表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢想転生 ~錯綜せし魂の向後~  作者: 鎌岡 巽
第一章 〜夢か現か、それとも…〜
5/55

其の肆 ~first experience~

 家具類の殆どが木製であったが、浴室内も例外ではないようだった。

 浴槽、桶、風呂椅子……木に囲まれた空間はぬくもりを感じるが、その実、記憶にある現代技術は見られない。

 シャワーのような物はなく、昔の井戸にあった手漕ぎ式ポンプを小型化したようなレバーを動かすことでお湯が出てくる。

 温度調節用の設備が見当たらない為、可能なのかは不明だが、少なくとも水を温めることはできるらしい。

 桶に汲んだお湯で汚れた体を流しながら、感傷に浸る。

「なんで安堵してしまったんだ……」

 あと少しで間に合ったというのに、と。

 この歳になってお漏らしをしたという事実と、それに伴う羞恥心によって押し潰されそうになる。

 幸いと言うべきは、決壊した瞬間に咄嗟の判断でトイレへと駆け込み、下を脱ぐという、自分でも驚くほどの瞬発力を発揮できたお陰で、被害はパンツで済んだのだった。

 

 体育座りをして、膝を抱えた腕の中へ顔をうずめるように俯く。

 悔やんでも悔やみきれないが、いくら後悔したところで過去が変わるわけではない。

「……情報収集と並行して、身体に慣れる特訓もしないと」

 習うより慣れろ。

 実際、誰だって成長過程で親から教わるわけでもなく、感覚として身に付ける訳だ。

 二十三歳とか十歳とかは置いておいて、今日をスタートとしてあらゆることを学んでいこう。

 

 新たな人生の幕を開けて行こう――

 

「へくちっ」

 身震いする。お湯で流したとはいえ、浴槽で芯まで温まったわけではない。

「これ以上裸のまま居るわけにはいかないな」

 最後にお湯をもう一浴びして、浴室を出る。

 掛かっていた大き目のタオルで自身の体を拭いていく。

布地が全身を撫でていく感覚が、こそばゆく、ピクッ、ピクッと身を捩ってしまう。


が、我慢だ、がまんがまん……。


耐えようと思えば思うほど、逆に意識してしまうもので、身体の感覚がどんどんと鋭敏に変わっていく。

「いくらなんでも、んっ、この身体あっ、敏感すぎないか、んんっ!」

耐え切れずにタオルから手を放し、その場にしゃがみ込む。


はぁっ、はぁ……、と少し荒くなった呼吸を深呼吸で整える。

少しボーっとする頭へ新鮮な酸素を送り込み、正常な思考を取り戻す。

「落ち着こう、この欲情はサーニャの為にはならない。封印するんだ」

 あのままいっていたら、俺はこの身体に何をしていたのか――

「……考えないようにしよう、うん」

 残りの水分を拭き取り、パジャマを持って自室へと向かう。


それにしても、

「本当に、頭の中真っ白になるのかな……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ