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魔女っ子、はじまり


 ――ここはどこや?



 見回してみると、背の高い木がいっぱい生えてるんが見える。薄暗くて気味悪いとこや。肝試しにちょうどええ感じよ。多分森の中やと思うけど、あたしはでっかい石の上で寝てた。ずいぶん長い間ここで寝てたんやろか――


「あたた、背中やられてしもた」


「大丈夫ですか? 背中擦りますね」


「ああ~~。ありがとう」


「いえいえ」


 高くて可愛い声と背中から伝わる柔らかい感触。痛いところを的確によしよししてくれる。


「って、あんた誰や!??」


 声のした方を見ると、そこにいたんは外見15歳くらいの女の子。多分あたしと同じくらいの年齢やと思う。随分長い間着たんちゃうかってくらいボロい布の服を着ており、その上にエプロンしてる。ちょっとみすぼらしい感じがする。反対に本体の女の子の方はめっちゃ可愛い。地毛なら羨ましいくらいに奇麗な茶髪や。


「私のことですか?」


「あんた意外に誰がおるんや」


「そうですね。私はこの近くの村に住んでるロゼッタです」


「ロゼッタね。なんや外人さんか?」


「がいじん?」


「外国人のことや」


「いえ、私生まれも育ちもこの国ですけど......」


「嘘つきなや。じゃああたしが海越えたってゆうんか? あたしパスポートとか持ってへんで」


「ええと。うーん。海を越える? パスポート? ですか......」


 ロゼッタはあたしの言うこと何もかもが理解できないのか、あやふやな返答ばかり。ぜーんぜん会話にならない。


「あんたそんなことも知らんのか? ははーん。あんたそないけったいな格好してるけど実は箱入りのお嬢様やろ。確か()()()()()()()とかいうやつやんな」


「いえ......ただの農民ですが......」


 ホンマか~。こいつ~。


 あたしが疑いの目を向けると、ロゼッタは苦い物食べたときのような顔をして数歩下がる。これは苦笑い言うて、あたしの話し方に付いて来られへんやつ特有の現象や。


「ごめんな。そういえばあたし名乗ってへんかったね」


「えっ。あ、はい」


「あたしは――――え、えっと......」


 あれ、自分の名前が思い出されへん。なんか頭ん中にモヤがかかったみたい。

 ロゼッタは一向に名前を言わないあたしの様子をうかがっているようだ。


「どうかされましたか?」


「ああ、いや、名前思い出せへんねん」


「ほえ! それは記憶喪失とかいうやつですか?」


「そうかもしれへん」


「そうですか......」


「いや、勘違いせんといてな! あたし決してやましいことあって名前隠してるわけちゃうねん!信じて......」


「はい。わかってます」


「ホンマかー?」


「本当ですよ」


 記憶喪失とかゆーオカルトみたいなん信じてもらえるなんて! 純粋でええ子や!


「名前以外の事で忘れたことって分かりますか? 住んでるところとか」


「うーん。あたしどこに住んでたっけか......」


 どこに住んでいたか思い出そうとすると、名前の時みたいにモヤが頭ん中にかかる。


「住所不定ですね」


「ちょい待ちー。それじゃまるであたしがホームレスみたいやないかー」


「ほーむれす?」


「諸都合で寝る家持っていないから道の隅っことかで住んでる人のことや」


「冒険者のことですね。もしかするとあなたは冒険者だったのかもしれません」


「ええように言い換えても、あたしには通じんで」


 なんかロゼッタとは話が通じない。田舎者とは話が合わんってことやろうか。

 ロゼッタは首をかしげている。


「呼び方がないと不便ですよね」


「そうやね。ロゼッタ、なんか適当に呼んでくれへん」


「私が名前を付けてよろしいのでしょうか?」


「うん、よろしく」


 名前って自分で付けるもの変な感じやし。それに、自分で名前つけたら変な願望とか入って含みがありそうなキラキラした名前になりそうやし。ロゼッタならなんとなく悪意のないいい名前付けてくれそうな気がするねん。


「ジュリエットとかどうでしょう?」


 前言撤回ぜんげんてっかい。悪意の塊すぎるわ。


「あかんあかん。やめーや。そんなファンシーな名前はあたしには似合わへん」


「じゃあヘンゼルというのはいかがですか?」


「うーん、なんかしっくりこーへんなぁ。てか、それ女の子に付ける名前なんか」


 やっぱり、自分で名前考えるんが一番な気がするわ。


「では、アカリというのはどうでしょう?」


「それや! そういうの待っとったで!」


「では、アカリさんとお呼びしますね」


「アカリでええよ。そっちの方が気楽な感じでいいやん。あたしもあんたをロゼッタと呼ぶから」


「わかりました......アカリ」


 ロゼッタは顔を赤くして俯きながら言った。ははーん。さてはロゼッタ、人を呼び捨てすんの慣れてへんなー。


「ちなみにアカリって名前の由来とかあるん?」


「はい。今アカリが踏みしめている墓石に書かれていた名前です」


 へぇ、この石って墓石なんや。って、墓石!!??

 あたしは急いで石の上から飛び降りた。


「って、うわっ、めっちゃ罰当たりな事してしもた。ごめんな仏さん......じゃなくてアカリさん」


 墓石の土を払って、ズレた位置を整えた。


「墓まで荒らした上に、アカリって名前流石に貰われへんわ」


「アカリは――故人であるアカリはそんなこと気にしませんよ。きっとむしろ「同じ名前だ」って大喜びすると思います」


 ロゼッタは優しい声で言った。柔らかそうな笑顔。この墓に眠っているアカリはロゼッタの身内か友達なんかも。そうやんね。でないとこんな森の中にわざわざこーへんよ。きっとロゼッタはアカリの墓参りに来たんやと思う。


 あれ? じゃあ、あたしは一体どうしてこんなところで眠っていたんだろう......。記憶を失う前のあたしはこの森に用事があったとか?


 あたしが考え込んでると、ロゼッタが「あの~」と声をかけてきた。


「アカリはどこか行くあてとかあるんですか?」


「いや。特に」


「じゃあ、私の家に来ませんか?」


 ロゼッタは笑顔で手を差し伸べてきた。


「うん」


 気が利く好意的な人は好きや。だから、もちろん手を握り返した。

みなさま、初めまして。この度、小説家になろうヘ魔女っ子を広めるためにやってまいりました。

気軽に評価していただけたら嬉しいです。

さて、この後すぐに何話か投稿いたします。

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