても『回復(ヒール)』しますが」


「ちゃんとロゼッタに見せるわ......」


 ロゼッタの方を見やると、淡々と鎌を振るってキノコを収穫している。

 食べられるものを的確に背中のカゴに放り込んでいる。


 て、手慣れてるな......。もうプロやん。



 村人はロゼッタのように魔物(モンスター)に見つからないにする結界を張ることができひんから、森へのキノコ狩りはロゼッタの仕事らしいわ。


 こうして月に一回ほど森に入ってキノコを狩るんやとさ。


 あたしは結界の外に出ない範囲で、その手伝いをしているとこ。

 

 タダ飯ばっか食べてるわけにはいかんからな。

 働けるときはしっかり働かな。


「よーし、あたしもロゼッタに負けてられへん。いっぱい採ったる」 


 気合を入れるために、あたしは頭に巻いたタオルを締めなおした。


「よく見ると、ここに生えてるやつ全部さっきの毒キノコしかないやん」



 この場所はハズレやな。

 今の採取場所を移動して、キノコがありそうなところを探す。


「あっちの方はまだ行ってなかったな」


 茂みをかき分けるように進む。

 すると、ウサギのように耳の長い動物?が茂みの向こうで横たわっていた。


「なんや、もしかして犬コロにでもやられたんかな?」


 あたしは周囲を見渡してみる。

 もしかすると黒狼(ウルフ)が近くにおるかもしれへんから。

 まあロゼッタの結界の中やと黒狼(ウルフ)程度には見つからへんねんけどな。



 あたしはそっとウサギっぽいやつに近寄ってみる。


 落ちていた枝を使って突いてみたり、ひっくり返したりしてみるも、 黒狼(ウルフ)にやられたような傷は見当たらへんかった。

 ただ代わりに、ウサギっぽいやつの側に一部欠けたキノコが転がっていた。帽子の部分を半分齧ったある。


「なんや。これ食べてもうたんか......何のキノコやろうか? 息はしとるな。もしかして寝てるだけか」

 

「ひかり......だめだ......よせ......」


「うわ、喋りよった! なんやこのウサギ」


 ビックリしたー!

 あたしは退き損ねて、土の上に思いっきり尻もちをついた。

 ひえ~、久しぶりに鳥肌たったわ。

 

 ウサギっぽいのは横たわったまま。


「なんや、寝言かいな」


 あれ、でもなんかこのウサギっぽいの見たことある気がする.......。

 うーん。どこでみたっけか......。



「う、ううーん......ここはどこポコ?」


 ウサギっぽいのは目を覚まして、起き上がった。



 ポコ? この特徴的な語尾は......。


 もしかして!!


 あたしの残された記憶に間違いがなければ――



「ポコリン? もしかしてポコリンちゃうん?」


「オイラを呼ぶこの懐かしい声は......ヒカ......いや、そんなはずないポコ」


 そう言うとポコリン? は耳を立てて、無い牙を出す。

 何? 威嚇してるん? マスコットみたいなビジュアルでそれされても、全然怖ないで!


「ほら、あたしやで、あたし! そんな警戒せんといてーな! ポコリンやんな!?」


「オイラは確かにポコリンだポコ。お前は誰ポコ?」


「ほら、やっぱりポコリンやん! あたしあたし! あたしったらあたしだよ! 忘れたん?」


 あたしはポコリンの小柄な身体を持ち上げて、抱きしめる。

 ああ、柔らかい。相変わらずの抱き心地やな。

 この感触はぬいぐるみに勝る!


「お、落ち着くポコ!確かにオイラの名前を知っていて、その上関西弁を喋るマヌケそうなやつはオイラの覚えてる限り一人しかいないポコ。......でもアイツがこんなところにいるはずがないんだポコ」


「誰がマヌケやって!! もういっぺんいうてみーーー」


「うぎゃあああああああ。暴力反対ポコ」


 ポコリンはじたばた暴れて、あたしから脱出する。

 なんやかんやボソボソッと文句を言いながら、あたしとの間合いを取った。



「てかさ、今までどこ行ってたん?」


 あたしは一番気になっていたことを聞いた。

 ポコリンはあたしが【プリカルステッキ】の所有者になってから、ずっとあたしの側で監督兼ペットをしていた神様の使い。


 あたしが鬱陶しがっても、ポコリンはずっと一緒にいた。


 そんなポコリンが一か月以上もあたしを放置して、どこに行ってたのやら。



「新しい【プリカルステッキ】の所有者を探していたんだポコ」


「何ゆうてるん! あたしがおるやん」


「何だって? お前が【プリカルステッキ】の所有者だポコか」


 あたしは頷く。


「いや、そんなはずないポコ。あの時確かにアイツは......」


 ポコリンは難しそうな顔をしいる。


「そんなに疑うんやったら見せたるわ。」



 あたしはプリカルステッキを出した。


「ぱぴぱぴぷぺぽぽぺぽぴぷぴぱ 変身! ミラクルモード」 


 そういうと、あたしの服装は黒のローブ姿に変わり、頭に黒の三角帽子が乗っかる。


「これでも信じられへんっていうなら、魔法であんたを犬にしたろか?」


 

 あたしがそういうと、ポコリンは首を大げさにぶんぶんと振った。


「むむむ。たしかに【プリカルステッキ】だポコ。まだ契約が切れていなかったんだなポコ」


「なあなあポコリン。教えてほしいことあんねんけど」


「なにポコか?」


「あたしの名前が知りたいねん。あと住所。一か月前くらいにこの森で目が覚めてんけど、他にもいくつか抜け落ちてる記憶があるねん」


 記憶を失う前のあたしを知っているポコリンなら、当然あたしの本当の名前と住所を知ってるはずや。あとは家族や友人のこと......。これがどうしても思い出せなかった。


「記憶喪失ポコか......じゃあこれはそういうことか......」


 ポコリンはボソッとそういい、視線をそらす。


「なあ、お願い! 薄々ここはあたしの以前おった世界じゃないっていうのは気付いてるねん。雲やってピンクやし、魔物(モンスター)はおるし。ただ元の世界の記憶も曖昧で、ここがあたしのいた世界と違うってことも確信できへんねん。 だから教えて欲しい! ポコリンやったら知ってるやろ?」


 

 すると、ポコリンは首を振った。


「だめポコ」


「なんでそんな意地悪するん?」


「教えてはいけないからポコ」


「なんでなん? あたしのことなのに?」


「ダメなものはダメだポコ」


 ポコリンはこの話題はもう受け付けないと言わんばかりに、そっぽを向いた。

 

 そういう態度するんや。

 ポコリンは頑固やから、一度こうなったら絶対教えてくれへん。


 でもあたしもこのことは譲れへん。

 特殊なキノコ食べさせてでも吐かせたる!!


「なあ、久しぶりにゆっくり話合お! ね? お茶出すからさ」


「お茶はもらうポコ。でも絶対に教えないポコ」


「はいはい。それじゃあ付いてきてな」


 意地でも聞き出したるわ。

 覚悟せえよ。

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