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攻略対象の領主様

「あー、今日は中がよかったなー…」

「セイレンって現金だよね」

「だって騎士団周辺…」


 むさい。癒しが足りない。どことなく植物も暑苦しく見えるとか何事。こういう時はミリアを見て癒されるに限るね!


「なんだか悪寒がしたから今日はセイレンと離れて掃除しようかな」

「ハイ、スミマセンデシタ」


 ここでミリアと離れたら私の心は荒れ模様。


 まぁ、それは置いといて。騎士団周辺の掃除だとすると、おそらく今日領主様とヒロインの初対面エピソードが来るよなぁ。


 ミサト街に拠点を置く私たちの領主様はソルージオン・ルーエスト様という。16歳の時に先代領主の急逝により領主になった。先代領主とは正反対の領民のための政策を行っているため、その人柄と併せて領民からとても愛されている。私ももちろんその一人。領主様大好き。

 それなのにひどい噂のせいでミサト街以外では悪逆非道の領主様として認知されている。確かにゲーム上では酷い領主様として描かれていたけどさ。…あれ、じゃあなんで領主様は優しいんだろう。ゲームと同じなら領主様は私たち領民に対して圧政を強いていたはず。領主様が領主になる前に何かイレギュラーなことが起こったのかな。それでゲーム上と現実で齟齬が生じて、シナリオ通りにするために噂という形で悪逆非道の領主様という形ができた…?

 あ、なんかそんな感じがしてきたぞ。


「セイレン?どうしたの?」


 すっかり掃除の手をとめて考え込んでいたらしく、ミリアがその可愛いお顔で下から覗き込んできた。そうね、私の方が少し身長高いもんね。そして可愛いね。


「なんでもないよー。今日は何の役になりきって掃除しようかなって考えてた」

「…ちなみに何か決まった?」

「今日は突然貧乏になって学校の屋根裏に住んで働くことになった女子学生」

「相変わらずすごい想像力だね…」


 そう言ってミリアは感心したような、だけど呆れたような表情を見せて掃除に戻った。

 すごい想像力って言われても、これ前世の記憶から引っ張り出した前世のお話なんだよなぁ。まぁ、褒められたということにしておこう。この世界では初出だからね!


 その後、しばらく黙々と女子学生になりきって掃除をしていると、ふとこちらに近付いてくる影が見えた。領主様だった。


 …はっ、これはあれをやるチャンスじゃない!?


「あいた」


 私は端に避けようとしてバランスを崩しましたよー風を装って、できるだけ自然に尻もちをついた。そう、新人転倒祭り開催である。

 さぁ、領主様はどんな反応をするかなー。


「……」


 無言だった。領主様はその冷たい表情で私を一瞥したあと、そのまま素通りしていった。


「あ、そこの君」

「は、はい!」


 領主様がふとミリアの前で足を止めて、話しかけた。


「西の一角を汚した騎士がいたから、掃除を頼む」

「わかりました」


 ミリアの返事を聞いた領主様はそのまま歩いて行った。


 そうね。それがエピソードだしスチル絵だよね。うん、そうなんだけどね。私に何かしらの反応をくれたって良くない?本当にミサト街の時と態度違いすぎない?なにこの二面性。大変好みですありがとうございます。これがギャップ萌えか。ミサト街に帰ったら街の人たちに話してあげよう。みんな大喜びで聞くだろうなぁ。そして嬉々としていじりにいく気がする。


「まさか本当に開催するとは思わなかった」

「まさか無反応だとは思わなかった」

「え、本当に優しいのよね?」

「そのはずなんだけど」


 ギャップ大変好みですと言っておいてなんだけど、ちょっと心配になってくる。考えられることとして、単にお仕事モードがこうなのか、それとも噂のせいで話しかけられないのか、があるのかなぁ。話しかけることで何か私に迷惑がかかるとでも思っているんだろうか…。


「久しぶりに話したいのになぁ…」

「ミサト街では領主と気軽に話ができる環境っていうのがすごいんだけど」

「確かに」


 そういえば領主様、貴族だったね。しかも上級伯爵だった。つまり普通はなかなか話せない立場。そうなると、領主様って特殊な方だよねー。これが最近は当たり前だったから忘れていた。


「さてセイレン、ここが終わったら西の一角に行くよ」

「はーい」


 お偉いさんからの頼みは命令と同義だもんなぁ。めんどくさいことをしてくれたよ領主様。仕事が増えた。


 そして恐らくミリアの反応から、領主様ルートも消えたと思われる。どんまい。

 さて残るは第2王子のカーティス殿下だけど…はたしてこのミリアが興味を持ってくれるかなぁ。頑張ってくださいね、カーティス殿下。


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