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夢想転生 ~錯綜せし魂の向後~  作者: 鎌岡 巽
第〇章 ~プロローグ~
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其の零 〜nonsugar life〜

小説処女作です。

拙いながらも執筆を始めました。

出来るだけ継続して投稿していきたいと思ってますので、よろしくお願いいたします。

 小学校に入れば、たくさん友達が出来ると信じていた。

 中学校では、部活動をすればすべてうまくいくと考えていた。

 高校へ進学すれば、自然と彼女が出来ると思っていた。

 大学に行けば、人生を謳歌出来ると願っていた。

 

 しかし、人生は甘くはなかった。

 

 小学校では良好な友人関係を構築できず、純粋であるが故の悪意にさらされた。

 中学校では部活動と勉学の両立が出来ず落ちこぼれ、周囲から孤立。

 高校デビューに挑戦するも、ぼっち陰キャが成功するはずもなく。

 大学に進学するも明確な目標もなく、無為に四年を浪費。


 挙句、入社したのは――


「夢乃クン、この資料今日までに作成しといてってお願いしたよね? どうしてまだ完成してないの?」

「すみません、一昨日から熱出てて……頭が回らなくて」

「言い訳じゃなくてさ、ちゃんと理由を説明してよ。今日までって言ったんだから優先して作ってくれないと困るんだよ」

「……すみません」 


 部下に仕事を投げて、自分は特に何もせず時間を浪費するだけの上司。

 体調不良だろうとお構いなしに出勤を命じてくる。

「キミの代わりなんていくらでも居るんだよ、そこんとこ理解してる? やる気がないんだったらさっさと辞めてくれないかな。給料払うだけ無駄だから」

 社内ではハラスメントが横行、低賃金で残業代も無しに月に百時間程度の残業を課せられる。


  『ブラック企業』


 その要素を詰め合わせたような会社で、半年が経過しようとした頃、それは現れた。

 

夢乃出流ゆめのいずるさん、診断の結果ですが『ナルコレプシー』だと思われます」

「なるこ……?」

「所謂、睡眠障害の一種です。インフルエンザなどの感染症に罹ったことが原因の場合と、ストレスや睡眠習慣の急激な変化が原因の場合があるんですがな、お心当たりはありませんか?」

 心当たりを問われても、思い当たる節しか無いから困る。

「今の仕事がキツくて、ストレスが溜まっていたんだと、思います……。どういった症状なんでしょうか、その『なるこれぷしー』というのは?」

「日中でも突然耐え難い睡魔に襲われて、場所など構わず眠ってしまう。そういう病気なんです」


 確かに最近、勤務中に突然寝落ち、上司に叩き起こされたことが何度もあったが……。

「改善策は、無いんでしょうか?」

「薬剤投与による抑制しか、今のところは……。しかし、一時的な対症療法でしかありませんから、根本的な解決策はストレスの原因自体を無くすことです」

「それって、つまりは……」

「はい。夢乃さん、悪いことは言いません。今の仕事は出来るだけ早く辞めたほうがいい。そうしないと夢乃さんの身体が今以上に壊れてしまう」

 思わず呆然としてしまう。

 こんな会社、辞めてやると何度も思ってはいたものの決心できずにいたが……まさか医者から言われるとは思ってもみなかった。

「とりあえず、今日は診断書と処方箋を出しておきますので、お大事にしてください。くれぐれも、無理はしないように」

「……はい、ありがとうございました」


 薬を貰い、帰路に着く。

 なぜ、こうなってしまったのだろう。

 昔から何一つ上手くいかなかった。

 勉強も、交友も、今では仕事すらどうにもならなくなってしまった。


「……そういえば、スポーツだけはそれなりに出来たっけ」

 小学生の頃、いじめられるのが嫌で、強くなりたい一心で習っていた空手・柔道・剣道等々。

 色々と齧ってはみたものの『武道家が一般人に手を出すのは道に反する』という教えの為に反撃は出来ず、一年と経たずに辞めてしまった。

 それでも、体を動かすことは意外と楽しく、センスが良かったのか上達は早かった。

「周りの大人たちはよく褒めてくれたっけなぁ……」

 遠い過去を瞳の奥に浮かべていると、思わず涙が零れてくる。

「途中で辞めてなかったら、人生変わっていたのかな――」

 今更悔やんでも仕方がないのは解りきってはいるものの『もしかしたら』を考えずには居られなかった。

 

  十月四日

 太陽も傾きかけた秋口の空は澄み渡っていて。

 紅葉が始まった街路樹は三色のコントラストが美しく。

 公園で元気に遊ぶ子供たちの姿は溌溂としていて。


  今の僕の眼には、世界すべてが恨めしく映った。


 家に着いた途端、耐え難い睡魔に襲われる。呻きながらもカギを掛け、靴を脱ぐ。

 ベッドが無理でも、せめてソファーまで……。

 フラフラと、肩を壁にぶつけながら半分這うような思いでリビングへと辿り着く。

 薬を放り投げ、ソファーに倒れこむと意識が混濁し、落ちていく。


  人生甘くはない。

 齢二十三にして、早くも悟ったことは単純で。しかし、気付くには遅すぎた事実だった。


 もし神が居るのなら、もう一度チャンスをください。

 烏滸がましいと思うのであれば、せめて夢の中だけでも幸せに……

 

 

  そこで意識が途絶えた――

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